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【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(38)

前話

 私はそっとクルト達から離れると二人が対峙している横に移動してきた。こちらの方がフリーデに近い。そっと泉に入る。フリーデはヴィルヘルムに気を取られて気づいていない。私はフリーデに飛びかかった。
「離して! もうダメなのよ!」
「何がダメなのよ!」
 パシン、と乾いた音がした。私がフリーデの頬をひっぱたいたのだ。
「私なんて両親にも誰にも会えないのよ。ただ、ヴィーとあなたがおじい様とおばあ様の魂を受け継いでるだけ。魂だけだもの。私は一人きりなの! あなたには恋人も両親も姉妹もいるでしょう! どれだけ恵まれていると思ってるのよ!!」
 激した私がもう一度叩こうとして手が取られた。
「クルト!」
「君の孤独は俺が癒やす。フリーデはヴィルヘルムに癒やしてもらえ。運命の相手だと知ってるのだろう? それで一度は恋人になった。けれど、自分の出自を想うと段々怖くなったんだろう? 俺たちがヴィーとフリーデを結ぼうとするから。もっと自然でいい。結婚できるように法は議会に提出するけれど、ヴィーが大人になるまでは拘束力はない。いつでも断っていい。だから、永遠の別れの死は選ぶんじゃない。いつでも別れられる。そう但し書きをしてある。一杯二人で悩んで笑えばいい。泣けばいい。いろんな感情を共有していけ。俺とエミーリエが結ばれているように」
 クルトの静かな声が響く。フリーデはしゃがみ込むとわっと泣き出した。おずおずとヴィルヘルムが肩に手を置く。
「子供でゴメン」
「ヴィー!」
 フリーデがヴィルヘルムに抱きつく。怖かったんだろう。この年の差に。この身分の差に。逃げ場がなかった。
「逃げ道は作ってあるから大丈夫。一緒に越えていけ。エミーリエ、そのドレスはどうするつもりだ? 水浸しだぞ」
「そう言うクルトは乗馬服がびしょびしょじゃないの」
「ちょっと。二人ともここで痴話げんかはやめなさい」
 珍しくカロリーネお姉様が主導権を握る。
「ヴィー、馬を一頭置いていくから、あとは二人で帰ってこい。後始末は自分でつけろ」
「わかってる。ありがとう。兄上。さぁ。フリーデそこに座って話さないか? 僕が軽率だった。簡単に結婚できるかのように想っていた。フリーデも女の子なんだもんね」
「ヴィー……」
 あとは二人の世界。私達は二人の世界に置いていって現実へ戻った。
 どこの水たまりに飛び込んだのですか、とお母様にちくりと言われたけれど、何があったかは想像ついていたみたい。お母様が馬に乗って行かれるのを見てつなぎ役になられるのだ、とほっとした。その瞬間、目眩が起こって私は気を失ったのだった。


あとがき
水槽全滅しました。希望をもって床に就きましたが、朝、残った三匹のうち二匹が星になり、その後すぐ、最後の一匹もだめになりました。その後通院だったので、行きました。水槽を置いて。亡骸はネットで読んだように処理を。暗い気持ちのまま、何かの拍子で見たテトラの共食い。グリーンテトラが影も形もいなくなっていたのを思い出してしらべれば、大きい子が小さい子を食べることはよくあり、抱卵中のメスのにおいにつられて食べることもあり、産卵させてあげないといけないとありました。かといって産卵させることは難しそうだし、自然繁殖できる環境でもない。水槽は、午後、時間のある時に水道水で消毒できるように久しぶりに駐車場で洗いました。またアクアリウム必須アイテムにトリートメント用の水槽がいるとあったので、昔、一度作ってはいたのですが、空いた水槽を使うことにして、保管しました。共食いが起きるならテトラは飼いたくないし、かわいいけれど、力量不足なのがわかったので、コリちゃんとベタちゃんとでなんとか小さくしていきます。このお話は再掲載が終われば、新連載になります。その準備をしています。よかったら飛び飛びになるかもしれませんが、お立ち寄りくだされば幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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