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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:影の騎士真珠の姫 第九話 自分を映す鏡

前話

「それじゃ、まずはヴァルトのお姉さん捜しから始めましょうか」
 唐突にフィーネペルルが提案し始める。
「いきなり、そに行き着くのはどうしてですか。まずは影の御し方からでは……」
 ヴァルターは突っ込む。自分の事からが先だろうに。
「あら。私はこの退屈な日々に終わりを告げる話のように聞こえたわ。鏡を見るのはもうたくさん。どうせなら、建設的な事からしましょうよ」
 フィーネペルルの言葉にも一理ある。だが、自分の問題を先送りにしているだけだ。
「鏡はどこにもありますよ。見る事を辞めても次の影が見えてきます。人はいろんな影を持っているもの。一回、気が晴れたとしても揺り戻しが来ます。姉のことは追々調べていけばいい話です。そこに飛びつくのはおやめになる方がいい」
「えー」
 子供っぽくフィーネペルルが言う。
「わがままは私には通用しませんよ」
「この手もダメなのね。ヴァルトは気難しいのね。明るい人と思っていたけれど」
「気難しいとは……。常識を言ったまでです」
「それも常識なの? 私、自分の事をちゃんと見てこなかったわ。周りの人もそれでいい、って言って。ヴァルトは違うのね。ちゃんと正面から見ろ、と言うのね。部屋に戻りましょう。あの巨大な鏡の布を取る時よ」
 すっくとフィーネペルルが立ち上がる。
「無理せずともいいのですよ。今はその気持ちだけが大事なのです。急にショック療法をする必要はありません。まずはこの泉に映るフィーネからはじめてもいいいのではないですか?」
 そう言ってまた座らせる。
「折角一大決心したのに……」
 フィーネペルルは不満そうだ。
「その可愛らしいふくれっ面を水面に映してみては? 少しは変わっているかもしれません」
「そうかしら?」
 フィーネペルルは泉の水面をのぞき込む。いつものように嫌な自分がいるだけだ。結局あの鏡の大きな布をとっても同じように見える。
 
 と。
 
 フィーネペルルは思っていた。
 ところが、意外に健康そうに血色の良い自分がそこにいた。いつも、嫌な目線を送ってくる自分はいなかった。
「え?」
「何かわかりましたか?」
 ヴァルトが聞く。
「私は私だけど、普通の女の子がいたわ。私はもっと嫌な顔をしていたのに」
「それがありのままを見ると言うことです。嫌な、というのは自分が貼り付けた印象に過ぎません。主観からでなく、客観的に見る事ができれば、それは自分を受け入れ始めたのです。そしてそれは今までの嫌な自分も受け入れることに繋がるのです」
「そうなの……。本当に違うわ。ヴァルトが押してくれたおかげね。っと。エルマ! エルフィ! 泉に落ちるわよ!」
 愛犬と愛猫が一緒に泉に映り込んでいる。
「ご主人様と同じ事がしたいんですよ。フィーネは飼い猫にも飼い犬にも愛されているんですよ。一人じゃない、とわかるでしょう?」
 不意に、フィーネペルルの頬に涙が一筋流れた。その頬をエルフィが舐め、エルマはフィーネペルルの体にすり寄ってくる。
「まぁ! 私って果報者なのね。こんなに愛されているなんて」
 フィーネペルルは二匹をぎゅっと抱きしめる。一人きりだと思っていた所に味方が二匹と一人増えた。フィーネペルルは今日のこの日を忘れまい、心に誓ったのだった。
 はじめて見た影の自分。そして大切な人達。フィーネペルルの心は長い冬を終えてゆっくりと春を迎えようとしていた。


あとがき

今日の日程に少々疲れていたので九時半頃ベッドに入ってなにやら夢を見ていたのですが、アレクサの定型アクションの声が入って、目覚めてしまいました。夜食を食べてから、また更新作業です。九時半に寝ることすら滅多にないので、今日は本当に気を遣ったのでしょう。漢検の帰り道を反対側を歩いて行ってしまい、駅へ徒歩四分が徒歩十二分になったほど。

テストの出来は、なぜあそこであれを書き換えたのか、という痛いミスがあったものの、自己採点では合格ラインに到達してました。試験も、ずっと繰り返ししていた模擬試験より簡単に思えました。今までやったことのある字がずらずらと。猛暑の猛をとっさに思い出して書いたはいいけれど、突き抜けてはいけない線を突き抜けたので書き損。あとは巡るのしんにょうがどう見てもしんにょうに見えない。書き直してても時間が来てダメでした。

全体的には三十分かからなかったのですが、書き直しやら字が荒い、と何回か書き直しをしていてかなり時間取りました。字が下手って困る。読みも字が通りますように、です。読めたのですが、字が汚すぎて欠点になっているおそれが。

それでも明日は3級の本を買いますよ。勉強始めちゃいます。明日も面談で市内に。休みがありません。木曜日の休みは生活支援センターの見学。歩けるかしらと言うぐらいの山奥。歩けないんですけど、とは言えなかった。

と、こういうあとがき、記事にすれば良いのですが、なんとなくあとがきに付録にしてしまうのです。

今日やらかした危ない話はもう中編として載せて危ないシーンはカットしてあります。多少はありますが。九千字読んで管刺さった方には感謝です。
また、設定詰めて新たな話も考えます。一つ、置いてあるヤツがあります。昨日の段階で三つほど消したので、また設定をChatGPTさんと詰めます。でも今、6作品ほど同時進行なんですよね。びっくりしました。ので、これ以上フライングスタート増やさないように温めておきます。

この時間に起きて眠れるのだろうか……。もう少し執筆しておきます。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

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