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コンテンツ会議

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本や映画やテレビや音楽。世の中の触れたコンテンツについて記すノートです。
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#コンテンツ会議

好奇心は愛よりも強い

好奇心は愛よりも強い

1ヶ月ほど前に、『オリガ・モリソヴナの反語法』という米原万里さんの有名な小説を読んだ。

ソ連で幼少期を過ごした日本人の主人公シーマチカが、そのときに出会ったあるロシア人女性の謎を、大人になってからひも解いていく……といった内容で、一見謎解き小説のようでありながらも、ペレストロイカの時代に生きたロシア(ソ連)の女性たちの運命を鮮明に描いている社会派な小説だ。

残酷な運命を描いているのにどこか喜劇

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「サヨナラ」に対して人が紡ぐことばについて。

「サヨナラ」に対して人が紡ぐことばについて。

お昼休みに中島らもさんのエッセイ『愛をひっかけるための釘』を読んでいたら、こんな文章が出てきた。

この世のものならぬ至福の中に自分があればあるほど、いつかそのめまいに似た幸福に終わりがくるであろう予感も確固たるものになってくる。

(中略)時代が変わり、人が変わるたびにさまざまな表現で言いあらわされるけれど、本質はすべて同じことである。「生者必滅(しょうじゃひつめつ)、会者定離(えしゃじょう

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強烈に残るワンシーンがあるということ。

強烈に残るワンシーンがあるということ。

小説や映画が好きなのだけれど、物覚えが悪くて、すぐに話の内容を忘れてしまう。どんなに感動した作品でも「どんな話なの?」と聞かれると、あれ……どんな話だったっけ?  とことばに詰まってしまうことがよくある。

そんな時に思うのは、「強烈なワンシーン」がある作品は強いなあということ。

たとえば私は『クレイマー、クレイマー』という映画がだいすきなのだけど、話の概要は「家事や育児を妻に任せっきりだった主

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「知りたい」という根源的なチカラ

「知りたい」という根源的なチカラ

「どうしても読んで欲しい810円(税込)がここにある──。」

先週、日曜日の夜。友達との待ちあわせの時間までに少し余裕があったときに立ち寄った本屋さんで、偶然「文庫X」が目にとまった。

昨年、岩手県の盛岡市の書店で、タイトルを隠して売られたことで話題になった「文庫X」。いつのまにか、その中身の正体を公表していた、らしい。

「文庫X」の存在をはじめて知ったとき、正直、そこまで惹かれはしなかった

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