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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第二十六話 レオポルトの運命の別れ道

前話

 妹の声に安心させるようにレオポルトは言う。
「泣いてない。助かってほっとしたんだ。この国はリリアーナの国だ。兄ちゃんは大事にしたいんだ。兄ちゃんは命をかけてアドルフを討つ!」
 ちょっと待って! とユレーネが立ち上がったレオポルトにしがみつく。
「行ってしまうの? 私をおいて! 一緒に両国の架け橋になりたいって言ってたじゃないの!」
「言った。だが、それはアドルフとの決着が付いてからだ。お前は舞を舞って美しい舞姫になってくれたら良い。俺が行っている間、リリアーナを頼む」
 柔らかく微笑んで言うレオポルトにユレーネはさらにしがみつく。
「いやよ。両国が一緒になったら私の故郷にもなるのよ。私も行くわ!」
「だめだ! ここで待っててくれ。頼む。信じて待ってくれ」
「レオ!」
 ユレーネは泣いていた。怖かった。レオポルトの戦死が。いや、感じ取っていた。このまま行かせれば戦死が待っている。もう会えない。
「レオポルト王よ。ワシからも頼みたいことがある。全土に結界をはるには魔力が必要じゃ。ワシ一人では歯がたたん。ユレーネ姫や王の魔力が必要じゃ」
「ユレーネはわかるけれど、炎の国の人間の俺にもできるんですか?」
 不思議そうに聞くレオポルトにアイシャードは言う。
「元々、魔力の源は一つじゃ。それを集めて結界を張る。そうすれば姫も王も同じ立ち位置じゃ。戦死することもない」
 
 戦死!
 
 漠然と自分に感じていた言葉を聞いてレオポルトは泣いているユレーネを見る。ユレーネもわかっていたのだ。そっと抱きしめる。
「ごめん。俺、このままじゃ、死ぬ運命だったんだな。折角ユレーネに助けてもらった命なのに。わかった。アドルフが攻め込んでくるときは一緒にいる。あいつが退却したら追わせてくれ。全義勇軍と祖国で反旗を翻すやつらと国を取り戻す。それはいいんだよな?」
 うん、とユレーネは小さく肯く。そのパターンなら自分は死なないのだ。今、一対一で対峙しても闇雲に死ぬだけだったのだ。
「それから氷の国の武器を持っていきなされ。炎の国の魔術になれすぎたアドルフには絶妙な効果をもたらす。フロリアンに頼めば良い。ワシが氷の魔術をかける」
「アイシャード。恩に着る」
「さ。ここまで話が決まったなら姫とのデートコースを一つか二つ考えなされ。思い出作りも大事じゃぞ。リリアーナはこのじぃと妖精の国へ遊びに行こう」
「お祖父様ずるーい。私もー」
 ローレライが文句を言う。
「お前には相手がいるだろう。リリアーナには跡目の段取りがあるんじゃよ。さ。リリアーナじぃと妖精と話に行こう」
 そう言って庭に出て行く。残ったのはローレライとユレーネとレオポルトだ。
「じゃ、私、ニコ様とデートの段取りつけてくるわ。ユレーネ! がんば!」
 ぽん、とユレーネの肩を叩くと一瞬で消えた。レオポルトは腰を抜かしそうになる。
「消えた!」
「ごく普通の魔術よ。今更驚くの遅くない?」
 剣呑な目にびびるレオポルトである。デートコースとキスぐらいで許されるだろうか。レオポルトは戦く。
「取って喰おうって言うわけじゃないわよ。ただのデート。良いでしょう? 戦いの前に一度なら」
 切ない瞳のユレーネをレオポルトはそっと抱きしめる。柔らかい感触に女の子だ、と実感する。この子を妻にする、と決めた事を思い出す。まだ、自分には早いが、似合う男になりたい、そう強く思う。そして優しい声で名を呼ぶ。
「ユレーネ。氷の国にはどんなデートスポットがあるんだ? 教えてくれ」
「レオ」
 潤んだ瞳で見上げたユレーネは泣きたい気持ちを抑えて本を手に取る。そして地図を出す。
「まずはここね。呪いをかけた氷の人魚の像のあるところ。ここから、両国の争いが始まったのよ」
「へー」
 一緒に本をのぞき込む。そうして二人で楽しい時間を過ごしたのだった。
  
 まだ、アドルフの脅威は遠い存在だった。平和な時間を取りこぼさないように、と二人は笑いながらデートコースを作り出していったのだった。


あとがき

昼は痛み止めを飲まないため、神経痛なのかなんなのかしらない痛みに痛い痛いとうなっております。昼寝もできない。それでも少しは意識が落ちたのか楽です。

そして今朝の夢。グレートファーザーのペルソナの夢といっしょじゃん、と記事を書いてから気づきました。父性が表すのは規律、権威、決まり事などです。普段、怠けがちだとこれで整うのですが、いきすぎると自我を縛りすぎてうまく動けなくなります。そんなところだったんでしょう。仕事行きたくないなーとか思っていたので私の中のグレートファーザーがしっかり規律を守らせたようです。行けばなんとかなるし、足が限界なら言って帰れるし、と思ってやってました。納品が少なかったので一人でできました。でも店長がやっててくれたような……。

ま。それはともかく、第二部でも結婚式がまだ挙げられません。書いていたら、先にユレーネの舞姫お祝いが待ってました。次もたぶん、氷の国での父、フロリアンの手料理を食べて満足な家族ごっこをしてるでしょう。頼むから早く序盤に行ってくれーと叫んでおります。漢検の受験勉強そっちのけで突貫工事中。一日一話は書いてる。新婚生活を書くべきかとも悩みながらです。でもシャリスタンの事も書くとなれば建物の工事が必要。まさか魔法でできあがるなんて事ないし。建物まで。アイシャードなら一発で作りそうなのでお願いするかもしれませんが。まぁ、爺ちゃんは第二部でも現役です。年がすごいんですけど。まだまだ長生きしそうです。

今日もここまで読んで下さってありがとうございました。

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