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オンラインイベント審査通過率/メディアの掲載率を上げるためにできること

個人ゲーム開発において、オンラインイベントやメディアへの掲載は告知の大きなチャンスとなります。なので落ちたり掲載されなかったりするととても辛い。

Twitterでも時々「落ちた」「載せてもらえなかった」といった声を聞きます。しかし、はたから見ていて「それは……落ちるんじゃないかな」と思うことも少なくありません。

繰り返し他の記事でも触れている通り、個人開発なんだから個人の自由にやればいいと思いますが、昨今インディー界隈も競争率が高くなってきましたので最低限の対策として、本稿ではメディアやイベントの掲載率を上げるために普段私が気をつけていることを紹介します。

なお私はINDIE LIVE EXPO(以下ILE)に出して落ちたことはありません。記憶があやふやですが今までに合計3〜4回、4〜5作品提出しています。

前提:ゲームの質と通過率は別問題

まず、ことILEに関してはゲームが実際に面白いかどうかはほぼ関係ないという認識です。だって「プレイアブル審査が必要ない」オンラインイベントやプレスリリースは、実際に遊んで審査されるわけではないので……。

どんな神ゲーでも募集要件を満たしてなかったり、提出した動画やテキストが魅力的でなければ、そしてメディアにとってプラスになりそうな美味しい情報でなければ通らないのではないでしょうか。

つまり「落ちたからといってあなたのゲームが実際におもんないという証明にはならない」です。ここ混ぜて凹むと凹み損なので混ぜてはいけない。

じゃ実際に面白い・おもんないかは置いとく(そもそも、応募の時点でできてるものを出すしかないですし)として、つまり極端に言うと、仮に手元にあるのが未完成のクソゲーだとしても、掲載率を上げる目的なら

-掲載条件を満たしている
-実際に面白いかは別として「面白そうか」
-おいしい情報であるようにする
-SNSとかで大手さんや他の個人開発者をいたずらにディスらない

以上を抑えておけば大体何とかなると思ってます。具体的にどんなことをしているかは、以下のとおりです。


取り扱われやすい情報の優先度を考え採択

応募する前に、ILEから送られてくるメールやメディアで見つけた関連記事、募集要項を隅々までチェックします。そして項目から「先方が何を求めているか」読み取るよう努めます。

以下ILEの応募要項アンケートで一番上に書かれている項目です。開発はなんやかんやで長期かかりますから、最下部の「上記要件に当てはまらない」状態の人も多いのではないでしょうか。

2023年春応募時のアンケートスクショ引用失礼します

この場合、おそらく上→下に向かって掲載が優先されるのだろう、と推察できます。なんで?? と思った方は、以下記事下段を読んでいただくと分かるかも知れません。

意識したいのは「ニュース性をどう担保するか」です。

未発表の情報は珠玉 〜情報を自分で出す前にシェアする〜

上述のILEのアンケートからも推察されるように、「初出し」タイミングは重要で、先にメディアに情報を渡し、発表されるまで自分も公表しない方が良い=その方が掲載率が上がる、と考えています。

個人開発だと「モックが動いた」「タイトルを決めた」など、つい嬉しくなって節目で発表しちゃいがちですが、特に情報初出しは「この情報、温存しなくていいのか?」を考えるようにしています。「モチベーションを保つために情報発信したい」気持ちもありますが、販促の時期を見越して、例えば「次のILE合わせで情報を出そう」と秘密にしてきました。

情報の出し惜しみをすると、なんかなんも作ってない開発者に見えてしまうのがちょっとなあ、というジレンマは「宣伝必須の有料ゲーム」と「さくっと作る気軽な無料ゲーム」を1本ずつ用意し、前者の情報はILEで出すまで死守し、後者の情報をちょこちょこ発信する方法で解決しています。

たいして拡散力のない私のような隅っちょ系開発者にとって、ILEに落ちるのは痛恨の極みであり、おそらく最終的には数割ゲームの売り上げに影響を与えるだろうとわかっています。あと落ちると普通に凹む。だからたかだか情報初出しのタイミングで掲載率を高められるなら、できる範囲でなんでもやります。

この話をとある開発者さんにしたところ「Twitterで情報出しちゃったゲームのタイトルと世界設定変えて、未発表作品にしちゃうのありですか?」とおっしゃっていました笑 実際にやったらあかんと思いますが、そういうしたたかな考え方も時には必要かも知れません。

中身で勝負……だけでは通らないのでは

2023年春、ILEに応募したものの公式から出た一報を読んで私は「落ちた」と思いました。

私が記載した発売日は一年半以上先だったからです。しかし、受かりました。

ではゲームがめちゃくちゃ面白いか? というと、自分で言うのもなんですが、そもそもまだ序盤しかできてないし、おとなしく動きのないゲームだし、テキストベースだし、正直なんか大丈夫かなと思っています。

