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リモートワーク最大の敵「疑心暗鬼」を防ぐ3つのコツ

フルリモートの会社の人気が高いと聞く。コロナ禍でリモートワークを経験し、メリットを感じた人が多かったのだろう。
リモートワークのメリットとして思い浮かぶのが、時間に余裕ができること。通勤にかかっていた時間を、家事や勉強、家族の時間などに使えるようになった人もいるのではないだろうか。

特にワーキングマザーにとって、仕事の合間にちょっとした家事ができるというのは大きなメリットだ。洗濯物を取り込む、炊飯器のスイッチを押すなど、たとえ1、2分でできることでも、これができるのとできないのとでは大きく違ってくる。

実際、フルリモートで9年働いてきた私の実感として、子どもとの生活を優先しながら十分な時間働けるリモートワークは、価値の高い選択肢だと感じている。
(私がフルリモートで働くことになった経緯は、こちらのnote「境目を曖昧にして最大化する」参照)

リモートワークの最大の敵は「疑心暗鬼」

もちろんリモートワークはいいことばかりではない。

上司や同僚が、今何をしているのかが見えない。
見えないから怒っているのか、喜んでいるのかわからない。
自分がしていることも、誰からも見られない。

リモートワークの、お互いに「見えない」「見られない」という状況は、結果的にコミュニケーションのハードルを上げてしまうという副作用がある。

「もしかしてサボってると思われてる?」
「もしかして怒ってる?」
「こんなに忙しいのに、なんでまた仕事を振ってくるの?」
「◯◯ってお願いしたのに、やってくれない!」

リモートワークの最大のデメリットは、これらの「相手の姿が見えない」ことによって生じる「疑心暗鬼」だ。
仕事の目的を見失わず、この「疑心暗鬼」をどうセルフマネジメントできるか。
自分の心の中だけでなく、相手の心の中にも必ず存在する「疑心暗鬼」をできるだけ呼び起こさないコミュニケーションができるかどうか。
これがリモートワークがうまくいくかどうかの分かれ道だと感じている。

そこで、長年フルリモートで働いている私の経験から、「疑心暗鬼」をできるだけ呼び起こさないコミュニケーションのコツを3つ、お伝えしたい。

①言葉どおりに受け取る

リモートワークは、テキストコミュニケーションがメイン。このときに、空気を読みすぎると「疑心暗鬼」が発動してしまう。
たとえば、先週期日を指定せずに頼まれた仕事があって、突然「あれって明日までにできます?」というメッセージが届いたとする。

そこで、「え?  もしかして遅いと思われてる!?」と疑心暗鬼が発動すると、「そもそも締め切りって決まっていなかったですよね?」と思わず相手を攻撃するメッセージを送ってしまう。

すると、相手も「聞いたことを責められた」と感じ、「え? なんでそんなこと言われないといけないの?」とコミュニケーションがこじれていってしまう。

実際に相手は「遅い」と思っているかもしれないし、思っていないかもしれない。いずれにしても、今できることは「明日までにできるかどうか」の返事だ。
たとえばそこで、「明日はちょっと厳しいんですが、あさっての午前中までだったらできます。それで間に合いますか?」という返事ができれば、コミュニケーションは問題なく続いていくだろう。
テキストコミュニケーションは、とにかく「言葉どおり受け取る」ことが大切だ。書かれていないことまで憶測で意味づけしないこと。
疑心暗鬼をちょっとわきに置いておいて、書いてあることをもう1回読み直す。心を落ち着けて「事実として何が書いてあるか」を確認する。
これを訓練しておくだけで、疑心暗鬼の発動回数はだいぶ減ってくるはずだ。
詳しくは、こちらのnote「『文字通りに受け取る』訓練のススメ」にも書いたのでぜひ。

②適度に自己開示する

リモートワークでは、自分から相手が見えていないのと同様に、当然ながら相手からも自分は見えていない。

「こんなに忙しいのに!」
「こんなに難しいことをやっているのに!」
「さすがに疲労困憊……もう無理……」

そんな状況も、言わなければ絶対にわかってもらえない。
上司や同僚に「察して」もらうのが日常だったり、「察してほしい」「察するべきだ」と考えている人は多い。しかし、リモートワークの場合、「察して」は一切捨てるべし。
キレるまでため込むのではなく、業務の連携に必要な情報としてメンバーにシェアする。アピールではなく、情報として伝える。すると、お互いの状況が見えるようになり、業務が円滑に進んでいく。
ブラインドサッカーというスポーツをご存知だろうか。パラリンピック競技の1つで、目隠しして行うサッカーのこと。リモートワークは、いわばブラインドサッカーのような状況だ。

目隠し状態でメンバー全員が無言でプレイしていたら、ゲームは成立しない。家庭の状況にしろ、自分の身体や心の状態にしろ、連携のために必要な情報は適度に自己開示し、共有したほうがチームプレーはうまくいく。

