だから春が嫌いだ

正確に言うと、東京の春が嫌いだ。

何年かヨーロッパの真ん中辺りで暮らしていた事がある。
その頃は春が待ち遠しいというのは、身を以て感じていた。
というのもその地域の冬は、とにかく寒い暗い寒い暗い暗い暗い寒い。
延々と空が暗いと、どうしても心も暗くなる。
お日さまが恋しい。春が待ち遠しい。
春に向けて断食したり仮装したり、命の芽吹きに感謝しちゃうのもよくわかる。
いざ春の気配がチラリとでもすれば、すぐTシャツ一枚で彼女を肩車してアイスを頬張っちゃうのも納得できる。

しかし、東京に関して言えば、はっきり言って冬の方が気候がいい。お正月あたりなんて最高だ。
空は青く光は柔らかく、優しい夕暮れに輝くオリオン座。
穏やか朗らか炬燵にミカン。

それに引き換え春の気配はまず「埃っぽい」から始まる。
花粉に黄砂にpm2.5。曇りも続くし風は強いし、三寒四温で落ち着かない。

ぜんぜんよくない。冬の方がずっといい。

そしてなにより嫌なのは、
それにも関わらず「春とは待ち焦がれる、嬉しいものの代名詞」とされていることだ。
「春になったらいい事がある」と思う事を押し付けられている感じ。
ああ、やだやだ。

春いやだ。
春なんて嫌いだ。
ぜんぶ春のせいだ。
だから春が嫌いだ。

さて一通り書いたらスッキリしたので、オレンジリップを買いに行こう。
春だし。

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