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海の獣になりたくて

海獣が好きだ!
ゴジラとかモスラとかビオランテとか、そういう類の怪獣ではない。
海に棲む哺乳類の魅力に気付かされたのは、昨年2022年の夏のことだった。

誕生日に計画した三重への旅行で、暑さを避けるために鳥羽水族館に足を運んだ。そこで悠々とマイペースに寛ぎ泳ぐ、アザラシ、トド、セイウチ、マナティ、ジュゴン、イルカ・・・。魚やクラゲとは一味違う、丸みを帯びた温和なフォルム。哺乳類でありながら、なぜ海で暮らすことを選んだのかが私にはわからない。そのわからなさが面白い。一気に海獣の虜になった。

海獣に目覚めた日

圧倒的に格好いいトド
まず最初に目を引く生物がいた。きっと誰しも「トド」と言う言葉から、比喩として肥え太り動かないだらしない中年の姿を思い浮かべることが多いと思う。しかし実際のトドは、ダイナミックでしなやか、そして無駄のない泳ぎで圧倒的な運動神経を披露していた。頼しく、力強く、圧倒的な動きを見せつける鳥羽水族館のトドの様子に、思わず目が(♡♡)になってしまう。もはや「トド」は褒め言葉と言っても過言ではない。1tもあるオスの大きな体格からは想像もつかない俊敏さに、ギャップ萌えが止まらない。自分の固定概念や想像をたやすく超えていく海獣たちの意外な一面を知るたびに、私は彼らにハマっていった。

豊橋市動植物園のんほいパークのアザラシ

アザラシのように泳ぎたい
さて、私は今年の夏、ダイエットのためにプールのあるジムを契約してみた。まともに泳いだのは小中学生ぶりで、泳げども泳げども進みは遅く、水の中で無駄に体力を消耗してしまう。フワモコむっちり余裕の表情で水の中を自由自在にビュンビュン泳ぐアザラシが羨ましかった。ワガママボディにうるうるの瞳。可愛らしさでその身を包んだ海獣界のアイドルのような存在とも言えるアザラシ。漢字では海豹と書くのだそうだ。ふと自分と見比べてしまう。脂の乗った身体を持て余しているアラサーの私よ、女豹にはなれなくても、せめて海豹にはなれまいか。

そんな私に昨日、不思議なことが起きた。
仕事やら何やらで忙しく1ヶ月ぶりになってしまったジムのプールで、私は少しだけ海獣に進化したのである。水に身体が馴染み、たくさん泳いでもさほど疲れない。頑張りすぎず、力を入れず、穏やかな気持ちでのびのびと泳ぐ不思議な感覚。自分の体が水泳に適応したのだろうか?スイスイ泳ぐのは楽しく、頭が冴えてくる。ほんの少しだけ、ヒトからアザラシに近づいたのかもしれないなと、そんな気がした。

もしかしたら、こういう瞬間を何千年も何億年もの間にたくさん積み重ねて、陸で生活していた哺乳類たちは海に適応していったのかもしれない。努力を重ね、環境に適応して、穏やかな表情で堂々とユーモラスに生きる海の獣たち。その不思議さと面白さと力強さに、ものすごーく憧れるのであった。

スナメリってかわいい

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