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電車の吊り革に手が届くようになった日

電車の吊り革に手が届くようになったのは、
いつ頃からだろう。
ちょうど今、娘が精一杯手を伸ばせば
届くくらいの高さだ。
だけどまだ腕がピーンと張り詰めていて、
つかまっても自然には見えない。

余裕を持って吊り革に
つかまれるようになった日、
私は自分が大人になったかのような気分で、
ドヤ顔でつかんだのを覚えている。
多分中学生になっていたか、
なっていなかったか、の頃かなぁ…?

どうでもいいことだけど、
ドラマや映画で見て知ってはいたけれど、
まさか私もそれをやることになるなんて!
…というチャンスが巡ってきたりすると、
今度はドヤ顔でなく、おかしくて仕方なく、
ニヤニヤしてしまう。

例えば…、アメリカ人と結婚をすると、
アメリカ大使館で、
日本語から英語に訳した婚姻などの公式書類に、
証印を押してもらう場面があるのだが、
その時、書かれている内容に嘘はないと
宣誓させられる。

右手を上げさせられて、
「すべて事実ですね?」なんて聞かれて、
神妙な顔で「はい」と言うべきところを、
内心「わーこんな映画みたいなこと、
本当にやるんだ! おもしろーい!」と
ニヤニヤしちゃって、
書類が胡散臭くなってしまったことがあった。
一応書類は通ったけれど。

それから運転免許を取って、
初めて路上で運転した時も
ニヤニヤがとまらなかったっけ。

初めてクレジットカードで買い物をして、
店員さんの前でサインをした時も、
かなりニヤニヤしたのを覚えている。
あの時は緊張してうまく書けず、
ぐちゃぐちゃになっちゃったから
おかしかったのだけど。

そういう、大人になると普通にすることを、
初めてする瞬間が懐かしい。
もうこの歳だと、
そういう新たな瞬間はないのかな。
今度は老いていく方の初めてになっちゃうか…。

その場合は、
「初めて入れ歯を入れたぜ、ドヤ!」
…とはならないだろうな。
それともやっぱり私はニヤニヤしちゃうのかな。

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