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倉庫現場作業者は見た! 倒産へのカウントダウン プロローグ

あらすじ

秋月光一は、名古屋の包装紙・紙袋製造メーカーに七年間勤めた倉庫作業者。
何事もない日常だったはずが、会社は毎月利益が出ているにもかかわらず、突如、58億円の負債を抱えて黒字倒産することに。
光一は倒産に直面することで、倉庫現場から見た今までのさまざまな問題を思い出す。
預かり商品の増加、倉庫スペースの逼迫、商品の劣化、顧客からのクレーム、営業担当者の退社、ボーナスの一律減額。
今思えば、すべて倒産へのカウントダウンが始まっていたと痛感する。
倒産後、光一は企業活動における倉庫業務の重要性を広めるプロジェクトを始め、自身の経験を生かして新たな未来を切り開く決意を固める。

プロローグ


秋月光一は名古屋の郊外にある自分の部屋でソファーに座りながらボーと考え事をしていた。

七年間働き続けた包装紙・紙袋の製造メーカーが倒産したという現実が、未だに彼の心を締め付けていたのだ。
まるで突然に訪れた嵐のように、彼の生活が根底から揺さぶられてしまった。

光一にとって、この会社はただの職場ではなかった。
それは彼の生活の一部であり、そこに自分の居場所を見つけ、仲間と共に過ごす毎日が日常となっていた。
会社の廊下を行き交う人々の笑顔、休憩時間に交わされる冗談、倉庫内での協力作業――それらすべてが彼にとって大切な瞬間であった。

今年30歳を迎えた光一は、倉庫作業者としてこの会社に勤め始めた時のことを思い出していた。
あの頃は、未来に対する漠然とした不安を抱きつつも、新しい環境でがむしゃらに働いていた。
最初は慣れない作業に戸惑い、体力的にも精神的にも厳しい日々が続いた。
しかし、次第に仕事に慣れ、同僚たちとの絆も深まっていった。
毎日の作業が次第にリズムとなり、彼の生活の一部となっていった。

倉庫内での作業は単調ではあるが、その中には確かなやりがいがあった。
商品の入出庫管理や在庫の整理、効率的なスペースの活用方法など、彼が積み上げてきたスキルは確かだった。
同僚たち、外部のトラックドライバーと協力し合いながら、毎日の仕事に取り組む中で、彼は次第に自信を深めていった。

光一は当時の自分の姿を思い返しながら、部屋の片隅に置かれた古い写真立てに目を向けた。
そこには、彼が入社した頃の写真が収められていた。若々しい顔立ちの光一が、同僚たちと共に笑顔で写っている。
その写真を見つめながら、彼は深い溜息をついた。

「どうしてこんなことになったんだ…」

光一は自分自身に問いかけた。2023年12月、会社は58億円の負債を抱えて倒産した。
同業他社に吸収合併されることで事業所自体は継続するが、名古屋市内の本社工場は閉鎖されることが決まり、吸収合併される関係で、人員削減がされて従業員の大半は解雇される運命にあった。
光一もその中の一人だった。

倒産の知らせが届いた日のことを、光一は鮮明に覚えていた。
会社の会議室に全従業員が集められ、重苦しい沈黙の中で社長が頭を下げる姿が目に焼き付いている。
彼の口から発せられた「倒産」という言葉は、まるで凍てつく刃のように彼の心に突き刺さった。
同僚たちの驚愕の表情、涙を浮かべる者、怒りを露わにする者――その場にいた全員の感情が一気に爆発した瞬間だった。

「俺はどうすればいいんだ…」

光一は自分の将来に対する不安で胸がいっぱいだった。
まだ30歳である自分には転職のチャンスがあるかもしれない。
しかし、7年間この仕事に従事してきた彼にとって、新しい職場で一から始めることは容易なことではなかった。
新しい職場で自分のスキルが通用するかどうか、それに加えて、新しい環境に適応できるかどうかという不安が彼を押しつぶしそうだった。

日々の仕事に慣れ、同僚たちとの絆を深めてきたからこそ、この会社がなくなるという現実は光一にとって耐え難いものだった。
毎朝の通勤路、昼休みに訪れる食堂、仕事終わりに同僚と行く居酒屋――それらすべてが彼の日常であり、それを失うことは自分の一部を失うことと同義だった。

