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住めば都

私は、築年数不詳の古民家に住んでいる。古民家といえば聞こえはいいが、少なくとも半世紀、70年くらいは経っていそうな雰囲気だ。外壁は若干ひび割れているものの、床は本物の木が使われていて、焦茶色の梁が張り巡らされて白い壁とのコントラストが美しい。レトロな雰囲気に一瞬で魅了された。
2階建てで、各部屋は広くはないが四角い形で使い勝手がよさそう。3階に屋上もあり、洗濯物も布団も問題なく干せる。ビニールプールやピクニックも楽しめそう。周りに高い建物もなく、見晴らしも良好だ。何よりも、戸建で地に足をつけて子育てできるのがよいと思った。

とはいえ、入居を決める最後まで、「浴室」で悩んでいた。実は、我が家が建てられた当初はお風呂がついていなかったようなのだ。資料によれば、昭和40年代に2階へ続く階段の下に浴室が作られたとのこと。そのため、風呂釜は階段と同じ幅、ほぼ真四角に近く、足を伸ばせない。加えて、風呂釜上の天井は階段と同じように斜めになっていて、大人はまっすぐ立つことができない。

家自体は気に入っているので、マイナスポイントを探していくより、何が譲れなくて、妥協できるかを考えた。Quality of Life(人生・生活の質)の観点から、我が家にとってお風呂がどの程度重要度を占めているのか。24時間のうち、お風呂に滞在する時間は最大1時間。我々の共通見解としては、浴室は重要ではない、もし広いお風呂に入りたくなったらどこか温泉にでも行こう、ということで満場一致。今年で入居6年目になる。

子どもたちは、浴室にすぐ慣れた。
お風呂で水遊び、目を離した瞬間にボディソープを全部使った泡風呂。ゴーグルを使って潜り、工夫して遊んでいる。シャボン玉をする時もある。
そして、何よりも旅行に行った時、温泉でテンションが上がるのはもちろんのこと、ビジネスホテルの客室ユニットバスでさえも「ひろーい!」と大喜び。

夫も私も結婚前はそれぞれバックパッカーで、安宿に泊まるのは全く問題なし。むしろ宿泊費よりおいしいものを食べたい、長く旅行に行きたい、という感覚が合致しているからこその、選択だと思う。

旅行で家を空けて、しばらくぶりにこの古い家に帰ってくると、ほっとする。生活感に溢れ返っているけれど、愛着がある。

広い家にも憧れはあるが、自分が管理しきれなさそうだ。なんだかんだ身の丈にあったサイズの家が落ち着くのかもしれない。

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