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旅と音楽が好き

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最近の記事

【新譜紹介】 Sam Braysher - That's Him

 僕は大学の四年間を北海道という北の大地で過ごし、そしてその学生時代のほとんどをジャズに費やした。朝から夜まで意識のある間はほぼ何かしらのアルバムを聴き、休みの日は足繁くジャズ喫茶へ通うという偏狂的な生活を送った。  その頃に集めた古い時代のジャズのレコードは今も手放せない宝物だ。僕にとって、北海道の寒く彩度の低い風景と、力強いジャズの音色は深いところで結びついている。  僕が Sam Braysher 氏というイギリスで活躍するサックス奏者と不思議なかたちで知り合ったのは

    • 呉市在住 「船が好き」「歴史を読む」ということ

      呉に住み始めて半年が経った。 「坂の街の洋館」という何かに憧れて、呉の高台にある洋館付きの古民家に住み始めたのは去年の12月のことだ。  冬の古民家はとても寒く、中古家具店で買ってきたお古の炬燵を荷車で持って上がって、毎晩布団を二重にしてくるまって寝た。家は細い路地を登った先に建っているので、トラックを横付けして引越しというわけにもいかず、布団や家財道具一式は車の止められる下の通りから小分けにして手作業で運んだ。  坂の街の家に住み始めたことで、あることに気づいた。それは

      ¥500
      • 呉市在住3

        長崎から呉へ。 ずっとずっと長崎の路地を歩いていたい気持ちもあるけど、一旦呉に戻る。もちろん家のこともあるけど、長崎の街を歩いた時の感覚をもったまま呉を歩いてみたかった。 呉市のモダンな住宅。呉には街全体にこういった戦前-戦後期の建物がたくさん残っていて、長崎とは違った昭和の街並みを見ることができる。 それはきっと長崎と呉の発展の歴史の違いに由来する。 呉駅から東側の斜面を登って、景色の良い階段に座ってコーヒーとパンを食べた。遠くに呉港が見える。呉と長崎の街はあたりまえ

        • 呉市在住 2

           駅を降りたら商店街を抜けて路地を駆け上がり、玄関の前で深呼吸。それから扉を開けて「ただいま」と声をかける。  もちろん家には誰もいないけど、戻ってきたよと言いたくなるのだ。  なにかと港町に関係のある仕事なので、最近は伝書鳩のように特急列車を乗り継いで街と街を往復する日々だ。それでも一晩だけでも家に戻れるなら戻ってこようと思っている。  家に帰ったらまず部屋の明かりを順番につけてまわって、それから給湯器のスイッチを入れる。湯を沸かして夕食を作る。そんなふうに、一晩でも家

          呉市在住 1

           2024年1月。週末は都合で広島まで戻ることになり、市内で用事を片付けたのち近くで開かれていた廣島蚤の市に参加。古民家に住むようになってからアンティーク家具や古道具に興味が湧いてきたので、この機会に色々みて回ろう。  半日会場を散策して、海色の絨毯と食器、タイルを購入。  今住んでいる呉の家は昔海軍さんの家だったそうなので、錨マークの入った絨毯を見つけた途端「これは」と思って即買ってしまった。絨毯を手に会場を見てまわっていると、他にも素敵な食器やタイルを見つけて欲しくなっ

          ¥300

          呉市在住 1

          ¥300

          2023晩夏、九州を歩く

          旅に始まりがあるのだから、当然終わりもある。 2023年9月、九州を巡った旅の終わり、私は新幹線で広島に戻りながら激しい頭痛に悩まされていた。大学の頃になんとかという病気になって以来、私は時々頭が痛くなったり耳が聞こえなくなったりする。 それでも夕方の新幹線に揺られているうちに眠りに落ち、目が覚めると波が引くように頭痛が軽くなっていた。回らない頭であれこれ考えていたら、そういえば旅に出る前に良いワインを頂いて冷蔵庫に冷やしてあることを思い出し、今夜はパスタにしようとスーパーで

          2023晩夏、九州を歩く

          広島県庄原市 高野新市の街並み

          毎日 Google Maps の航空写真を眺めながら古い街並みがないか調べている僕にとって、その街並みを発見するのはそう難しいことではなかった。 ムカデの足のように道路沿いに古民家が並び、密集しているのが分かる。 これぞまさに昔の宿場町といった雰囲気で、戦前の日本にはどこへ行ってもこんな街並みがあった。そのうち幾つかは重要伝統的建造物群保存地区(いわゆる重伝建)として保存され、現在も江戸時代さながらの風情を感じられる観光地となっている。しかし、それ以外の多くの街並みは保存さ

          広島県庄原市 高野新市の街並み

          広島県福山市 近代建築総覧

          福山市の近代建築をたくさん集めた記事です。 ・福山城周辺 ・神辺の街並み ・横尾の街並み ・駅家町 ・新市町

          広島県福山市 近代建築総覧

          置戸勝山

          勝山という地名は各地にあるけれど、今日は北海道、置戸町勝山の話。 置戸勝山は道東の山間にある小さな小さな集落だ。地図で見るとわかるけど、本当にどん詰まりの地形。 そんな置戸勝山に行くには、北見駅前のロータリーから出ているバス「勝山温泉行き」に乗る。バスは3時間に一本といった感じで、あまり接続が良いとは言えない。 出発して北見の市街地を外れると途中に大きな町もなく、1時間と少し、ひたすら雪の中を走るだけのバス旅。 置戸勝山には地元でちょっとした人気の温泉施設があって、置戸勝

          置戸勝山

          2022年末、横尾を歩く

          横尾という町がある。古い町だ。 広島県、福山の市街地からバスに乗って府中へ向かっていると通りかかる町。片側一車線の細いバス通り沿いに昔ながらの商家が連なり、そこだけ周りの風景が変わって、戦後すぐ頃の雰囲気をそのままに感じる。僕は実家に帰るたびにその横尾の古い町を通りかかるので、いつかじっくりカメラをもって歩きたいと思っていた。 2022年、今年の年末は北海道からフェリーを使って帰省した。大寒波で列車が運休になったりいろいろ大変だったけれど、良い思い出になった。 実家で親戚

          2022年末、横尾を歩く

          旧久保小学校校舎にさよならを言いに行く話

           広島県尾道市、その古い街並みと瀬戸内海を一望する景色は瀬戸内の箱庭とも表現されることも。  そんな尾道の街には、戦前からの二つの古い学校建築がある。2020年、その二つともが建物の老朽化などから閉校することが決定された。周囲の小学校と統合されるのか、新校舎を建てるのか。どうなるかは分からないけれど、この校舎が建っている時間はきっともう長くはない。今回はそのうちの一つ、尾道市立久保小学校へさよならを言いに行ってきた。  尾道へは福山駅から山陽本線で向かった。電車が尾道へ近づ

          旧久保小学校校舎にさよならを言いに行く話