【#6 空想就活】「おまえこそもっと想像力あるやつだと思っていたよ。」
就活を共に進めている友達たちと飲んだとき、映画『チワワちゃん』の話になった。すでに観ていたのは僕だけで、あとの3人は観ていないらしい。
女の子の1人が、
「観た私の友達が、『ストーリーがなかった』って。」
と言った。
僕は、
「少し違うんじゃないかな……」
と心のなかで思った。
「ストーリーがない」ことは『チワワちゃん』の構造でありそれは感想ではない、
「ストーリーがない」ことは「不在」をめぐる物語が普遍してもっている構造だ、
というのが僕の感想だった。
だけど、そのまま伝えるのはやめた。
そんなことを口にすると、彼女の手元にあるレモンサワーがなくなるタイミングでお開きになってしまう。
だから、岡崎京子似(ホント!)のその女の子には、「断片的な話を観ている人が繋ぎ合わさないといけないからね」
と伝えた。
とてもマイルドに伝えられたと思った。
もう一品頼もうかなと思った。
すると彼女は、
「それって、私の友達の想像力が足りないって言いたいの?」
と切り返した。
その通りだ、と思った。
さあ、自分が「想像力がある人です」とも言えないので困った。
結局、もう一品頼むことはなかった。
だけど、もう一杯だけ飲むことになった。
その後、仲間内ではその岡崎京子似の女の子と僕だけがテレビ局の最終面接に残った。
結果、彼女は受かって、僕は落ちた。
今日、3/1に就活が解禁されたらしい。
「就活って現代におけるある種のイニシエーションだよね」
って、早稲田の『てんや』のカウンター席で誰かが言ってた。
「儀式って想像力と不可分だよな」
って、ゆでそばの柚子の香りを嗅ぎながら思った。
合計たったの3時間で相手に自分のことを知ってもらうためには、
配合は「マジ30% 相手の妄想70%」くらいがちょうどいいよななんて思った。
「こいつにバンジー飛ばしたい」なんて思ってもらえれば
「『いま地面に顔すこしつきましたよ! なにやってんすか!』ってツッコまれたい」なんて思ってもらえれば
想像してもらえたら儀式完了じゃん。
想像力万歳。
就活解禁万歳。
今週の『アララ』は「空想就活」というお題だそうです。
明日、明後日の2人に託します。
あ、映画『何者』の予告で山田孝之の「お前こそもっと想像力あるやつだと思ってたよ。」って言っていたのを思い出しました。