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今期ドラマの葬儀シーン

ドラマでは時々、葬儀(葬式)のシーンが描かれます。例えば、今期『転職の魔王様』第5話では、交通事故の被害者・来栖(成田凌さん)が、加害者の葬式に参列。加害者の婚約者(葉山奨之さん)から、逆恨みともいえる酷い言葉を投げつけられます。

今期は他にも『彼女たちの犯罪』、『最高の教師』、『ギフテッド』などに葬儀シーンがありました。『ギフテッド』第1話の場合が典型的ですが、葬儀場の祭壇に遺影が飾られ、親族に参列者が挨拶し焼香という、現実でも一番多いパターン。

自分が子供の頃、祖父と祖母の葬儀は自宅で行われ、親族や近所の方が手伝いにやってきて、大賑わい。自宅の周りにはグルっと花輪が置かれ、その数が故人や跡取りの人脈を表すとされていました。

そんな昔の葬式を思い出すシーンが、今期『ばらかもん』第6話にありました。主人公(杉野遥亮さん)が、島でお世話になったヤスば(鷲尾真知子さん)が亡くなります。

すると、村中の人が集まって料理を作り、墓まで故人を見送る「野辺送り」。ヤスばを看取った看護師の育江(田中みな実さん)は気丈に振舞っていましたが、最後は号泣で縋り付き。幼い頃から、孫のように可愛がられていたのです。

中国の巨匠・張芸謀(チャン・イーモウ)監督の作品に『初恋のきた道』(2000年日本公開)というのがあります。日本でも結構ヒットしたのではないでしょうか。福岡アジア文化賞受賞時は、生で見る機会もありましたが、等身大のオジサンで、逆に好感を持ちました。

父の死で帰省した青年が、母と父のなれそめを追想していく。若き日の母=18歳の少女デイ(チャン・ツィイー)は、村にやってきた小学校教師チャンユーに一目ぼれ。以後、彼女はせっせと彼のために弁当を作り続けていくが…。チャン・ツィイーの初々しくも健気な美少女ぶりが観客の陶酔と涙を誘う。その一方で、老いた母の現代のシーンをモノクロームで捉えた描写の数々が実に秀逸(Amazonから引用

そう、このモノクロームのシーンが、若き日との対比で効いているんですよね。伝統的な葬列にこだわった母。息子は母の想いに気が付き、無理を言って棺を村まで担いで戻るのでした。『ばらかもん』を見て、この映画を思い出しました。

ちなみに、福岡アジア美術館の「山の野辺送り」(ワン・ホンジエン=王宏剣)という作品も機会があれば是非。

描かれた葬式もあれば、描かれなかった葬儀もある。朝ドラ『らんまん』における田邊前教授(要潤さん)の死がそれ。堀井憲一郎さんの考察がなかなか面白く。


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