光一が倉庫作業者として働き始めた頃、最初はその仕事の単調さに戸惑いもした。
しかし、次第にその中にあるリズムやルーチンを見つけ出し、それに合わせて効率よく働くことができるようになった。
同僚たちとの連携プレーで難局を乗り越えたときの一体感――それらの経験が、彼の心には深く刻み込まれていた。

光一の仕事は、商品の入出庫管理や在庫の整理だけにとどまらず、効率的なスペースの活用方法を考え、実践することも含まれていた。
彼が発案した倉庫内の動線改善案は、大きな成果を上げた。
そんな経験を通じて、光一は自分のスキルに自信を持ち、次第にリーダーシップを発揮するようになった。

彼はまた、倉庫内の作業環境の改善にも力を注いでいた。
従業員の休憩スペースを整備し、作業効率を上げるための工夫を凝らすことで、同僚たちの働きやすさを向上させた。
その結果、倉庫内の雰囲気は明るくなり、従業員同士の絆も深まっていった。
光一にとって、そうした小さな改善がもたらす大きな成果は、何よりも嬉しいものだった。

彼はまた、外部のトラックドライバーとも良好な関係を築いていた。
ドライバーたちが迅速かつ円滑に作業を進められるよう、倉庫内の動線や荷物の配置を工夫することは、彼にとって当たり前のことだった。
その結果、ドライバーたちからも信頼を得ることができ、彼らとの協力関係は強固なものとなっていた。

光一は、倉庫作業の重要性とそのやりがいを感じながら働いていた。
彼にとって、倉庫は単なる仕事場ではなく、自分自身の成長の場であり、仲間たちと共に歩んできた場所だった。
その場所がなくなるという現実は、彼にとって耐え難いものであり、自分の存在意義すら揺るがされる思いだった。

しかし、倒産の知らせを聞いた日から、彼の心には漠然とした不安と焦りが広がっていた。
新しい職場で自分のスキルが通用するかどうか、それに加えて、新しい環境に適応できるかどうかという不安が彼を押しつぶしそうだった。

光一は、これまでの自分の努力や経験が無駄になってしまうのではないかという恐怖に駆られていた。
だが、同時に彼は、自分にはまだやれることがあると信じていた。
新しい環境で再び一から始めることは確かに容易ではないが、彼は自分のスキルや経験を信じていた。

今までの仕事のことを思い出しながら、光一はふとテレビをつけた。
画面には「物流2024年問題」という特集が映し出され、ドライバー不足が物流業界の大きな問題となっていることを取り上げていたが、光一はそれを見て違和感を覚えた。

光一はテレビの画面を見つめながら、アナウンサーの話す内容を聞き入った。
だが、倉庫の役割り、重要性は、まったく説明されず、荷待ち問題の原因を作っているのは倉庫という印象を視聴者に強く与えている。

「なんで、倉庫の重要な役割が全く取り上げられていないんだ…」

そして、これまでの倉庫で働いていた状況が思い浮かんできた。

第1話:https://note.com/preview/n3557966b4e71?prev_access_key=b3cd32c5937262d2cbbdf5cad5d71f12

第2話:https://note.com/preview/nde1ae5de1e83?prev_access_key=73f8036f75d4debe5641f40cf9cde237

第3話:https://note.com/preview/n28ae53d95237?prev_access_key=62a4c6e401f29064109064a1c0c3fab0

第4話:https://note.com/preview/nc9ed030a0d5a?prev_access_key=c6e8ce6d57eb5b1b4c53430f32f90cc8

第5話:https://note.com/preview/n2329781c248c?prev_access_key=8bbb29924032668f4553bdb5d8545703

第6話:https://note.com/preview/nc1d620f552eb?prev_access_key=1f2dde0b485548bf5d7cd33a091f0326

第7話:https://note.com/preview/n799f96881610?prev_access_key=f7ae00f324dc514f0d1a48babf99f409

第8話:https://note.com/preview/nf37419bd958e?prev_access_key=d3ef1b670b176a5f75f1cf1d03b4d75e

第9話:https://note.com/preview/n57bedb34986c?prev_access_key=12e66ebbfbe19423c17003ba46fcb2bf

第10話:https://note.com/preview/n5da5b4c5c942?prev_access_key=b499a21b2a4cc54df6bd2c6420678df8

エピローグ:https://note.com/preview/n89116abf5286?prev_access_key=18446b09e7c5e8036ee53e71b55a8b6b


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