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心音は雨の音、雲のように移ろいでいくもの。

昨日は、久しぶりに雨が降った気がする。なんとなく。

うららかな春の陽気は、どこか片隅に追いやられたかのように昨日は肌寒く、空は暗くて冬空を思わせた。

揺れる電車。人の声。ビルの群生林。いつもの景色に、いつもの音。

そんな中で久しぶりの雨はどこか非日常な空間を思わせる。ぽつぽつ降る雨は地面に脈を打ち、辺り一面は雨の匂いに包まれて、しんとする。

雨が好き。ずっと前から。

傘を持つ手を少し震わせながら、友人の待つカフェへと向かった。会うのは数年ぶりだった。友人は仕事で北海道に住んでる為、顔を合わせることもほとんど出来なくなった。2週間ほど前からこっちに出張で帰ってきてることは知ってたけど、私も仕事が忙しくて中々予定が合わず、やっとの再会が昨日。

慣れ親しみ気を許した友人だったはずなのに、何故かカフェへ向かう道中、変な緊張感に襲われる。

数年という年月が、初対面の人に会う時のような気持ちにさせたのかもしれない。傘を握る手が少し湿ってた。雨で濡れたのか、汗で湿ったのかすら分からない。両耳に差し込んだイヤホンから流れる音楽が間奏に入る度に、自分の心音が聴こえた。

音楽。間奏。心音。雨音。順を縫うようにそれらの音が鼓膜を震わせる。

傘を打つ音、地面に脈打つ音。短くも等間隔で小さく鳴る雨音は心音みたいだった。

待ち合わせ場所。友人との再会。見た目は何も変わらない。中身も変わらないと言いたかったけど、昔とはどこか違った気がした。

やっぱり家庭を持ったことが一番大きいのかもしれない。達観していて私よりもよっぽど大人じみてた。数年もあれば、人は変わる。家庭を持つことも出来れば、仕事を辞めて住む場所も変えて、別の人生を歩みことが出来る。友人をみていると、そう思った。

それでも…。

やっぱり人の根底の部分は変わってなくて、他愛のない話に花を咲かせ気付けば日が落ちてた。涙が出るほど笑い、昔の話に記憶をすり合わせ、以前のような空気感があっという間に私達の周りを纏ってたと思う。

noteをしてることも初めて自分周りの友人で言った。「へぇ〜〇〇(私の名前)が?」と若干小馬鹿にしなような笑みを含ませながら、いいじゃん!と言ってくれた。まあ、私が本は読まない、読みたくないとずっと言ってたから、ましてや文章を書くなんてと小馬鹿にされるのも当たり前だと思う。

帰り際、また近い内に会お!と言葉を交わし駅前で別れた私達。

それぞれ自分の人生へと戻っていく。

近い内にとは言ったけど、それが近くないことは分かってる。それは私だけでなく、勿論友人もそう思ってると思う。

以前とは違う。生きてるだけで自分も自分の周りも含め、取り囲む環境は瞬間瞬間で移ろいで変わっていく。空を揺蕩う雲が風に流されるみたいに、刻一刻と形を変えて変わっていく。

でも、変わらないものもある。過ごした時間が、相手と築いた関係値や絆が過去を過去とせず、いまその瞬間にも以前のような風を吹かせてさえくれれば、また昔みたいに笑いあえる。なんとなく、そんな気がした。


帰りの電車でゆらゆら揺られ、いつもの様に窓に視線を送る。映画の早送りみたいに景色が流れる中、ぽつぽつと降る雨が窓を弾き水滴が滴ってた。

流れる景色に友人との記憶を重ね、

またいつか…心の中でそう呟いた。



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