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事業に資するPR組織を目指して | LayerX PRチームの変遷振り返り

こんにちは。LayerXで広報を担当している木村(akkyy_k)です。
先月からLayerXと三井物産などとのJVである三井物産デジタル・アセットマネジメントの広報も兼務しています。

さて前回「事業に資するPR」とはをテーマに、LayerXの事例を交えながら記事を書いたところ、多くの反響をいただきました。
成果をどう定義するか、多くの方が悩んでおられるということを改めて実感しました。
読んでいただいたみなさまありがとうございます。

今回は少し視点を変えて、事業に資する、経営に資する「PR組織」はどうあるべきかについて考えてみたいと思います。

※このnoteは #PRLT (Lightning Text) Advent Calendar 2022 の12/7分の記事です。

1人目PRはいつから採用すべきか

「1人目PRはいつから採用すべきか」組織に応じて解が異なりうるテーマです。
一義的には、プロダクトローンチあるいは、PMF(プロダクトマーケットフィット)が見えてきた時期など、広く認知を得たいものが出てきたタイミングでしょうか。

この点、カミナシ社の広報/PR 宮地さんはpodcastで、伝えるべきマーケットが広く、サービスの新規性がありコミュニケーションコストが高い場合、1人目採用は早ければ早いほどいいとお話しされていました。

逆に言えば、広く認知を得ることが会社にとって必要でないなら、PRの採用を急ぐ理由はありません。
多くのPRに関するノウハウ本、動画、ブログ等がありますが、いずれも「PRすること、広く認知を得ることは善である」という仮定が前提条件になっている点は意識したいところです。

加えて考慮すべきことがあるとすると、すでに組織の中にいるメンバーのスキルセットおよびリソースに照らして、PRに何を期待するかです。
「企業ステージ別に求められる広報活動」としてよく用いられる真鍋順子さんの図でも

「1. 広報活動着手:ビジョン、ミッション策定、VC等外部への存在アピール」
「2. 事業広報開始」
「3. 採用広報開始」
「4. 社内・危機管理広報開始 」
「5. IR開始」
「6. リブランディング」...

出典:「スタートアップ・ベンチャー企業を成功に導く広報戦略」

と続いていきます。
前回もご紹介したALL SATR SAAS BLOGの記事でも言及されているので図をご覧になりたい方はそちらをご参照ください。

こうして見ると、PRの担当領域の広がりもあり、PR機能は創業まもない頃から必要になることがわかります。
何から始めるか、は会社に応じて異なりますし、PRのキャリアを歩んできた人であっても全てのスキル、経験を持ち合わせた人材は限られるので、副業や専業の代理店など外部リソースの活用も踏まえて判断することになります。

なお、1人目としてジョインする側としては、スタートアップ故、まだ事業モデルが定まりきっておらず、時には経営方針、ビジネスモデル、プロダクト、体制など大きく変更(ピボット)が生じることもあるということは頭の片隅にとどめておきたいところです。 

LayerXの事例-1人目採用編-

ではLayerXでの実例を見ていきます。

ミッション、バリューの制定

LayerXは2018年8月にグノシー社の一部門として設立され、その後2019年に経営陣によりMBOしています。

ミッションは会社設立と同時に社内で制定。
2019年の夏頃から初代PR担当は業務委託で関わっています。
当時は今の主力事業(法人支出管理サービス「バクラク」)とは全く異なる事業(ブロックチェーンコンサル)を手がけており、上の図からも、その1案件目が間も無く開始されるというタイミングだったことがわかります。

2020年3月に現在のミッション「すべての経済活動を、デジタル化する」に再定義していますが、この時はPARK社のお力を借りています。
再定義の裏側については、代表の福島さんがこちらにまとめていますので詳しく知りたい方はご覧ください。

広報担当役員の就任、1人目PRの採用、資金調達PR

そして2020年5月に人事・広報を管掌する執行役員として石黒さんが入社。

この時同じタイミングで、1人目PRとして私も入社し、最初の仕事として資金調達のPRを担いました。

事業ピボット、半年超の事業探索期間へ突入

しかし、私が入社した約1ヶ月後に事業のピボットが決定、採用活動の停止に加え、基本的には広報活動も休眠状態になりました。
この「探索期間」については日経産業新聞様にて詳しくご取材いただいております。

この間人事・広報管掌で入社した石黒さんは、営業アポイントの獲得やお客様ヒアリングに従事されていました。
同じく広報担当で入社した私はというと、コーポレートへ異動し(PRと兼務の状態ではありましたが稼働としては1割くらいでした)、経理、労務、総務といったあたりの仕事をまるっと担当していました。

 PRがやる仕事は全てPRである

当時を振り返ると、会社側もよく全く経験がない自分をアサインしたなと思いますし、私も決算や給与計算など一定の専門性が求められ、かつミスが許されない業務をよく引き受けたなとも思います。
とはいえ、PRの目的も結局のところは「事業の成功にある」と私は考えるので、自分にできることは言わずもがな、必要なことであれば今はできなくとも可能な限りチャレンジしたいと思っています。

また、PRを職種として捉える場合、どれだけ多様性を内在できるかが重要だと考えています。その意味では他職種にどっぷり浸かることで、その職種ならではの物の見方を少なからず体得できる点はPRの仕事をやっていく上でも利点になります。
結果論にはなりますが、半年超の事業探索フェーズを経て経理ドメインのプロダクトを提供することになったので、事業理解は非常にスムーズでしたし、お客様のニーズ、ペインも非常にリアルに感じられました。
PRがやる仕事は全てPRなんだ、くらいの気概でいるといいのかもしれません。

