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私が遭った性被害の話

今日、NHKのこの記事を読んだ。

この記事は全ての人に読んでほしいと思う。
(NHKさん、お願いですからこの記事を削除しないでください。)

この方は、命の危険を感じ、自身の尊厳を蔑ろにされた。
本当に許せないことだ。

もちろん、この方に限らず、表には出ることのない名もなき性被害が世界には溢れているのだろう。

1日も早く、こういった性被害がなくなることを望む。



私は、”男性”かつ”大柄”という属性のため、一般的にはこうした性被害からは比較的縁遠いところにいると言ってもよいと思う。


しかし、そんな私でも性被害に遭うことがある。
今日は私が遭った性被害について記しておきたいと思う。


地元から大学入学のため上京した。
最初は人間の多さに圧倒されたものだった。

しかし、私にとっては多様な人間が比較的自由に、そしてほどほどに他人に無関心に生きている東京という街は、とても生きやすかった。


20歳になる頃だっただろうか。
新宿にある某サンドイッチチェーン店サ〇ウェイで、友達を待っているときのことだった。

たしか4席ある壁に向かったカウンターにの右端に座っていたと思う。

席を1つ空けて男性2人組が座った。

なんとなく視線を感じ、ふとそちらに顔を向けてみると、何やら私の方を見て話しているようである。

「なんだろう」と不思議に思いつつも、本を読みながら友達を待っていた。

そうすると、ふとした瞬間に2人が席を詰めてきたのだ。

少しおかしいなと訝しんだ。
しかし、その程度にしか感じなかった。

もうしばらく経つと、近いほうの席の人が右手を私のお尻に手を伸ばし触ってきたのだ(なお、この椅子は背もたれがない丸椅子だったと記憶している)。

その瞬間、船場吉兆さながら頭が真っ白になった。
そこからの記憶はあいまいで、とりあえずお盆を持って立ち上がり、何かを言いながら立ち去った気がする。

たしか「お先に失礼します」と言っていたような気もする。


この話はしばらく誰にも言えなかった。
なんとなく自分事と認識するのが怖かったんだと思う。


そこから私の性被害が始まった。

次は電車の中の痴漢だった。

最初は満員電車で男性にお尻を触られた。
次も同じだった。

その次は、半身で前に向かい合って立っている男性から股間を触られた。
その間、ずっと顔を見つめられていた。

こういったことが何度もあった。


抵抗すればいいじゃないかと言われることもあると思う。
もちろん体格がいい私が抵抗すれば、そんな行為はすぐに止められたであろう。

それでも、いざそういった場面に出くわすと身体が硬直し、声も出なくなるのだ。
そうなるともう次の駅でいったん降りるしかないのだ。

本当に悔しかった。
何の罪もない私がなんで電車を降りなければならないのだ。

また、声をあげればよかったという人もいた。
しかし、相手より体格のいい私が、その人の手をつかんで「痴漢です」と言ったところで誰が信じてくれただろう。

きっと周囲の人だって、警察だって信じてくれないだろうし、相手に抗弁されたら私が加害者に仕立てあげられるかもしれないのだ。

いや、そんなことはなかったかもしれない。
でも少なくともその時は、そうとしか思えなかった。


海外でもあった。
両親と東南アジアに旅行した時のことだ。

家族で大きめのマッサージ店に入って同じコースを頼んだのだが、両親は1階のオープンスペースのソファに案内され、女性からマッサージを受けた。

一方、私は2階のカーテンで仕切られたベッドに案内され、男性のマッサージ師の施術を受けることになった。

この男性は頻りに下半身を触り、ことあるごとに私の下着を脱がせようとしてきた。
本当に一刻も気が休まらない60分だった。



これ以外にも、性被害と呼べるほどでもないことはたくさんある。

つい先日のことだが、とある立ち飲み屋で一人で飲んだ時、近くにいた数人の方と話しはじめた。

そのうちの一人の女性が酩酊し、もう飲んでられないとなったので、別な方に「駅まで送ってあげなよ」と言われ、幸い駅も遠くなかったため快く引き受けた。

駅に近づいていくと、ふと正気に戻ったかのように私の顔や身体をまじまじと見始め、
「あなたカッコいいわね。私のタイプだわ。家はどこ?この近く?連れてって!」
と言われたのだった。

この時、駅まで送っていくという善意につけこまれ裏切られたという悲しい気持ちと、見ず知らずの人に性的な対象とされたという不快な気持ちが込み上げ、その人をその場に走って逃げてしまった。


こういう出来事はこれまでもたくさんあった。
そのたびに、女性はこんなことが日常茶飯事なのかと絶望した。

もっと悲しくなるのは、こういった話を同性にすると「ラッキーじゃん」とか「据え膳食わぬは云々」と言われることである。

そうか、こんなにも男性は無理解な人が多いのかと感じ、それ以来男性にはこういった話を笑い話としてしかできないと思うようになった。


1点だけ理解してほしいのが、私は同性愛とかLGBTQについては何の嫌悪感もないし、もっと認められてほしいなという立場であるということ。

これらの事象は性的指向とは関係なく、当人の同意がなかったり、善意につけこんだりと、誰かの人権を侵害しているという点だけが問題なのである。

これでも私はこういった性被害に遭いにくい属性であるわけだから、ほとんどすべての女性はこういった何かしらの性被害に遭っているのだと思う。

本当に許せないことだ。

こういった性被害がない社会をみんなで作っていきたいと思うし、みんながそう思ってほしいと思うわけだが、そういうことを考えるときに顕在化しにくいけれど、性被害に遭っている男性もいるのだなということを頭の片隅にでも残してくれたら、この記事を書いた意味があったなと思う。

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