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Mike Baird

noteを始めていきなりマニアックな投稿で恐縮だが(笑)、読者の皆さんはMike Baird(マイク・ベアード)というドラマーを知っているだろうか。現存するドラマーの中で世界レベルの一人だと僕は確信している。特に、Larry Lee(ラリー・リー)や荒井由実、Dara Sedaka(デラ・セダカ)のアルバムでの演奏は最高だ。少し専門的な話をすると、キックとスネアの正確かつタイトなタイム感、そしてインパクトのある音圧は煌びやかな時代の音を象徴している。そんなベアードだが、70-80年代のAOR名盤に頻繁に名前がクレジットされるというのに、なぜかネット検索でのヒット率が低い。というよりも皆無に等しい。同じ時代を共にしたJeff Porcaro(ジェフ・ポーカロ)やSteve Gadd(スティーヴ・ガッド)に匹敵する技量とサウンドを持つ、超売れっ子LAスタジオミュージシャンであるにも関わらず、ろくに情報が取れないのは僕からすればとても腑に落ちない。そんなマイク・ベアードの、個人的に超オススメなアルバムを3つ紹介したい。どれも当人の演奏面での個性が発揮されている作品なので興味がある方はぜひ一聴いただきたい。

①Marooned/ Larry Lee ('82)

②14番目の月/ 荒井由実 ('76)

③On Your Every Word/ Amy Holland ('83)

ここからはさらにマニアックな話になるので、これ以上の深堀り不要な読者は別のライターの記事を読んだ方がよい(笑)。時間は有限だ。

本名はMichael Gary Baird(マイケル・ゲイリー・ベアード)。カリフォルニア州サウスゲートにて1951年5月18日生まれのアメリカ人ドラマー。現在68歳。Wikipediaによれば前述のアーティスト以外にも、Daryl Hall & John Oates(ダリル・ホール・アンド・ジョン・オーツ)、Donna Summer(ドナ・サマー)、Michael Bolton(マイケル・ボルトン)、Kenny Loggins(ケニー・ロギンス)、Journey(ジャーニー)ら、時代の音を作ったトップミュージシャンたちと共演している。ちなみにオーストラリアに同姓同名の政治家がいたそうだが本人との関係は無い。

ここからは資料が乏しいため、主にネットの限られた画像や動画からの推測になる。機材はドラムセットに米dwをメインに使っている模様。シンバルは同じく米Sabianを使用しておりエンドース契約をしている。アクセサリーは、キックペダルの部品等を日本のCanopusとエンドース契約して使用しているようである。冒頭にも述べたとおり、彼が参加する楽曲は聴けば一発で彼の音だとはっきりと分かる個性がある。それは歴史に名を残す演奏家なら誰でもそうなのだが、ベアードが演奏する場合はキックとスネアのアタックがステレオ音像的に前に出る感じがあり帯域幅が広い。YoutubeでTrysette(トライセット)のレコーディング映像から伺えるように、キックの鳴らし方に特徴があり、ペダルのビーターを打ったら離す踏み方をしている。さらにスネアのバックビートの叩き方がフルストロークを基本にしているため、組み合わさってこのようなサウンドになるという原理である。これは何を隠そう日本のドラマー故・青山純と同じスタイルなのだ。また、時折入る切れ味鋭いハイハットオープンや粒立ち豊かなライドシンバルの刻みは正確かつグルーヴに説得力をもたらす。どちらかといえば手数が少ないドラマーのためフィルインは「タカトン」「タンタカ」などシンプルだが、それは決して楽曲、ボーカルを邪魔することはない。むしろそれらを盛り立てるための策略ともとれる。同時代のドラマー、ジェフ・ポーカロと比べるとダイナミクスにかけると感じるリスナーもいるかもしれないがそこは個性の違いと捉えるべきである。バラードなどゆったりしたテンポの曲を聴いても、楽器が少ない曲であっても過不足は一切感じない。

長々と語ってしまったが、本当に職人気質で上手いドラマーなので彼の関わった作品を興味があれば聴いてみていただきたい。本記事がマイク・ベアードに関して少しでも価値があり有用な資料になればよいと願ってやまない。

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