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潮風と街並みとサイクリングと④

前回の記事はこちら。

とびしまと、ゆめしまと、しまなみと

今回の記事では、御手洗町並み保存地区を出発し、とびしま海道・しまなみ海道とゆめしま海道を経由し尾道を目指した輪行記をまとめたい。

とびしま海道

大崎下島・御手洗から岡村島へ

御手洗のゲストハウスをまだ夜明け前に出発し、岡村島へ向かう。
岡村島へは2つの小島を経由し、平羅橋・中の瀬戸大橋・岡村大橋と3つの橋を渡っていく。これらの橋は、安芸灘大橋から続く「とびしま海道」の一部を形成している。

静寂の宵
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

空が次第に白んでくる。カーブミラーを見かけ、構図へと取り込む。

瀬戸内の島のカーブミラー No.4
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

広大な灘の背後に四国山地をうっすらと認めることができる。

御手洗から30分ほど走り、岡村港へ到着。
岡村島は、愛媛県今治市・関前諸島の主要な島で、対岸の御手洗と同様風待ち・潮待ちで栄えた。ちなみに、所属する今治市の市役所まで"陸路で"到達可能ではあるが(島なのに)、とびしま海道→本州→しまなみ海道→今治という経路で、それまでに通過する橋の数が17にも達する。

岡村島から大三島・宗方へ

出航
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

6時20分発の今治行き旅客船に乗船する。乗客は自分含め4人ほど。途中小大下島・大下島も経由したが利用者はおらず、大三島の宗方港に向かう。

日の出を船の中から
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

大三島横断・坂道サイクリング

宗方港で下船。ここから大三島を横切り多々羅大橋を目指す。

Zeiss Planar T* 2/50 ZM

大三島循環線を南回りで向かうことにしたが、大三島の道は起伏が激しく、高低差100mを一気に登る坂など峠越えが3か所ほどあり、サイクリング初心者にはかなりキツイ。無我夢中でペダルを漕いでいたためあまりシャッターは押せず…

しまなみ海道

キツイ道を通過し、伯方島方面から来たしまなみ海道のルートと合流すると、多々羅大橋が視界に入る。

多々羅大橋が見えてくる
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

多々羅大橋

大三島・生口島の愛媛・広島県境に架かる多々羅大橋は、中央支間長890mで、1995年の供用時点では世界最長の斜張橋である。しまなみ海道の一部であり、歩行者・自転車道が整備されている。橋にアプローチする上り坂の勾配が3%程度に設計されていて、とても登りやすいことに感動を覚えながら橋上に差し掛かる。

多々羅大橋と生口島
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

光線の向きが違うだけで橋の印象がまるで違う。

多々羅大橋②
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

生口島からゆめしま海道へ

生口島のしまなみ海道のサイクリングコースは、多々羅大橋から北に向かい瀬戸田を通過して因島に抜けていくが、今回は南岸を通り洲江港を目指していく。
さて、生口島といえば瀬戸田、瀬戸田といえばレモン、である。生口島とお隣の高根島の「瀬戸田レモン」の生産量はなんと国内産レモンの3割を占め、日本一の生産量を誇っているという。ちなみに広島県内で最初にレモンの栽培をしたのは、前日訪れた豊町大長であるという。
また、瀬戸田の町はサイクリングの休憩地点として商店街にはカフェが立ち並び、観光拠点としては耕三寺未来心の丘が有名である。

耕三寺 五重塔(2021.03撮影)
Nikon Z6

耕三寺は、実業家の金本耕三が1935年、前年に亡くなった母の菩提を弔うため作った寺である。建造物は日本全国の著名な歴史的建造物を模したものとなっている。
またこの耕三寺の裏の丘は「未来心の丘(みらいしんのおか)」という大理石でできた(?)庭園となっており、一面真っ白のフォトジェニックな(コンセプトがよくわからない)空間になっている。

未来心の丘①(2021.03撮影)
Nikon Z6
未来心の丘②(2021.03撮影)
Nikon Z6

そろそろ読者諸君もお気づきかと思うが、この日の私は自転車を漕ぐので精いっぱいで、なかなかシャッターを押せていない。サイクリング初心者の自分が数十kmのロングライドをしている訳で、体力的にはかなりキツイのである。
生口島の紹介でお茶を濁したところで、洲江港からフェリーで岩城島の小漕(おこぎ)港へ。ここでも写真を撮り忘れている、どんだけ疲れていたんだ俺…

ゆめしま海道

岩城島とゆめしま海道

岩城島(いわぎじま)は、生口島の南側にある、愛媛県上島町に属する離島である。ゆめしま海道サイクリングコースは、この島から生名島、佐島を経由し弓削島までをつないでいる。本州とは陸路で繋がっていないため、しまなみ海道と比べると訪問難易度は高い。
一方、瀬戸内の島に外れなしという言葉どおり(要出典)、絶景に恵まれた島々である。例えばこの岩城島には積善山という桜の名所があり、見ごろを迎えると三千本の桜が満開となる。

