第百六十回 Gt ヒロト|『月刊少年HRT』vol.16


<特集>
ヒロトとVoicyの関係性を徹底分析②
「遺言を残すような感覚で“Voicy”をアーカイブし続ける日々と、大学での初講義」

特別付録
HIROTO Guitar Channel
「「Funeral No.999-encore-」ヒロトアングルMOVIEダイジェスト」


ーー前回に引き続き、今回もヒロトさんがなぜVoicyをやり続けているのか、ということを分析していきたいと思います。ヒロトさんは過去に配信したVociyをすべて、アーカイブしているそうですが。

残してますね。だから聞きたい時にいつでも聞けます。最近、これは毎日“遺書”を書いてるような感じなのかなと思って。

ーー遺書?

そう。よくあるじゃないですか?元気なうちに遺言のビデオメッセージを撮るサービスとか。それの声バージョンに近い気がしてますね。だからVoicyって、今パーソナリティーをやってる人が死んだ後、すごく評価が上がる気がしてます。YouTubeも似たようなツールですけど、あっちは視覚の情報がある分、作ってる要素も多いんです。

ーーYouTuberの方を見ていると、テレビ番組の制作に近いのかなと感じます。

ですよね。だけどVoicyは声だからそういう作り込みはできなくて。どうしてもパーソナルなものが出ちゃうんですよ。僕はそこが面白いなと思ってて。この先自分が居なくなった後とかに価値が出るんじゃないのかなと思ったりもしますね。

ーーそして、こうしてVoicyをやり続けていたら、今年は「講義をやってみませんか」というお声かけがあって、実際に大学で講義をされたんですよね?

はい。「澤円の深夜の福音ラジオ」のパーソナリティーを務める澤さんから、春頃に「授業の枠を持っている武蔵野大学のEMC(日本で初となるアントレプレナーシップ学部)で4月からゲストを招いて授業をやるので、それにぜひ出てもらいたいです」という連絡をいただきまして。面白そうだと思ったので「出ます」と返事したんですね。僕自身、学生の頃に特異体質(『月刊少年HRT』vol.15参照)故に苦労したところがたくさんあって。けど、その中で「それ面白いじゃん」と言ってくれる先生に運良く出会えたんですね。その出会いがあって、自分は相当救われて
たんですよ。僕はその当時、先生達の9割は恨んでましたから。そこから非行に走らなかったのも、多分そういう出会いがあったからだと思うんです。そういう経験をしているからこそ、教育現場にはめちゃめちゃ想いがあったんです。誰しもが出会える訳じゃないと思うので。

ーー周囲から浮いている自分のことを面白がってくれるような先生に。

そうです。その先生とは今も連絡を取り合ってて、昔よりも話が合うんですよ。ということは、自分みたいな先生がいてもいいんじゃないか。それをやることで、自分みたいなヤツや誰かのきっかけや救いになれるんじゃないかなという想いが元々あって。機会があれば、ある種昔の自分にしてあげたいことであったり、その先生に自分がしてもらったことを、自分みたいな若い子にしてあげたいという気持ちがずっとあったので、二つ返事で「行きます」と言いました。

ーーそんな背景があったから、すぐにやろうと決断できたのですね。

でも周りの友達には驚かれましたけどね。「何話すの?大丈夫なの?緊張しないの?」とか。そんな心配は全然僕の中には無かったんですよ。澤さんからはEMC学科が未来の起業家を育てる学科だということと、あとは日時と、2時間ぐらい喋ります、という情報が送られてきただけで。「ありのままのヒロトさんで話してくれるだけでいいから」とだけ言われてたんですね。僕はそれを“何も準備しなくていいから”というメッセージだと勝手に解釈して。ヘタに準備するよりも、やってきたことをそのまま話した方が伝わるものがあるということだと思ったら、変に緊張することは無かったんです。

ーーでは、そうして迎えた講義当日。教壇はステージとは違いましたか?

まあ、蛍光灯がある教室の黒板の前ですからね(笑)。だからめちゃくちゃ懐かしい感じもあって、全然緊張しなかったです。結局、当日まで何をやるか分かってなかったですからね。そもそも緊張って、どういう時にするのか分かります?むちゃくちゃ準備してた時こそ緊張するんですよ。なぜなら、「こうやろう」と決めて練習してるからで。それがルートから外れたとき、外れたら「どうしよう」ってなって緊張するんです。

ーーヒロトさんは生徒達の前に出た後、どうされたんですか?

僕が教室に入る前に、まず最初に僕がどんな人なのかというのを説明する映像を5分間ぐらい流してくれてたんですよ。その後に僕は澤さんに呼び込まれて教室に入ったんです。「どうも」って。

ーーそこではアリス九號.の映像が流れたんですか?

そうそうそう。それが一番早いじゃないですか。自己紹介をするには。

ーーでは、教室に入った後は?

最初は澤さんと10分間ぐらい話して。ざっくりとですけど、何歳ぐらいからバンドを始めて、今やってるバンドは結成10年目の時に所属していた事務所から独立して、その後は自分達で会社を立ち上げて、今こういうことをやってます、という話をしました。前日の夜、澤さんに「ギター持って来られないですか?」と聞かれたんですよ。

ーー大学の講義に?

そう。だから僕も同じように「え?」って思って(笑)。でも機材が無かったから「持って行けますけど、ギターだけになっちゃいますよ」と言ったら澤さんがアンプを持って来てくれて。講義の中で澤さんが「せっかくなんでちょっとだけギターを弾いてもらえませんか?」と振ってくれたので、3分ぐらいギターを弾いたんですよ、黒板の前で(笑)。自分はギターを持ったらスイッチが入るんで。

ーー黒板の前でも。

前でも入りました(笑)。それで、即興で3分ぐらい弾いたんですよ。そうしたら、弾き終わった直後にみんながすっごい拍手をしてくれて。ギター弾いた瞬間からみんなが前のめりになって、教室の空気が変わってくのが分かったんですね。そこから、最初は僕に興味が無かった子達もすっごい興味を持ってくれるようになって。講義の後半は質疑応答タイムだったんですけど。そこでは全員が質問を投げかけてくれたんですよ。結局講義時間内に質疑応答が収まらなくて、講義後にも教室で生徒それぞれの質問に応じて。最後の子なんか1時間も待っててくれたんですよ。

ーー大盛況だったんですね。

生徒達は20歳前後ですよ。こんな激動の時代に居ながらも、中にはすでに起業している子達もいるんですよね。だから、自分達が歩んできた道で失敗した話とか…そうだ!みんなの前で話す時、失敗した話は絶対にしようと思ってたんだ、今思い出した(笑)。世の中はここ5〜6年で、知らない間に自己啓発本やビジネス書で溢れかえってて。そのほとんどが、成功した人のストーリーから成功するためのメソッドを導き出したものなんですよ。成功した人はみんな失敗した時の話はしたがらないから、そこには失敗例は載ってない。だけど、みんながなぜ躓いたり挫折するかっていったら、失敗した時のことをあまりにも知らなさすぎるからなんですよ。ウチのバンドは過去に結構失敗してきていると思うんです。世の中的には成功している部類で見られるかもしれないけど、実はその中で色々と失敗を重ねてきたバンドなんです。だったら、失敗した話の方が聞いてもらえるだろうなと思って。

ーー質疑応答に応える時は、敢えて自分達の失敗談を交えながら話していったと。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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