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通じ合えない猫

その昔、アイドルの歌で「目と目でほーにゃらら〜」というヒット曲があった。見つめ合っただけでいい仲になりたい恋愛の曲だったような憶えがある。猫撮影は一期一会。毎回どんな子に出会えるか楽しみなのだが、同時に人見知りなビビリさんでないことを願う。ビビリさんの場合、まずうまく撮ることはできない。それは出会った瞬間にわかるケースがある。僕に違和感を覚えて逃げる。カメラに驚いて逃げるかのどちらかだ。取材先に着いて最初に猫のご機嫌伺いのためにご挨拶などはしない。突然カメラを向けられた時の猫の仕草を撮った方がよほど面白い画が撮れるからだ。僕のことなどお構いなしにカメラに突進して頭をこすりつけたり匂いを嗅いだり。ただしその場合、リスクが生じる。なんだこいつ怪しい奴だなと警戒して凝視する子がいる。下の写真は建物から猫が出てくるところを僕が外で待ち構えていたもの。のっそりゆっくり顔を出しお互い見つめ合った。4秒、5秒と時間が経過する。どうか逃げずに近づいてくれと願う。白猫は行こうか戻ろうか迷っている。10秒以上だろうか、こんなに長い時間、待つことは珍しいのだが、最後の数秒、目と目が合ったように思えた。その瞬間、猫は逃げた。

ひなたちゃん

ひなた2

腰が引けて警戒する白猫。いつも取材の際には人慣れしていますか?と飼い主さんに確認する。全然大丈夫ですよ。まあ大丈夫ですよ。おそらく大丈夫ですよ。という返事をいただけた場合は、では取材させてください。お願いします!ということになるのであるが、いざ行ってみるとそうでない場合がたまにある。この白猫もそうでない場合であった。一度警戒されたらもう撃沈。お店のスタッフさんやオーナーさんが入れ替わり立ち替わり、なだめようとするがどうにもならない。普段はお客さんに撫でられてとてもいい子だと言う。飼い主さんの言う通りそれは事実だと思う。もしカメラを持っていなかったらどんな振る舞いをしたのか?最初に優しく撫でて挨拶をしておくべきだったのか?二時間ほど粘ったが、いい仲にはなれなかった。

萩の子猫

画面中央、枝の上に猫がいます。20m以上のモミの木で遊んでいました。古民家ギャラリーを訪ねた時のこと。オーナーさんとの挨拶もそこそこに猫はどこにいますか?と尋ねると木の上で遊んでいると言う。はるか頭上を見上げるとモミの木のてっぺんにその子はいた。僕の存在に気づくと(いや、オーナーさんが外に出てきたせいかもしれない)まるでパルクールの達人のように枝と枝の間を軽快(まだ警戒されていない)なジャンプを繰り返しながら下へ降りてきた。しかしその途中、わずか3、4秒ほど、猫と目が合った。刹那、警戒されたと僕は悟った。(でもジャンプは軽快)この子の撮影は厳しくなるとわかってしまったのだ。高い木の枝の上にいたにもかかわらず、その視線は明らかに不審者を見つめる目であった。地上に降りてきた猫はまだ生後一年も経たない子猫でとても可愛い顔をしていた。ほんの数秒だけど、こちらに興味を示し近くまで寄ってきた。しかしオーナーさんが仕事で奥へ引っ込むと途端に距離を置くようになった。ここからが試練の始まりである。子猫だけあってボールを投げたりするとすっ飛んでやってくるがすぐに草陰に隠れてしまう。そんなことを二時間くらい繰り返し撮影を終えた。最後にオーナーさんがやってくると膝の上にピョンと乗って甘え放題。喉をゴロゴロさせて安らぐ姿を見せてくれた。

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この子がモミの木から降りてきた子猫。最後はここまで寄らせてくれた。すぐに逃げたけれど。お互い目と目を見て心が通じ合う。そういう良い仲になりたい♬と思うけれど良い仲になれないことが、時々、起こる。ありがとう。可愛い猫たち…。

#日記 #猫 #カメラ #旅



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