見出し画像

カーナビ


英世は深夜山道を愛車のボロボロの軽を運転していた
ボロボロだけど買ったのは半年前、買った時からボロボロだった
英世は中古車屋でカーナビがついている車で一番安かったからソレを選んだ
今日は東京から長野の田舎まで下道で行く途中だ

あれ?しかし変だな実家の近くの方まで来てるんだけどこの道は記憶にないなあ

道はどんどん狭くなっていきついにアスファルトでは無くなって砂利道になってしまった
これは本格的に変だと思った英世は一旦引き返す事にした

65歳の英世は一人暮らし丁度会社を引退したところ、会社会社でいつも社長の顔を伺い過ごしていた典型的な右向け右人間で社長に受けそうな事を何でもしたし部下は相当数犠牲にした、そんな会社人間が職を離れてしまうと何をしていいか解らない日々が続き頭が狂いそうだった、だから田舎に少し世話になって頭のリフレッシュを図ろうと思ってボロボロの軽でここまで来たのだ

道を引き返しているだけなのにアスファルトの道に辿り着かない、カーナビは真っ暗なところに矢印がついているだけ、しかしどんどん引き返していくと何か知っているような雰囲気になってきた、そして大きな集落が見えてきた、集落は道の一段下の大きな川沿いにあり集落へは車で入れない

ああ実家のある隣の集落だな、しかし随分と古く見えるなあ、ちょっとあそこの広いところに車を停めて見に行ってみよう

もうすぐ夜明けでだんだん明るくなってきた、英世は車を停め、懐かしくとも何か変な感じがする集落の中に歩いて行ってみた、そして点在する家を見て回った

おーおー、こりゃ古いわ、完全に昭和40年代だしかし生活感はバリバリあるなぁ、あれは友達だった富雄の家じゃないか?おかしいなあ、あいつの家確か建て替えてたよなあ

と、どんどん集落の奥に入って行き色々と家を見て回った、懐かしいその家々を見ていると時間を忘れてしまった、すっかり明るくなってきた

なんか視線を感じるんだよなぁ あ、こうしちゃいられない腹も減ってきたし車に戻ろう

集落から一段上にある車を停めたところに戻るため階段を登った、そこには古めかしいパトカーと警察官が居て英世は捕まってしまった、英世は思い出した、小学生の頃隣の集落で自分の名を名乗る変人が出たと噂になった事を

月に行かせて(笑