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偶然の力を使ってアートを作るのはインチキか (#038)
写真学校時代。
有名どこの写真家が講義に来た。そのとき話していたのが、カメラを放り投げて(たぶんタイマーをセットしてから)、宙に浮いたり、地面に転がったりしている間に撮れた写真だって、アートだ。というようなことを言った。
うん?私は釈然としなかった。面白いアイディアに思えるけど、なんかそれって、今どきある・ブレた写真がオシャレというトレンドに乗っかってる、怠けた・インチキ作品じゃないか・・・。私は手のひらを立て腕を突き出して「NO」と言った。心の中で。
今はそうは思わない。いたって私がしたい写真の撮り方でないことに変わりはないが、そういうのも「あり」だろうなと思う。ブレた写真が全てアートとして受けいられるわけではないから。最後の仕上げにはどうしてもその人のセンスとスキルが必要だしね。
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私が高校の時、大学の映画研究会の人たちと交流があった。その時出会った、私が当時尊敬して大好きだった医大生のりえさんが言っていたことを思い出す。
「昔はね、あんな<しょうもない大人>にはなりたくないと思ったんだけどね。でもね、生きているっていうだけで、すごいことなんだって思うようになったんだよね。だから、ちゃんと生き続けている人たちのことをしょうもないとは思わなくなった」。
その言葉を今でも覚えている、ということは、そのとき私に大きなインパクトを与えたんだと思う。でも正直、その意味をちゃんと理解してはいなかった。私の中で「保留」の引き出しに入れていた大事な言葉だった。
その後ことあるごとに彼女のこの言葉を思い出す。そして、「確かにそうだな」とうなずく。
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The good die young. (善人は若死にする)という・ことわざがある。善人が生き続けていくには、あまりにも理不尽で残酷な世の中だから、きっと純粋でいい人は早く死んじゃうのかもな、と私は思った。まあ、それも一理ある。
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サリンジャー著「ライ麦畑でつかまえて」に出てくる部分。
アントリーニ先生が、17歳の主人公ホールデンに言う。「『未熟な人間の特徴は高貴に死ぬことを望むこと。対して、成熟した人間の特徴は、謙虚に生きることを望むこと』。これは詩人ではなくて、精神分析学者によって書かれた言葉だ」。
ホールデンはすごく眠い。
アントリーニ先生は続ける。
「これはね、人間の成熟度に関する洞察なんだよ。未熟な人はしばしば大義のために死ぬことに価値を見出す一方で、成熟した人は大義のために謙虚に生きることに価値を見出すんだ」。
アントリーニ先生は、この言葉を書いた紙をホールデンに手渡して、持っておくように言う。ホールデンはすごく眠い。そして彼はその後も長いことそのメモをちゃんと持っていた。
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さて、私はここで何が言いたいんだろう。
言いたいことは、私が白黒つけるべきではないこと。だから、こうやっていろんな断片を並べている。あなたに、それら断片に共通する何かを感じ取って欲しい。みつけて欲しい。
17歳のホールデンは何かにつけて「それはインチキだ」と言った。十代の私もインチキに敏感でインチキ・ポリスだった。それだとすごく生きづらい。わかるでしょう。じゃあ、この理不尽で過酷な世の中で生きていくには、生き続けていくにはどうしたらいいんだ、ってこと。それを一緒に考えたい。答えは自分で見つけるしかない。答えを出すための材料はちゃんとある。それも自分で探すこと。そして、慌てず・時間をかけること。
あ、そうそう。五味太郎の「そう言うことなんだ」と言う絵本にこう書かれている。これを最後に引用して今日は終わりましょう。
怠けるということ。
昼間からソファでゴロゴロしているのや、机の前のボーッとしているのは、ゴロゴロするとかボーッとするのをしているのですから、とくに怠けているわけではありません。たとえば、春→桜→花見、としか考えないようなこと、テレビで話題のラーメン屋に並ぶこと、まじめに学校に通うこと、上司に言われたことをそのままやること、折り合いをつけて結婚すること、などを怠けると言います。
・・・
あなたの想像力がわたしの武器。今日も読んでくれてありがとう。
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