承認中毒な私たち - SNSを改めて考える(前編)
先日Twitterでもお伝えしたとおり、8月に文化人類学者・磯野真穂先生からのお誘いで「SNS(Web空間)での過ごし方」というテーマでお話する機会をいただいた。(タイトルむっちゃ恥ずかしいです・・^^;トークショーというよりはみんなで考えよう、喋ろうって感じになるとおもいます・・)
さてさてどうしたものか。想定される参加者の方々の年齢や属性の幅がひろいようなのでどこにポイントを置くべきなのかちょっと悩んでいる。ということでお話の準備として、noteに文章を書きながらちょっとSNSについて改めて考えてみたい。
SNSとつきあいはじめて15年
自分は大学時代に世界で最初のSNSといわれるorkutに登録し(このorkut知ってる人SNS猛者です)、サービスがはじまったばかりのmixi、GREEも招待状(当時招待制だった)をもらい、いち早く参加することができ、どっぷりSNSにはまった。
そのあとサイバーエージェントに新卒入社してまだ珍しかったSNSの広告キャンペーンを提案したり、1年後に転職してグリーでソーシャルゲーム事業の立ち上げをやったりして、そして今はYouTubeやSNSを舞台に大暴れ(?)してるバーチャルYouTuberをプロデュースしたりしている。仕事に関してSNSでつながった出会いはかなり多く、案件につながることもあったり、一緒に働く仲間を見つけたりしてきた。
そういう意味で、SNSをはじめた大学4年(2004年)の時から15年間、もはやキャリア全体を通してネット業界どころか、SNS業界でずっと働いてきたことになる。自分は、SNSによって人生を大きく良い方向に変えてもらったと思う。
2004年からの誕生以来、SNSの概念は廃れることなくどんどん広がり、もはや国際政治、社会問題、企業活動や、人の価値観をも大きく動かすようになってしまった。
世界的にはもちろん、日本においても主要SNSの利用率は極めて高い。
どうしてこんなにSNSをみんな使うのか。その根元を探っていきたい。
SNSにハマる理由 - 自己承認欲求を満たす他者からのリアクション
自分はSNS業界でずっと働いてきたこともあり、どうして人がSNSにハマってしまうのかということを、数値を基に分析したりもした。そして発見したのが以下の事実だった。
SNSサービスの通知において最も反応率が高い通知は、ユーザー自身になんらかのリアクション(フォロー, いいね)がきたことを伝えるもの
フォロー, いいね。これらのリアクションは自分自身が誰かに注目された、ポジティブなフィードバックをもらったことを示すもので、この通知をみると自己承認欲求が満たされた気分を味わえる。(たとえフォロー/いいねしてる側はそこまで考えてないにしても・・。)
これが一種の心理ドライバーとなり、人はよりいっそう、いいねやフォロワーを獲得するために投稿内容を工夫したりプロフィールの見栄えをよくするようになっていく。そうして投稿が増え、リアクションが増え、また利用者が増えとサイクルが回っていくことで、SNSは爆発的にヒットしていく。
ちなみに2004-2005年頃に生まれていた初期SNSサービスは日記にコメントを残すという方法しかなかった。またフォロー/フォロワーという関係性はなく友達(Friend)という関係性のみを使用していた。
Game Changerだったのが2007年のSXSWで大ヒットしたTwitterの登場。Twitterは3つの大きな特徴を兼ね備えていた。
1. 140字のつぶやき
それまでは日記しか書けなかった他SNSと違い、140字の「つぶやき」投稿を採用。ユーザーの投稿ハードルを極端に下げた。
※また、つぶやきは数行程度の文章になることから、たくさんのつぶやきを一覧できるタイムラインUIを採用できた。
2. フォロー/フォロワー
友達ではなくて、フォロー/フォロワーという言葉を採用。友達になる/外すという行為よりもずっと心理的負担を軽くした。
3. いいね(Favorites)
つぶやきにはリプ(リプライ)だけでなく、よかったという意味で押されるFavorite(2015年よりいいねに変更)ボタンを用意。リアクションの負担を軽くした。