おそらく受かった主な理由は、冒頭で触れたアンケートの「イベント放送日時点で未発表の情報だから」だったのではと推察します。

そしてゲーム自体は地味ですが、例えば動画を作るのに、映えそうなシーンを意識して繋ぎました。

とくにオンラインイベントではPVが重要になるが、「主人公がただ歩いているだけ」、「最初の5秒くらい開発会社やゲームのタイトルしかでない」みたいな動画がままある。

引用元:https://note.com/gamecast/n/n5be8434f8310

こういう記事とかもめっちゃ読んで参考にしています。

そんな人はいないと思いますが「中身さえよければ(テキストやPVに気合いを入れなくても)何かが伝わるはずだ!」みたいな考え方は幻想やと思ってるんで、私はちゃんとやります。

独力にこだわらず人を頼る

2023年春季のILEに提出した動画は15秒の尺です。自分の場合「このくらい一人で作れる」は大間違いだ、と思いました。

募集要項は厳守しなければなりません。しかし音圧に関する規定があり、私には手に負えそうになかったので素直に音専門の友人を頼りました。ゲーム画面を動かすにあたり、技術的な問題ではエンジンに詳しい人に質問しまくりました。

ILE関係のプレスリリース発信では、作ったメールの内容やリンクを同僚にチェックしてもらったところ、普通にダメなミスがあったりしました。

個人ゲーム界隈にはなぜか「独力で完結するのがすごい」みたいな空気が漂っている場所がありますが、自分一人で楽しむのではなくいずれ世に出すものですから、私は早い段階で作品や販促物を誰かに見てもらうようにしています。内容はともかく、意味は通じるか、誤解される要素はないかといった最低限のことができているか、一人では客観視やチェックに限界があるからです。

メディアは慈善事業ではなくビジネス

私も「あの記事どこだったっけ?」とアーカイブ的な使い方をすることはありますが、概ねプレイヤーは新しい、知らない情報を求めてイベントやメディアを訪れ、それらを元に広告収入等を得て運営されているはずです。

多くの社員を抱えたメディアや、ILEのような大きなイベントが慈善事業で存続しているわけではないでしょう。ユーザーが興味のない情報→来訪数や視聴率は下がる→スポンサーや広告枠減る→お金がない→メディアは潰れる……?! ニュース性によってお金になりやすい・なりにくい情報があり、なりやすい方が優先されるのは当然かと思います。

「超有名チームと超敏腕プロデューサーがタッグを組んで作られたゲームが100万本売れた」みたいなこともニュース性ですが、個人で目指すのは無理があります。

全方位文句なしの激おもろゲームが作れたり、私が小島秀夫さんなみに有名人ならこんなことを気にしなくてもいいのですが、そうでもないのでせめて、できる範囲で手軽にニュース性を高めるために「未発表の情報」を「タイミングを見極め」「面白そうに見えるか意識して」発信するようにしています。

狭い業界、普段から発言には注意を

某年、京都で開催されていたBitSummitでは業界の超大手各社がブースを構えていました。いやインディーイベントじゃないの?? とは私も思いました。しかし、実際に出展する際は「大手からお客さんが流れてくるってことでもあるな」と考えるようにしました。

時々、他の有名個人開発者を批判するネガティブツイートや、インディーへの大手参入が冷ややかな文脈で語られるのを目にします。しかし、ILEにはその大手各社がスポンサー枠で入っています。その他イベントやメディア、なにより将来お世話になるかもしれないパブリッシャー、各種エンジン、ミドルウェアのメーカー、元業界の人……「パートナー企業」「協賛」などでしっかり繋がっています。

くどいようですが、多くのメディアはビジネスとして運営されています。私たちが無料でILEのようなイベントに出展できるのは、大手さんがスポンサーになっているからでもあります。

インディーだから大手の力を借りない! みたいなことを普段発信している人がメディアとかILEに送ってたりするの、私からすると正直意味不明です。直接資金提供を受けなくても、リリースを送るその先に、大手さんからお金が流れていないということはまずないでしょう。

将来的にイベントやメディア、パブリッシャーのちからを借りたい気持ちが少しもないなら別ですが、遠い存在だと油断せず、普段から発言には気をつけたいものです。批判をしてはいけないということではなく「どこで誰が見てるかわからんので、不特定多数の人に、どう解釈されるかもわからない発信をしない」ようにしています。

おまけ:ときには好意も添えて

当落とは関係ないと思われますが、私はオンラインイベント応募やメディアへリリースを送る際、前回のお礼や、これからも続けてほしいと書き添えるようにしています。

運営さんもスタッフさんも人間ですから、心が折れて次回は開催できませんとなったら応募どころではないんで、スポンサーにはなれないまでも、せめて応援したいです。

世の中の仕組みを理解し利用する

私が語るまでもなく、世界の一部は表立って語られにくい、さまざまな不文律によって成り立っています。それはインディー界隈も同じでしょう。

少なくとも今回ご紹介した参加費の必要ないオンラインイベントに応募したりメディアにリリースを送ったりするのは「無料で協力を求める」行為です。利用したいなら、ゲーム内容「以外」の取りこぼしがないか、先方にとってもプラスになる何かを提供できるタイミングか、分析し戦略を立てるのをおすすめします。

余談:ILEのプレスキットは以下リンクからダウンロードできます

https://indie.live-expo.games/contact/


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