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『ガンダムデイズ』で読む80年代ガンプラ史(3)

『ガンダムデイズ』(小田 雅弘)

前回からの続き。

 雑誌『アニメージュ』での座談会をキッカケに名編集者・安井尚志氏と知己を得た小田さん達は、安井氏の紹介で、講談社からオファーを受けます。それは、新創刊の児童向雑誌『コミックボンボン』(1981年10月発売)に、ストリームベースが製作したガンプラの写真を掲載したいという事でした。

 ホビー雑誌『コロコロコミック』への対抗とした生まれた雑誌で、王道の『コロコロ』に対して、よりマニアックな方向を強めた印象を持っていますが、創刊前からコレですよ。

 ここから、ストリームベースをはじめとしたモデラ―達による模型作例が、模型専門誌、と、児童向雑誌に、同列に掲載されるという訳の分からない状況が生み出されます。そんなもん載せられても、小学生には作れないって!(極めつけは、スコープドックというロボットの、等身大着ぐるみ造形の作例を、「さあ、キミ達も作ってみよう!みたいなノリで掲載する狂気の雑誌となっていきますw)

 まあ、80年代というのは、おかしな時代で、子供向雑誌である『てれびらんど』(東映・徳間書店)に、高荷義之先生がガチミリタリーテイストで『ザブングル』等のイラストを掲載したり(しかも下絵として構図・アイデアを出淵裕さんが提供というw)、ボンボンに限った暴走じゃないんですけどね。

 なお、同時期には、ホビージャパンより、ガンプラ作例のムックが発売されています。

『HOW TO BUILD GUMDAM』1981年7月初版発行

『HOW TO BUILD GUMDAM 2』1982年5月初版発行

 こちらでも、当然、ストリームベースの作例が沢山掲載されています。また、2には、のちのマックスファクトリー代表であるMAX渡辺さんの作例も。

 特に特出すべきは、2に掲載された藤川政秀氏の「1/60 ガンダム メインテナンスハッチ・オープン」です。これは、ホビージャパン誌81年10号に掲載された広告コピー

『このガンダム、君には作れまい』

 に対するアンサーです。

 これは『GUNDAM CENTURY』(みのり書房)の広告なんですが、河森正治氏によるハッチオープン状態のガンダムのイラストと共に、この言葉が書かれていたんですね。(『GUNDAM CENTURY』は、同人誌『Gun Sight』を元に、 松崎健一、スタジオぬえ:宮武一貴・河森正治、大徳哲雄が企画したムック。特に、設定関係は、後に公式化されていくほどの伝説の本)

 なお、この河森正治氏のイラストに対する模型界(モデラ―・メーカー)の戦いは、この後もずっと続いておりまして、先日発表された『PERFECT GRADE UNLEASHED RX-78-2 ガンダム』にも、その影響は濃く残っております。

 脱線ついでに、『ガンダムデイズ』から知ったエピソードも。さて、ボンボンを中心とする講談社のスタジオでの模型撮影は3年近く続いたそうなのですが、沢山の業界関係者やマニアが集まっていたそうです。海洋堂のセンム、や、永野護先生も…。すげぇな。

 さてさて、1981年11月創刊号(10/15発売)から数え、4号目にあたるコミックボンボン1982年2月号に、ある画期的な漫画が連載を開始します。それは…

『プラモ狂四郎』!

 小学生プラモデラ―である京田四郎が、「プラモシミュレーションマシン」(プラモを仮想空間で戦わせる事ができる機会)で、ライバル達と鎬を削り、成長していく物語です。実は、登場するプラモデルはガンプラ以外もあるのですが、まあ、ほぼ、ガンプラが主役の漫画、といってよいと思います。はい、明らかに、『ガンダムビルドファイターズ』の元ネタですね。

 作画はやまと虹一先生。原作はクラフト団。

 このクラフト団の正体が…

編集者である安井尚志氏、と、ストリームベースのキャラクター班!

 ストリームベース側がネタを提供し、それを安井氏がまとめる形との事ですが、ストリームベースの高橋昌也さんが原作を書く機会が多かったそうです。

 しかも、作中に、ストリームベースの小田さん・高橋さん・川口さんが出てくるんっすよ!

 この漫画のヒットにより、ストリームベースは、子供達のヒーローになっていきます。僕自身は、地方に住んでいた事もあり、この時代の御三方にお会いする機会はありませんでしたが、巡業で模型教室等も行っていたそうです。いや~、「メイジン・カワグチ」だわ。

 作中に出てくるオリジナルモビルスーツのデザイナーは下記

 ・パーフェクトガンダム:板野一郎
 ・レッドウォーリア:小田雅弘

 なお、高橋昌也さんは、『プラモ狂四郎』以外にも、原作・小説家・編集者として活躍されています。ガンダム関係だけをあげても下記。

『機動戦士ガンダム MS戦記』原作(作画: 近藤和久)ボンボン84年11月号~85年2月号

『ガンダム・センチネル』の小説パート モデルグラフィクス87年9月号~90年7月号

『マスターピース ゼータガンダム』考証記事(岡部いさくさん、氷川竜介さんらと共に) 2006年9月30日発売。

 今も、編集者として活動されているそうです。

 特に、『機動戦士ガンダム MS戦記』には、当時、痺れましたね。

「ジオンの学徒動員兵であるフレデリック・ブラウンの視点で描いた一年戦争」という到底オタクでしか思いつかない物語が、児童雑誌に連載されたという、あの時代ゆえのカオス!

 そして、キャラクタープラモを愛好しながら、前段階のミリタリ知識もある世代だからこそのリアリティ!

 『機動戦士Ζガンダム』( 1985年3月~)より前の作品であり、おそらく、ガンダムコンテンツの本格外伝作品は、これは最初じゃないかと思います。

 ちょっと脱線しました。迷宮なので仕方ない。

  さて、児童雑誌に模型作例が掲載されるわ、実質ガンプラを主役とする『プラモ狂四郎』が人気連載になるわ、ガンダム買いたいのに、プラモ屋に不人気メカをセットで買わされるわ、と大盛況の80年代のガンプラブームですが、ここで大問題が発生します。

アニメ作中に出てきたメカ…全部…プラモ化して、ネタが尽きた!

 ぎゃー!放送終了作品だから、アニメで新メカもだせない!どうすんだ!

 という所は、今日はここまで!次回に続きます!

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