PRチームはいつから組織化すべきか

続いて、PRチームをいつ組織化するかについてです。
この点も経営陣あるいは、事業部との施策拡大の納得感を得た上で、早ければ早いほどいいように思います。

前回の記事で、各施策についてプロダクト部門、事業部門、あるいは経営陣とアラインをとり、なぜやるのかの認識を合わせておくことの重要性について書きました。結局のところ組織についても同じことがいえそうです。

LayerXについていえば、広報担当の役員がいたことで、経営との認識が合わせやすかった点はあるように思います。逆に広報/PR担当が1人で、レポートラインは社長というようなケースでは定期的に直接話す機会を得ると同時に、経営会議の議事録や、プロダクトサイド、営業サイドのmtgにも顔を出すなどのキャッチアップがより一層求められそうです。

PRを組織化することの良さとは

組織化することの良さは端的にはできることの広がりにあります。

先般話題になった東洋経済の「氾濫するPR」でも書かれていましたが、以前と異なりPRの手段は本当に多様化しています。

テレビCMやニュースが、日本株式会社にとっての圧倒的掲示板だった時代は終わりを告げ、社会から広く認知を得、さらに信頼を積み上げていくのはますます難しい時代になってきています。
デザイナー、編集者、ライター、カメラ/動画撮影などのスキルや、複雑性を増す現代において特定の事業領域、技術に精通したメンバーなどが力を合わせねばなりません。

加えて先にも書いた多様性をチーム内に内在することができる点も利点です。いわゆるDE&Iが求められる背景と同じような話です。

少し極端な例ですが、最近読んだFinancialTimesのジャーナリストで文化人類学者でもある方が執筆された書籍の中で、特定の人々(本の中では陰謀論者を例に挙げていました)はプロが作った洗練された「見栄えの良い」ウェブサイトの情報は信用せず、逆に野暮ったいものしか信用しないというエピソードが紹介されていまいた。

ジェンダーや年齢といったわかりやすい区分だけでなく、すぐ隣にいる人であっても、他人の常識、思考の癖を理解するのは容易なことではないということだと思います。

また、一個人としては自身の長所、短所のメタ認知につながります。
この点はLayerXに入社しチーム化していく過程で明確に感じた利点なのですが、同じ職種であってもどんな経験をしてきたかで、思っていた以上に自身のスキルが他者と異なるということは起こり得ます。
その気付きを得られただけでも、今後のキャリア形成にとてもプラスになったように感じています。

 LayerXの事例-PRチームの組織化編-

では組織化についてもLayerXの過程を見ていきます。

プロダクトローンチを経てPR専任がいよいよ入社

ピボット後、2021年1月にリリースした請求書受領SaaS「バクラク請求書」は、プロダクト改善、機能開発を何度も重ね、さらにはBizDev、マーケティングやセールスメンバーの地道な積み重ねを経て、少しすずつ導入いただく先が増えていきます。

1年後にはプロダクト数も3つに増えており、このタイミングで(2022年1月)PR専任として@kiyoheroが入社されます。
(石黒さんと私はそれぞれ、人事、コーポレートの兼務のまま)

入社2ヶ月後に書かれたnote↓

業容拡大に合わせ外部パートナーも活用

LayerX PR体制の変遷

グループ会社で金融事業を展開する三井物産デジタル・アセットマネジメントが各種ライセンスを取得し、本格始動。
さらに、第三の事業としてPrivactyTech事業も立ち上がり、、と複数事業経営が本格化していきます。
私が入社した際には30名たらずだった社員数も気がつけば100名超になっていました。

こうした中で、PRパートナー(kakelu社 )の活用や、業務委託の形で、編集・ライティングなどのプロに新たに協力いただいたり、内部異動でPRチーム専任のデザイナーが加わったりと、チーム体制は強化を重ねています。

10月から業務委託としてチームに加わっていただいた@krkbunのnote↓

デザイナーとして入社された@chibakunのnote↓、11月からPRチームに

組織として経営陣とのアラインをとるために

ひとりPRの時は、社長の取材同席なども全て自分がこなすため、直接話を聞く機会がある種特権として確保されています。
ただ組織化するとそうした機会も減り、また人員が増えてくる中でミドルマネジメントが導入されたりすると、知らず知らず社長が、経営陣が遠くなってしまうということも起こり得ます。

LayerXではこうした人数が増えた今四半期から、新しい取り組みとして共同代表の二人とPRメンバー全員がマンスリーでディスカッションする機会を設けています。

まだ開始してわずかではありますが、目の前のタスクに縛られすぎず中長期の目線で、視座をあげた議論ができるのは魅力です。
また、話をする中で実は代表の二人も認識が擦りあってなかったということもあるので、その意味でも対話の機会を設けることの大切さを改めて実感しています。

最後に

前回の記事でPRは仕事ではなくスキルとする、BRIDGEの平野さんのツイートをご紹介しましたが、逆に広報を専門職として捉える動きも出てきています。

職種として考えるか、スキルとして捉えるかは人それぞれですが、PRに関連する人のキャリアはどんどん多様化し、さらに労働集約的になっていきそうです。

そんな中で一つのトレンドとして融合しつつあるHR/PR領域の知見を共有するコミュニティを@kiyohiroが運営しているので興味がある方はご覧になってみたください。

またLayerXでの広報/PRについて興味を持たれた方がいらっしゃれば是非カジュアルにお話しさせてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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