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いま成績や責務よりも、もっと大事なこと

パリオリンピックのジングルが好きだ。
そしてこの大会を、想像していた倍以上に楽しんでいる。

大会序盤、まず大きな衝撃を受けたのはスケボー男子ストリートの白井空良選手。第一印象は正直「ちょっと話合わなそうだな」だった。しかし競技を見ていくにつれて、彼が心から競技を楽しんでいる姿に強く惹き込まれた。

そして大会を終えたインタビューでは底抜けの明るさであっという間に魅了された。「太陽みたいな最高な男だな、めちゃくちゃ好きだわ」と思った。人生をかけているスケボーという競技がこんなに楽しいんだと全身から放っていた。そこに心を奪われていた。

女子バレーボールの古賀選手は、代表引退を控えたグループリーグの3試合を終えて「今日はキャプテンとか考えず、バレーボールが大好きな古賀紗理那として戦いました」と振り返り、立場や責務よりも、人生をかけてきた競技を心から楽しみ噛み締めた。試合を終えて、感情が溢れていた。

日本を背負う責任を全うする姿よりも、楽しんでいる姿の方が心を動かすし、成績というファクトがファンを作る時代ではない。

この仮説は再び、いま原体験をもって沸騰した。タイトルやメダルは努力の成果として讃えられるべきもの。それとは別軸で、見る人の心を動かすのは、どんな姿を、どんな生き様を見せたか。それこそがこの時代の求心力なのではないだろうか。少なくとも自分にとってはそうだ。

サッカー日本女子代表なでしこジャパンは、昨年のW杯王者スペインとの初戦に敗れ、第二戦ブラジルに先制され絶体絶命の後半ATに逆転し日本中を沸かせ、世界中をひっくり返した。彼女たちが爆発させた笑顔と涙が、大きな感動を与えた。

試合を動かしたキャプテンとルーキーは、どんなに劣勢でも胆力をもって形勢を逆転できるし、どんなに若くてもゲームチェンジャーになれると示してくれた。

今大会も、良いところであと一歩届かず敗退する日本選手をいくつも見た。期待に応えられず申し訳ないと謝るパターンが多い。競技としての歴史や、ファン、ステークホルダーの期待と傍観者の誹謗中傷が、アスリートを追い詰めてはいけない。

誰もが将来への希望も持てず不確実で不安すぎるこの時代に、これ以上ない大舞台で国を代表して挑戦し、成功も失敗も受け入れ、自身が人生を賭けて信じてきた競技を心から楽しむトップアスリートの姿こそが、今この世の中に光を与える尊い存在なのだと噛み締めた。そんな大会になった。

パリオリンピックはまだ終わっていないが、すべての日本代表選手にありがとうと伝えたい。

いつもありがとうございます。支援いただいたサポートは、女子サッカーの文化創造活動に活用させていただきます!