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Of is "オブ" not "オフ"

 六月上旬に、ウイッチャーファンにとっての聖典、最高級の本が発売された。

 私の国でAmazonを使うと高額な送料が徴収されるので、手っ取り早く会社付近の日本語書籍を扱うジュン○堂に赴いた。さて早速書籍情報をプリントし……おい待て検索端末のモニターがついてないぞ。

「あのすみません。これ電源入れています?」

「入れてるはずなんですけど。スリープモードじゃないすかね。タッチしました?」

「さっきからタッチしてるんですが、ほら」私は人差し指で何度もモニターを突いた。「反応ないです」

「ふへー、落ちってしまったか、少々お待ち……」店員がカウンターの向こうで何かいじった。「あっ、起動まで少し時間かかるんで、探している本があればこちらに書いてください。」と紙切れを渡された。うへえ、日本語の手書きがコンプレックス持っているほど超下手だよな。幼稚園児より汚いよマジで。でもほかに方法がなさそうだし、仕方ない。

 私は社会人とは思えない拙劣な字で『ワークド オフ ウィッチャー』と書いて店員に渡した。

「ワールドオフ……なに?」「ウィッチャーです」「ああ、はい。では探してみますね」

 店員が作業用パソコンのキーボードを叩いた。

「えっと、見つかりませんね。タイトルはこれで正しいですか?」

「正しいと思うんですけど」

「しかし本当にないんです。検索機がオンラインしたらもう一度検索して頂けますか?」

「そうします。じゃほかの本を見てくるんで……」

 私は漫画コーナーに向かい、購入予定だった、メイドインアビス八巻を手に取ってレジに戻った。検索機は稼働している。私はウィッチャーを入力し検索ボタンを押した。目当ての最高級の本がちゃんとあったじゃないか。ポンコツ店員め、とりあえず書籍情報をプリントし注文を……

 その時私は大事なことに気づいた。

 私が注文しようとしている本、その日本語タイトルはワールド・オブ・ウィッチャーだ。

 オブだ。

 オフではない。

 KRA-TOOOOOM!漫画なら雷が響き渡り、稲妻が私の頭をかち割ったところだろう。

 そいえばそうだった、デイ・オブ・ザ・ロブスター、エイジ・オブ・マッポーカリプス。これらのofは全部オブと訳されている。なぜいままで疑問すら思わなかった。だってofのf音読は[ f ]で……いや待てよ。これはもしかして……私は辞書アプリを起動し、検索バーにofを入力した。

https://ejje.weblio.jp/content/of

 Of、音読[(ə)v]、つまり発音はオブで正しい。

 DOOOOOOM!!映画だったら彗星が地球に衝突し、土と炎の破滅的波紋が地表を薙いでいくところだろう。

 おれの世界が壊れた。

 雨に打たれながら、廃墟になった都市の交差点で、おれは膝ついて泣き崩れた。

 だってよ、小さい頃通った英語教室のオーストラリアとカルフォルニアからのティーチャーにも、本国のティーチャーにも「オフ」だと教えられた。義務教育時代だってそうだった。過去の20年間、ずっとofをオフだと思っていた。おれの人生は無駄・オブ・無駄だった。

 この事実から、とある恐ろしい結果に導かれる。

 日本人にこそがOFの正しい発音を守っている。

 誰だよ日本人は英語が下手と言ったのは、謝れ。

 そして本は無事予約できた。今から楽しみだ。

「最高級の本だ!」

追記:ウィッチャー3:ワイルドハントはswitchで発売決定! Switchでウィッチャー……Switcher!

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