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詩です。

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自作の詩、または「詩のようなもの」をあつめました。
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記事一覧

「コメディアン」【詩】

だれも笑わなくなったこの街で わたしはコメディアンに就職します だれもいなくなった地下鉄…

「おんなじ夏」【詩】

手をひかれ 川あかりの夏 雨……のにおいが急にきて どこへ駆けだすのか そんなにあせらない…

「おちゃめ」【詩】

風のよく通う部屋だった ナーシングホームの三階 その角の部屋 住みなれぬ小さな部屋で さいご…

「記憶」【詩】

ある雨に打たれて わたしは 自分が木だったことを おもいだした ある木に触れて わたしは 自…

「うぶ」【詩】

おまえのからだに触れた刹那に 雷鳴をきいた 嘘じゃない あれからおれは狂人のように 永遠の…

「かたち」【詩】

あなたのかたちが好きです わたしは あなたのかたちにはめられて わたしのかたちをうしなって…

「選曲」【詩】(改・「冗談」)

ナーシングホームの あかるく閉ざされた部屋 高い声の人たちが去り ふいにふたりぼっちになる なんねんぶりの ふたりぼっちか かける言葉もなく また当然のことながら かけられる言葉もない 世界はふいにしんとして あなたの荒い呼吸ばかりが 小さく触れるこの耳朶に あるいは いたたまれなく白い布団に置いたこの手のひらに たしかに ほんとうに あなたから 受けつがれたものがながれている 水で口をゆすぐだけの人生は たった二週間でおしまいって ……ほんとうですか? あんなにからだのつよ

「地球にやさしく」

おーい あんた やさしくされたいんならね まずはやさしくしなきゃだめだよ そんなに暑かった…

「曲がりくねった」

おまえのからだをじっとみてると ひとつとしてまっすぐな線のないのに気づく あらゆる曲がった…

読むこと/詠むこと

それはよく晴れた夏の午後だった ある中学生がわたしにたずねた 「読むこと」と 「詠むこと」…

「すばらしい世界」【詩】

たとえば 四角い箱の中で 誰かの暮らしがめちゃめちゃになっていくのを 笑ってみている私たち…

「咀嚼」【詩】

あなた、いがいと 時間をかけてあじわうんですね いかがです? この世界の味わいは ……けっこ…

「あとしまつ」【詩】

台所に 腐りかけた 愛がある 道端で とぐろをまいた 愛がある にらみをきかせた 愛がある な…

「たかしちゃん」【詩】

むかし、 たかしちゃんという友だちがいた たかしちゃんのうちはびんぼうだった たかしちゃんはノートを一冊しかもっていなかった あるとき、親切心をおこしたぼくは ノートを貸すよ、といった たかしちゃんはそれを断った ぼくはむきになって それならあげる、といった すると たかしちゃんはぼくを無視した ぼくはそれ以来、 たかしちゃんのことがきらいになった ぼくの貸せなかったノートは ぼくの算数のノートとして すぐにその役割をおえた ーーその年の冬、 たかしちゃんはあっけなく死んで