「おちゃめ」【詩】
風のよく通う部屋だった
ナーシングホームの三階 その角の部屋
住みなれぬ小さな部屋で
さいごはしんどくなかったでしょう
ずっと帰りたがっていた
お家に帰ったんでしょう
ここへ来るのが少しだけおそかった
けれどわたしはほっとしたのだ
その顔をみて
生きていたどの瞬間よりも
むしろ柔らかな顔で行く
大きかったその背中は
日に日に小さくなっていったが
そのやさしさは
時を重ねるごとに
わたしの生きかたそのものを
大きく照らしだした
ありがとう
山の深くに生まれて
海の日にいく
その