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両想いなのに「好き」を伝えられないまま

中学生時代、大好きだった先輩がいた。
その先輩は小学生の頃は悪ガキで生意気な少年であんなやつ大嫌い。って思っていた男子。
中学一年生になった私は久しぶりに会った大人びた先輩に驚きだった。
やっぱり、少し不良系のやんちゃグループの一人であり授業を受けずに遊んでる印象が強くよく目立っていた。
一年生は三階の教室。三年生は一階の教室だったので三階からあこがれの先輩を眺める休み時間というのは同級生女子のお楽しみの時間であった。
国語の授業中、窓際の後ろから二番目の席に座る私。
二階の美術室の廊下に座って遊んでいる先輩を発見。
向こうもこちらを見て手を振っている。
私は教科書をたてて先生にばれないように手を振った。
すると、向こうは何度も手を振ってきた。
気になりすぎて授業どころではなかった。

部活中も、時々体育館に来ては視線を感じる場面が多くなる。
もう、こうなると気になるから好きに変わってるようなそんなドキドキ感だった。

ある日の土曜日、部活後に不良グループの仲間の先輩が私に近づいてきた。
「怖い」と思ったが、「ごめん、ちょっと野球部の部室に来てくれない?」と言われた。
友人と帰ろうとしていた時だったが、とりあえず一人で野球部の部室へむかう。怖くて体が震えていた。襲われたらどうしよう。逃げたい。

暗い部室の中にあの先輩が一人待っていた。

「突然ごめんね。びっくりした?」
「はい」
少し沈黙があった後、
「前からかわいいなぁと思っていたんだ。付き合ってくれない?」と言われる。
「え??」心臓がバクバクする。
突然の告白に頭はパニック。
動揺している私に先輩は「返事は今じゃなくていいから。もしよかったらメアド交換しない?」って。
私はアドレスを交換した。
それから先輩と時頼メールをすることがあり、私の恋が始まった。
不良系の怖そうな印象と違い、メールはたくさん絵文字がついて優しくてかわいい内容だった。
その先輩は私のバレー部の先輩と付き合っていたのも知っていたので、先輩の告白に対しては返事はしないまま。でも時々夜に会いにきてくれたりしたので話をしたりはしていた。

人前では両想いということはかくしてこそこそ会ったりメールをするだけで充分楽しかったのだが、私が時々あっていることがバレー部の先輩に漏れたらしく呼び出しをくらった。
「あんた、〇〇と付き合ってんの?」
「いえ・・・付き合ってないです。」
「しらばっくれてんじゃねぇよ。夜会ったりして遊んでんだろ。」
それからしばらく私はバレー部の先輩に無視され続けた。
そのことから私は先輩と距離を置くことにした。
すると先輩が気が付いて「ごめん。嫌な思いさせて。もうあいつとは別れたから関係ないと思っていたけど、向こうはまだ別れたこと納得いってないみたいだった。」とのこと。
「私は大丈夫です。今まで本当に楽しかったし、ありがとうございました。私は部活も頑張りたいし、このまま先輩と遊んだりしてたらきっと部活に行けなくなってしまうかもしれないから。」と伝えた。

しばらく連絡をすることも無くなってでもまだ先輩のことは気になって過ごしていた。

卒業式の時、先輩は第二ボタンを私にくれた。
先輩の学ランのボタンはすべてなくなっていた。
写真を撮ろうよ。と言われツーショットをたくさん撮った。
「最後だから。」って隣で肩を組まれたときにふわっと香る香水のさわやかな匂い。忘れられない。
卒業した先輩がバイクに乗って会いに来てくれた時があった。
すごくうれしくて私はまだ好きなんだなぁと思った。
バイクの後ろに乗せてもらい、先輩の腰に手をまわしてぎゅっと先輩に抱き着いた。風をきって走りながら私の心臓の音が伝わってないかな。とドキドキだった。

でも、ある日突然
先輩から連絡があって「1つ下の後輩がお前のこと好きって言ってるから付き合ってあげて」と言われた。
うそでしょ?と思ってなんか泣けた。
私はずっと先輩が忘れられなかったのに、先輩はもう私のこと思ってくれてないんだぁ。って悲しくなった。
結局その話も断って先輩と連絡をとることはなくなった。

先輩の話題は色んな人から聞いていて、夜間制の高校へ行ったとか、バレーボールのサークルに入ってるとか、車の免許をとったとか、消防士になるために学校に行き訓練を受けているとかそんな話を聞いた。
先輩、頑張ってるんだ。夢見つかったんだ。ってなんか嬉しかった。
連絡もとれないけど、ずっと好きな気持ちは変わらなかったし応援していた。
先輩が消防士として働く姿がいつか見れるのかなぁ。なんて想像していた頃
突然の知らせ。


「○○先輩が事故にあって亡くなった。」と知人から知らされる。

え??どういうこと?頭が真っ白になった。
聞くと、夜間のバレーボールの練習に行っていた先輩はトンネル前で対向車とぶつかって即死だったとのこと。シートベルトをつけてなかったとか。
嘘だと信じたい。でも、嘘じゃなかった。
現実を受け止められず、葬式には参加できなかった。
あれから、もう何年たったのだろう。事故現場を通るたびに私の心は痛む。
私は先輩に「好き」ということを伝えられないままだった。

今先輩と話せるならあの時両想いだったころの懐かしい話なんかをして
お酒を飲みたい。
好きという気持ちの行き違い、空白だったあの時間のパズルのピースをひとつひとつ合わせていくように。。。





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