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インディーゲームイベントの審査関係者に聞いた、イベント応募前に確認して欲しいことと、審査通過のための豆知識

「私の作っているインディーゲーム、こんなに面白いと思っているのにイベント落選した!」
なんてTwitterで叫んでしまった経験はないだろうか。
昨今、インディーゲーム開発の機運も高まっており、イベントに申し込んでも落選してしまうことがあり、自分で叫ばずとも、インディーゲームの開発者なら1度は目にしたことがあると思う。

実は、その愚痴は一方的なものでもない。
「あー、このゲーム、結構面白そうなのに受からせられない!」
という審査側の悲痛な叫びもまたある。

いつか書こうと思っていたが、ちょうど『INDIE Live Expo 2023』の出展受付が始まったので、複数のイベント担当者、周辺業者から実際に聞いた「審査を通るために気を付けて欲しいこと」、つまりインディーゲームの展示会に出展するときに気を付けるべきポイントを共有しておく。

イベント応募の前に、審査担当者の悲痛な叫びを見て欲しい。

書類応募前に確認して欲しい叫び

Case1.「選考資料をダウンロード・閲覧させてくれ!」

・Google DriveなどのクラウドドライブのURLが誤っていて利用できない
・Firestorageを利用しているがダウンロード期限が過ぎて削除されている
・zipで送られてきたが解凍パスワードがない、もしくは間違っている

応募前に他人が見られるか、選考期間中有効なURLであるか、確認してから送信したほうが良い。他人からみられるか確認するためには、ブラウザのシークレットブラウズ(プライバシー保護モード)を使うと便利だ。
初歩的な……と驚くかもしれないが、どんなイベントでも発生するミス。

Case2.「ファイルが足りない!」

スクリーンショットが足りていない、既定のサイズではない、PVの規格が異なるなど。
フォルダ構成が指定されているイベントの場合はフォルダ構成のミスもありうる。

Case3.「ファイルフォーマットが違う!よく見たら前回のファイルを流用してるじゃん!」

スクリーンショットのサイズ、PVの尺、フォーマットなどが異なる。とくに前年の仕様で送られてしまう、などの話は聞く。
スクリーンショットは正しくてもPVは異なるとか、説明文の文字数が基準を満たしていないとか、複数回イベントに参加していると「前回通ったファイルを流用」して一部だけ先祖返りしているケースも。
応募要項を見てファイルを作成しよう。

Case4.「商標侵害しないでくれっ!」

ここは超重要。PVやスクリーンショットで他社の商標を侵害していることがままある。
「機動戦士ガンダム」や「仮面ライダー」、「北斗の拳」などの文字が映りこんだり、手癖で「コカ・コーラ」と明確に書かれた赤い缶を背景に入れてしまったり、謎解きゲームの説明文に「リアル脱出ゲーム(株式会社SCRAPの商標です)」と書いてあったり。
イベント審査に通過したければ商標を侵害する可能性のあるワードやロゴ、物体は使わないことが望ましい。いや、使ってはいけない。

多くのイベントで告知ページ、告知動画、告知プレスリリースなどを用意するが、告知活動中に商標侵害が発生すると、告知しなおし、動画作り直し、プレスリリース訂正などが発生して多大なコストがかかるため警戒される。
大事になる可能性があるため警戒心は高く、ここに触れていると落とされることも多い。だから、「使ってはいけない」という強い言葉になるわけだ。

パロディが必要なときは、はっきり異なる言い訳がたつものが良い。
例えば、文字利用するなら「機動戦士ガンダム」であれば「起毛戦士ガモダム」(を似た韻だけど字面は異なる)、「起動戦士グランガン」(きどうせんしで元ネタは分かるが、ガンダムとつなげないことで別物と示す)など。
コーラ缶のような物体であれば赤と白の曖昧なデザインでロゴのない「コーラ感のある缶」として出す、「コカ・コーラ」のコカの部分を「ペソ・コーラ」などの商標を侵さない別ものにした赤い缶、「コーラ」のロゴだけが入った青い缶にするなど。

実はコカ・コーラ、コーク、コカは商標だが、コーラは商標ではない。とはいえ、ギリギリを攻めるのはやめたほうが無難。

ただし、パロディのラインは審査する主体によって異なるので、これを守ってもはじかれる可能性はある。
あと、身もふたもない話をすると動作するゲーム内容に干渉できないことは多いので、ゲームそのものを審査するイベントでなければゲーム内は「機動戦士ガソダム」程度でもたぶん怒られない。たぶん。

Case5.「会場/プラットフォームの規定に違反している」

記事公開後に「これも入れておいてくれ!」と、反響があったので追加。
多くの場合はイベントの出展規約に盛り込まれているが、場合によっては会場/プラットフォームの規約の問題で審査落ちすることがある。
「過度に暴力的な表現の禁止」などとあいまいな審査基準が書いてあるイベントの場合、ギリギリを攻めている側は先に利用される会場・放送プラットフォームの規定を確認してその範囲に収めることが望ましい。

例えば、Youtubeの規約はこちら。
暴力的で生々しいコンテンツに関するポリシー(わりと緩い)
https://support.google.com/youtube/answer/2802008?hl=ja
ヌードと性的なコンテンツに関するポリシー(結構厳しい)
https://support.google.com/youtube/answer/2802002?hl=ja

オフライン会場では、会場それぞれの規約があるので会場の手引きなどを参照できる。

覚えておくと良い知識2つ

PVは面白そうなほど良い、最低限興味を引いてほしい。

とくにオンラインイベントではPVが重要になるが、「主人公がただ歩いているだけ」、「最初の5秒くらい開発会社やゲームのタイトルしかでない」みたいな動画がままある。
さらに、動画が面白ければ「応募規定からはみ出ていたとき、担当者が特別に連絡して修正の機会をもらえる」こともある(これはゲームの説明文やスクリーンショットで面白そうなゲームに見えるときも発生する)。

イベント出展のために動画を作るのは大変だが、オンラインなら特別重要だし、オフラインでも会場で良いPVを流していれば注目を集められる。
1つぐらいはマシなPVを作ることを心掛けるといいかも。

自分自身はPVの専門家ではないが、参考までに日本語字幕のあるトレイラーの作り方動画を紹介しておく。

出展する必要性があれば、それを伝えよう

「イベントに出展して意味があるゲームを優先してあげたい」と考えている選考担当者も多い。選考を通すか考えたとき、以下のような要素があると場合によっては有利になることがあるので、どこかで伝えるといいだろう。

1.発売日がイベント実施から近い(イベント実施日付近~次回イベント前に出る)
2.イベントに合わせてデモやベータテストがある
3.イベントに合わせて大型アップデートがある
4.イベントに合わせて重大告知(新規プラットフォームで発売される、特別なコラボがある、ほか)
5.イベントに合わせたデモが開発上重要である(オフラインで人の操作を見る必要がある、オンラインイベントでデモを大勢にプレイしてもらってテストしたい)

以上。

とくに商標に関しては毎年、Twitterで「落選した!」報告に対して心の中で(いや、そのゲームは商標が原因だと思うよ!)と突っ込んでしまうことも多かったので、ぜひ参考にしてほしい。

あと、次はインディー開発者のためのプレスリリース掲載の現状、出し方のコツなどを公開予定なのでお楽しみに。

記事に関する質問などはゲームキャストのDiscordまでどうぞ


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