これによりTwitterは他SNSサービスよりも投稿数とリアクション数を爆発的に増やすことに成功。Facebookもその成功を見てか、タイムライン、フォロー、いいねなどの機能を実装していく。
そしてスマホ(=iPhone)が発売され、市民権を獲得していくにしたがい、文章を書くよりも手軽な写真投稿がSNSでも多く見られようになる。この写真に目をつけ、フィルター機能を導入することで誰でもおしゃれな写真投稿ができるSNSとして人気を獲得したのがInstagramだ。家族、友達、恋人の写真、交友関係、ペット、食べ物、旅行、着まわし、様々な写真をおしゃれにフィルターかけて魅せていくインスタカルチャーが生まれる。
写真を中心としたサービスはリアクションの面でもよかった。なぜなら人間は文字よりもイメージの方が瞬時に内容を把握できるからだ。(これに加えてInstagramはダブルタップでいいねができるUIを採用していく。これもリアクションを簡単にする工夫といえる。)
これらの特徴が受けてTwitterとは違い、Instagramは若年 & 女性層を中心に大きく飛躍していく。とはいえ中心となる層は違えど、Twitterの時と同じく投稿とリアクションが増える工夫をすることで多くの承認欲求を満たすサイクルをつくったからこその飛躍だった。
時代がすすんで2019年の現在。Twitter, Instagramも変わらず人気だが、新しく今人気なのはどんどんスワイプするだけで画面いっぱいに、音楽にあわせて女性や子どもが踊り出すTik Tok。写真ほど簡単ではないが、動画に使える音楽は豊富に用意されているし、スローで音楽を再生しながらゆっくり踊りを録画できたりと、投稿の簡単さはやはりこだわっている。タイムラインさえなくスワイプだけでどんどんたくさんの動画が見れるし、ダブルタップいいねももちろん採用されており、リアクションが増えるUIになっている。
承認中毒 - 中毒化していく承認欲求
Twitter, Instagram, TikTokを見てきたが、主となる投稿の表現形態は違えど、ユーザーの欲求は似ている。人間はどのSNSを使っていてもリアクション(フォロワー, いいね)が増えると嬉しい。たとえ親密な人だけにフォロワーを限定している鍵垢でさえも、その限定しているフォロワーからいいねがこないとさみしい人は多いだろう。これがSNSを誰もが使ってしまう心理メカニズムなのだと考えている。
リアクションがあると嬉しいというのは、人間の根元欲求なのかもしれない。赤ん坊や子どもは親や周囲の人のリアクションを求め続ける。自分に注意してもらいたくて、力いっぱい泣いたり、「まま、ぱぱ」と呼びかける。言語になってない時でさえも「あーうー」と声を発する。そんな時、親から「どうしたの?」「いつもそばにいるよ」と呼びかけられることで安心していく。聞いてもらえてる、自分の存在を承認してもらえてる、そういう承認欲求を満たされていくことで子どもは育っていく。リアクションを求めるというのは極めて自然な欲求なのだろう。
しかし、SNSが生まれて随分と時間が経ったことで、SNSがこの承認欲求を肥大化させてるのかもしれないと思えてきた。
・より多くの注目といいねを集めるため(≒バズるため)に社会的に問題のある行動を起こす
・周囲の人とフォロワー数、いいね数を比較したり、他人の充実した投稿と自分の生活を比較して、気持ちを落としてしまう
フォロワーが増えたらもっとほしくなる。いいねがたくさんきたら次はもっといいねされたくなる。中毒のように承認を求めてしまう人たちが、今増えてるような気がしている。
「中毒」にならず、適度に承認欲求を満たしながら、前向きにSNSを利用する方法はないか。SNSのアルゴリズムや、ソーシャルの限界などを考えながら引き続き考察を続けていきたい。
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今回の記事を書くにあたり、以下のみなさんのnote記事が色々勉強になったり考えさせられました。自己承認欲求、SNSの功罪、いいバランスを考えていきたいなと思います。
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