さて、私が岩城島とゆめしま海道を訪れた理由は、旅行のわずか10日前、2022年3月20日に開通したこの岩城橋を渡るためである。

ピカピカの岩城橋
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

ダメージのほとんどないアスファルトを踏んで橋を渡っていくと、クレーンが目に入る。本州と道が繋がっていなくても、漁業・農業に加えて造船業と産業に恵まれ、温暖な気候と相まって豊かな暮らしを実現しているのだ。

豊かさの"象徴"
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

生名島・佐島から弓削島へ

岩城橋を渡り切り、ヘトヘトの状態で生名島に。無心で自転車を漕ぎつつけて生名橋のふもとの公園へ。ここにはゆめしま海道の碑が建っている。

Zeiss Planar T* 2/50 ZM

疲労困憊なので露出は適当、開放絞り、構図も何も考えられていない
潮風と街並みとサイクリングと、シリーズ(勝手に命名したが)は、③の執筆から④にかけて1年以上ブランクが空いている。モノ書きとしてどうかと思うが(そもそも俺はモノ書きではない)、そうなってしまったのは、写真が無さ過ぎて伝えられる情報に穴が開きすぎ、それを埋める文才も時間も当時の自分には無かったためである。ご容赦願いたい。

ちなみに文才は今でも無い

そんなこんなで佐島の集落を探訪するのを忘れ(マジでこの時の自分を叱りたい)、弓削島に着くと正気を取り戻し写真を撮り始める。

昼下がりの弓削
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

弓削橋を渡り切り、下り坂を駆け下りるとこんなエモい集落が。前輪がロックされない程度に急ブレーキをかけ、路地に入って一枚。

弓削橋と小舟と
Zeiss Planar T* 2/50 ZM
くぐりぬけて、
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

Planar 2/50を絞り開放で操れば、ふわっとした描写、ハイライトの粘り、とろけるような周辺減光が相まった"やさしい"写りになる。

"気を付けてね"
Zeiss Planar T* 2/50 ZM
"どこ見てんの?"
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

海辺の道沿いの看板やミラーには不思議な引力があって、つい見とれてしまうものである。そんな自分に「どこ見てんの?注意しろよ」とカーブミラーは語りかけてくるが、一方で自分からしたら「こんな綺麗な景色を見ないで、どこ見てんの?」とも言いたくなってくる。

上島町役場

弓削橋から少し走ったところが上島町の行政の中心地である。町役場・郵便局などがあり、スーパーや飲食店が並んでいたり今治までのフェリー乗り場があったりする。観光案内所でタイヤに空気を入れ、昼食を済ませ、目的地の上弓削港を目指す。

上弓削港
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

ここから因島の家老渡(かろうど)港に向かってフェリーに乗船。人口2500人ほどの島に昼でも30分に1本はフェリーがある事実が、いかに船が重要なインフラであるかを物語っている。

再びのしまなみ海道

家老渡でお出迎え
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

家老渡港へ到着。ここからは尾道へただひたすら自転車を漕ぐだけ。

因島から尾道へ

因島は、瀬戸内海のほぼ中央に位置し、温暖な気候に恵まれた美しい自然と、2016年4月に日本遺産となった村上海賊をはじめとする、豊かな伝統・文化にはぐくまれています。

因島観光協会HPより

家老渡港から因島大橋まで走る。市街地にはコンビニだけでなく大型スーパー、ホームセンターなどがあり、さっきまで走ってた上島町と比べると、本州と繋がっていることで、物流という"モノの豊かさ"が桁違いなのだと実感させられる。

因島といえばはっさくが有名である。道中に菓子処中島というお店が目に入り、名物のはっさく大福を頂いた。

菓子処中島を出て右手に、白滝山の五百羅漢が見える。

五百羅漢
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

そんなこんなで疲労回復をしつつ、因島大橋を渡って向島へ。尾道まではあと少し!と気合が入る。

因島大橋
NIKKOR Z 28mm f/2.8 SE
向島大橋
NIKKOR Z 28mm f/2.8 SE

尾道への渡船乗り場に到着。旅のクライマックスである。そして・・・

目的地・尾道
NIKKOR Z 28mm f/2.8 SE

向島の渡船乗り場から約三分、目的地の尾道に到着。2日目の累計走行距離は約80kmほど。こんなに走ったことは今までなかったが、なんとかやり切れた。達成感の塊である。
宿は市街地のホステルを予約した。チェックインを済ませ自転車を預けて、夜の尾道を散策する。

尾道・夜

陽が沈み、海は妖艶な色を見せ、街灯は優しく街を照らす。
街には車が行き交うが、夜の深まりにつれ、段々と静かになっていく。

静寂
Zeiss Planar T* 2/50 ZM
海はまだ眠らない
Zeiss Planar T* 2/50 ZM
湊は眠り往く
Zeiss Planar T* 2/50 ZM
「帰路」
Zeiss Planar T* 2/50 ZM

この日はこれにて終了。翌日は尾道から鞆の浦・福山へと向かう。

⑤に続く

写真はすべてNikon Z 6で撮影、Adobe Lightroom Classicで現像

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