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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第三十一話 遅刻する見習い賢者の妹 

前話

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「よし、準備は整った。と。リリアーナはどこだ? またどこかに行ったのか?」
「おにーちゃんごめーん。遅れたー」
「なんだ。爺ちゃんの所に行っていたのか?」
 髪の毛にアイシャードの庵付近に群生している草をくっつけてリリアーナは戻ってきた。
「うん。お爺ちゃんが、渡す物があるから、って呼び出し食らったの」
 もう、リリアーナは反抗期なのだろうか、などとレオポルトは心配する。仮にも一国の姫が呼び出し食らった、などと言うとは。
 ユレーネは夫が憂慮していることをすぐに察すると手をかける。
「大丈夫よ。反抗期なんてあっても無いようなものなんだから。私だって反抗期も思春期もあったわ。リリアーナが健康に育っている証拠よ」
「そうか。そんなもんか。ユレーネとユレーネの母さんに任せた方がいいな。旅が終われば一時預かってくれ」
「そこ。育児論を展開している夫婦! もう日が昇るぞ!」
 この件が片付くまで結婚式をあげられないニコが突っ込む。
「育児論?」
 リリアーナが不思議そうに小首をかしげている。
「それで、リリアーナ。何を渡されたの?」
 セイレンが話を引き戻す。
 こっちの方が王様らしい。
 そう思っているニコにレオポルトオの手刀が落ちる。素手の所で逃れるニコだ。
 レオポルトは追求しようとしたが、時間が経っている。リリアーナに渡された物を確認してさっさと出立しなくてはならない。しかたなく追求を止めたレオポルトだった。
「うーん、ね。『水の結晶』だって。私炎の国の出身なのに水の結晶もらったの。これってどー言うこと? お兄ちゃん」
「もうどこどこの出身と言わなくていいと言うことだ。この国は『輝水の源の国シャリスタン』だ。リリアーナは水の国の姫、でアイシャードの見習い賢者ということだ。それを忘れるな。もう炎の国の事など考えるんじゃない。それは到底無理なことはわかっている。ただ、水の国の人間としての矜持を持て。恥じることはない。炎の国で生まれたことは。自分は自分なんだ」
 最後の方は自分に向けた言葉だった。自分自身も出自の事で悩まされている。いや、後悔というところだろうか。父を自死させてしまった後悔がレオポルトにはあった。もう少しで和解し合えたのかもしれないのに。
「出立しましょう」
 ユレーネが優しく言う。もうレオポルト心の中の悩みには気づいていた。だが、何も出来ない。ユレーネには優しくも厳しい両親がいた。きっとレオポルトやリリアーナの本当の意味で気持ちは理解できない。当事者でないからだ。ただ、優しく見守り手を伸ばしてくればその手をとるだけだ。
「そうだな。リリアーナ。その宝物はセイレンと一緒に扱えよ。きっと二人の力になる。さぁ、港町のマーブルヘイブンに行くぞ。あそこから船が出ている。エンシャントウッドに行くぞ」
「はぁい」
 今回はユレーネの馬があった。その後ろにリリアーナが載る。セイレンは自分で乗りこなせていた。運動神経は良いらしい。
 
 一行はやっと次の目的地エンシャントウッドに向かう事ができた。
 
 本当の試練はここからだ。セイレンはまっすぐな目で目の前を力強く見た。そんなセイレンが眩しく見えるリリアーナだ。
 
 二人の初恋物語はどうなっていくのだろう。
 兄として父親や代わりとしてレオポルトは後ろに続いている二人を優しい気持ちで慮っていたのだった。


あとがき
あとがき忘れてたー。
すでに眠気に負けてパワーナップをしていてふと、書いたっけ?
いや、書いてない! タイマーを一時停止にして書きに来てます。
まだ、本題にいかない。31話で。序盤の序盤。
これから進まないといけない。簡単な試練ですけどね。またも神殿がそびえ立つ。星彩が書きやすいのは似たような展開だからかもしれません。
と、タイマーをそろそろ再開します。
ここまで読んで下さってありがとうございました。

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