第九十一回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「ラスト・アクション・ヒーロー分析」

最近、ゲーム『CALL OF DUTY(コール オブ デューティ)』の期間限定イベントで、80年代を代表するアクション映画、『ランボー』とか『ダイ・ハード』をテーマにしたコミュニティイベントがスタートしたんですけど。今回はそれがあったので、アーノルド・シュワルツェネッガーの『ラスト・アクション・ヒーロー』について分析していきたいと思います。

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『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)

シュワちゃんは他にもたくさん映画に出てるしヒット作もあるのに、なんでわざわざこの作品なのって、みんなは思うかもしれないですけど。そもそも80年代のアクション映画って、80年代後半から90年代初頭にヒットしたもので、実は期間としては意外と短いんですよ。歴史を辿ってみると。

当時はシルヴェスター・スタローンにアーノルド・シュワルツェネッガー、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ブルース・ウィリスなんかが活躍していた時代で、多分ウチらの世代って、彼らが出ててヒットしたアクション映画って、ことごとく観てると思うんですよ。

だけど、それがブームになってた時期ってすごく短かったんです。息が続かなかった。なんで続かなかったのか、終わってしまったのか。その結末となったのが、このシュワちゃんの『ラスト・アクション・ヒーロー』なんですよ。興行的にみても、大コケしてしまったんです、この映画は。

さらにシュワちゃん自身がこの作品の中で、自分がそれまで築き上げてきたアクションヒーローとしての歴史、それを“ネタ”にしてしまうんですよ。一斉を風靡したアクションヒーローを自分でネタにして、大コケしてブームを終わらせてしまう。それって、ある意味衝撃的だと思いませんか?

アクション映画ブームもちょうど終わりかけの頃だったんですよね、この映画が公開された頃は。その終わりかけの流れと並行するように『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズが始まっていった頃で。

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『ハリー・ポッターと賢者の石』(1997)

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『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)

世の中の映像の流れはそこからCGに変わっていくんですよ。この後から出てくる映画はいわゆる戦争とか銃撃戦とかではなく、CGを使って魔法だなんだってどんどん色んなものが映像の中で形になって、使えるようになっていく。そこに移行する前の最後の映画なんですよね。『ラスト・アクション・ヒーロー』は。俺的にはですけど。

これね、シュワルツェネッガーがやってなければ、もっと評価されてた映画なんですよね。ストーリー的には今までになかった発想で、面白いっちゃあ面白いんですよ。だけど、自分で自分をネタにしちゃってるもんだから、今までアクション映画が好きだった人たちが観ちゃうと「なんでここまで自分をネタにしてしまうかな?」「バカにしてんの?」っていう感じに思ってしまう。そういうのもあって、映画ファンの評価が低かったんだと思うんですよね。

だけど、そんなことを全部抜きにしてこの映画を観ると、映画で映画の中に入っていくというストーリー、この発想はめちゃくちゃ面白いと俺は思いますね。全然悪くない。シュワルツェネッガーの黄金期を知ってる人たちはみんな、この映画に対しての期待値が高すぎたんだと思うんですよ。

シュワちゃんって、それまで真面目に(役を)やってきた人じゃないですか。そう思ってた人がいきなりこの映画で、ギャグ全開で自分の過去をネタにしてまでおちゃらけてるのを観るのは、きっとショックだったんでしょうね。

たとえばね、LUNA SEAがライブでおちゃらけてたら嫌じゃないですか。自分たちの過去をおちゃらけて話し出したらちょっとファン的には傷つくところがありますよね?そういう感じで映画ファンも思ったんじゃないですかね。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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