職場で体調不良をやたらとアピールする人をうとましく思った経験がある人もいるだろう。もちろん必要以上にアピールする必要はないが、まったく言わないほうがいいかというと、そうでもない。

「子どもが風邪気味なので、今週どこかで病院に行くかもしれません。◯◯の件、急ぎで進めておきます」

そう伝えておけば、「◯◯の件を急いでいるんだな」とチームメンバーに知ってもらうことができる。

パスが受け取れる状態なのか、それともちょうど転んだタイミングで無理なのか。今の自分の状況をきちんと言葉にして伝えることは、チームプレーを円滑に行ううえで大切だ。

自己開示の習慣がない職場で急にそれを実行すると、「え、そんなことまで言うの?」と不穏な空気が漂うかもしれないが、そのうち「あ、このほうがやりやすいな」と周りも気づき始める。そういう空気を一人一人がつくっていくこと。

③自分の「当たり前」をわきに置く

それなりにキャリアを重ねていれば、「仕事をする人として、これはできて当たり前」と思うことが自分の中にいくつもあるはずだ。締め切りを守る、健康管理、ホウレンソウなど。
しかし、リモートワークの相手の姿が見えない状況で、「当たり前」の正義を振りかざしてコミュニケーションをスタートすると、意外なことを見落とし、誤解に誤解が重なってしまうことがある。
「締め切りを守るのは当たり前! 守らなかった人が悪い! 指導をしなければ!」という正義感をまとった状態で対話の場に立つと、相手は謝ることしかできなくなってしまう。

なぜ締め切りが守れなかったのか。相手の話を聞くことはもちろん大切だが、聞くときに自分が「当たり前」と思っていることをちょっとわきに置いておく。
相手が正しかったかどうかは置いておいて、相手から見える景色を一緒に観察してみる。そして、自分の認識との間にある溝を確認する。

締め切りがわかりにくかったのかもしれない。
確かに伝えてはいたけれど、チャットだったから流れてしまって見ていなかったのかもしれない。
この締め切りだと無理だということを、自分ではなく他の上司に言っていたのかもしれない。

問題が起きたとき、「相手に問題がある」と思ってしまうと、その問題は自分には解決できないものになってしまう。

そうではなく、「自分も問題の一部である」という捉え方をすることによって、自分に何ができたのか、これからどう改善すればいいのか、という前向きな行動につなげていくことができる。

これを発見できるのが、自分の「当たり前」をわきに置く効用だ。

心を柔軟に保ち、役に立つ行動を取り続ける

ここまでお伝えした3つのコツに共通しているのは、「心を柔軟に保つ」ということだ。

心を柔軟に保ち、適切なコミュニケーションを取り続けることができれば、見えない環境の中でも、チームメンバーの奮闘している姿、髪を振り乱している姿が見えてくる。

お互いの状況をわかったうえで業務を進めることができると、「この人と仕事をするとうまく進んでいくな」「この人とは仕事がやりやすいな」と感じ、信頼関係が自然と築かれていく。

何かをお願いすると、急にキュッと態度を固くして反論してくる人と、「あ、そうなんですね。わかりました。では、次からはそうしますね」「それはこういう事情があって、ちょっと難しいんです」と伝えてくれる人だと、どちらのほうが仕事をしやすいだろうか。

圧倒的に後者のほうが仕事しやすいはずだ。特にリモートワークだと、疑心暗鬼によって前者の反応をしがちな人が多くなってしまうこともあり、後者の人の価値がいっそう高くなる。

心を柔軟に保ち、チームにとって役に立つ行動を取り続けられる人、すなわち心理的柔軟性が高い人がいるチームは、心理的安全性が高まるということが研究でわかっている。心理的安全性があるとチャレンジしやすくなるので、チーム全体の成果も上がっていく。

そのため、心理的柔軟性のある人を増やすことが、チームとして成果を出すための鍵になってくる。

リモートワークは高地トレーニング

お気づきの方も多いと思うが、これらはすべてリアルな職場でも有効なコツである。リモートで「相手が見えない」というハンデによって、その重要性が際立っただけのこと。
スポーツ選手があえて標高が高く、低酸素、低気圧の場所で行う高地トレーニングという訓練法がある。リモートワークとは、仕事における高地トレーニングのようなものだ。

高地トレーニングで成果を出せる人は、オフラインでのオフィスワークもうまく進められるはず。
つまり、リモートワークで成果を出すためのスキルは、仕事全般に使える最強のポータブルスキルだといえる。

自由で多様な働き方が広がるこれからの社会で、このスキルはいっそう求められるだろう。一人一人がこのスキルを身につけることで、互いに気持ち良く、成果を上げる仕事ができるようになると思う。
すぐにわかりやすい効果が見られるTipsではないかもしれないが、ぜひ心がけてみてほしい。きっと何かが変わるはず。


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