旧久保小学校校舎にさよならを言いに行く話
広島県尾道市、その古い街並みと瀬戸内海を一望する景色は瀬戸内の箱庭とも表現されることも。
そんな尾道の街には、戦前からの二つの古い学校建築がある。2020年、その二つともが建物の老朽化などから閉校することが決定された。周囲の小学校と統合されるのか、新校舎を建てるのか。どうなるかは分からないけれど、この校舎が建っている時間はきっともう長くはない。今回はそのうちの一つ、尾道市立久保小学校へさよならを言いに行ってきた。
尾道へは福山駅から山陽本線で向かった。電車が尾道へ近づくにつれて周りの家々が密集しはじめ、時々遠くに海や造船所が見えたりする。この次々と移り変わる景色の楽しさは、何度訪れても良い。
尾道の駅を出ると、真っ先に飛び込んでくるのは綺麗に整備された駅前ロータリーと、昭和感溢れる商店街。せっかくだから、商店街を歩いてみよう。
旧銭湯の洋館。今はリノベーションされて飲食店になっている。
商店街を外れて、脇道の路地を歩いてみる。尾道にはこんな雰囲気の路地裏が数え切れないくらいある。
路地はずっと昔から変わらず、今も生活の道として機能している。
商店街を抜けて薬師堂通りへ。山側から海側に向かって尾道の街を縦に貫いている通りで、昔からの看板建築がズラリと並ぶ。
薬師堂通りを歩いて、線路の高架をくぐって、長江町へ。長江は尾道でも山側のエリアで、古い家屋や路地階段が密集するエリアの一つだ。
山の急斜面に沿って、これでもかというくらいの住宅がひしめく。
路地から上を見上げると洋館が建っていたので、近づいてみよう。
モルタル壁に、ハーフティンバー。戦前期に建てられた近代建築だろう。尾道を歩いていると、こんな雰囲気のある洋館をいくつも見かける。
お寺の境内にお邪魔して裏側へ回ってみると、階段が下のほうへ続いている。この道は今まで知らなかった!
古びた石垣とモルタル壁、門。
階段を下まで降りると、いつも歩いている長江の路地へ戻ってこれた。
結構たくさん歩いたつもりだったけれど、まだまだ知らない路地があるんだなぁ。
ここから久保小学校へ行くにはレンガ坂を越えなきゃなので、また別な階段を登る。まだまだ先は遠い。
途中、久保の街並みと一緒に久保小学校を遠くから見られるところがある。確かこの神社の境内の裏から遠くに見えるはずだ。
久保の街の中に、立派な洋風モダンな校舎が立っているのが見えた。88年。想像もできないくらい昔からここにあって、数え切れないくらいの子供たちがここを卒業していった。じっと目を瞑る。
しばらくして、歩き始める。遠くに見えるとはいえ、久保小学校はまだまだ先だ。
行き止まりかな?と思っても通りぬけられるのが尾道の路地。でもときどき本当に行き止まりだったりする。
少し歩くと、坂の上に久保小学校が建っているのが見えた。
近くから見て、改めてその存在感に圧倒される。まるで東京の復興建築のような鉄筋コンクリート建て。それでも耐震性の問題からは免れることができなかった。
尾道のシンボル。いつまでも建っていて欲しかった。でも、きっとそれは叶わない。
「今までありがとう、そして、さようなら」と呟いた。
帰り道は、海側の商店街を通って帰ることにした。
商店街はいつだってミラクルだから、歩くと少しほっとする。
商店街の隙間から、電車が走っていくのが見える。
いつの間にか夕暮れ時で、電灯がぽつぽつとつきはじめた。今から山側の路地を歩いたらすごく雰囲気良いんだろうな、でも真っ暗になっちゃうな。
日が暮れて、街にあかりが灯る。僕はこの時間が一番好きだ。
平日なら商店街を学校帰りの高校生がたくさん自転車で通り抜けるはずだけれど、今日は休日。
今日はそろそろ帰ろうかな。実家では家族が夕食を作って待っているかもしれない。そんなことを考えながら、駅まで歩く。
初めに「尾道には古い学校建築が二つある」と書いたけれど、そのもう一つが土堂小学校。こちらも見に行ったので、その時のことはまたきっと書きます。
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