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すべて理解できる窮屈さとあまりわからない自由とかいって、スペイン語の恥ずかしい間違いをお披露目する

日本では記録的な暑さの夏だそうで、そんな日本に一時帰国して南半球に帰ってきたら、普通の冬でもしっかり寒い。 いや、一時帰国する前よりもしかしたらあったかいくらいなんだけど、体温調節機能がバグっちゃってて、あまりの寒さに、足の爪先を反対の膝の裏に挟むという嘘のヨガみたいな体勢で寝たりした。

さて、数年ぶりの日本では、どこもかしこも超スムーズ、安い美味しい、隅々に工夫が行き届いている、国そのものがコンビニみたいな環境で、知ってたつもりでもやっぱりびっくりしっぱなしだったのだけど、それと同時に24時間360℃の音が聞き取れ、目に入る文字が100パーセント理解できるという状況に驚いた。あれ、なんか能力が高まったのか?と錯覚するほどのインフォメーション吸収力。電車のアナウンス、街の宣伝、エスカレーターの広告、すべてがすべてがすべてがわかる、私!その上たった3分の山手線の駅と駅の間でもしっかり集中して本も読めちゃう。スペイン語のニュースを言ったり来たりして読むのとは大違いの速読。

ところが、そんな情報漬け生活で、かなり脳みそが疲れてしまった。普段、いかに人の話を理解できなくて脳みそを使っていないか(もちろん理解しようと頑張って疲れることもあるんだけど)がわかったし、実際に日本が物理的に文字の多い環境なんだと再認識した。逆に意識してフィルターを作らないと脳みそがオーバーヒートしちゃうと思った。

さてさて、戻ってきてヨガ寝数日、体も痛いし、これはもっと暖かくしなきゃいけないんだと気がついて布団を買うことにした。

冬もたけなわどころか、何周もしているのに、なんだろう、そういうときの、人生の大切な決断みたいに、急にふと一歩踏み出すのって。

チェーンの寝具屋さんがあって、枕からシーツから枕元に置く芳香剤まで揃えられる。しかし寝具システムが日本と違う。

日本だと、ベッドに寝るとしてもマットレスにシーツを敷いて、体の上には毛布と掛布団という感じだと思うけど、ホテルでやたらにシーツが多くてぎっちぎちに巻き込まれていてどこに挟まったらいいんだ??ってやつ。挟まったはいいけど案外かけるものが薄くて、夜じゅうずっとうっすら寒いやつ。枕も大中小あって、小でも硬くて高くて、全部どかしたくなるようなやつ。

とはいえ、日本のようなふっくら掛布団や毛布がないわけではない。柔らかい枕も低反発枕もある。数年前に引っ越しした際に寝具屋さんであれこれ見ていたのでちょっとはわかっていた。

娘たちを従え、彼女たちがどこを見たらいいのかきょろきょろしている中、たまには母ちゃんの威厳を見せねばと店員さんに慣れた口調で話しかける。

「オラ!プルモンを探しているんだけど、どこ?」と尋ねたところ、笑顔の素敵な店員さんは大うけ。そして「ああ、プルモンね」とすぐに応じてくれたのだが、娘たちも「ははは、プルモンとプルモン!」と大爆笑。

ひとりわかっていない私は「ははは」と言いつつ頭の中では何事かと動揺。大うけ冷めやらぬ店員さんに案内された棚に着くと、そこには
「plumón(羽毛布団)」と書かれていた。
plumón は羽毛を意味するplumaから来ていて、羽毛に限らず厚めの掛布団という意味で使われる。

はて、、、何が悪かったんだろう??

プルモン、 pulumon, pulmon, pulmón。。。
私が言ったのは「pulmón(肺)」だったのだ!

だったのだ! と言うより全然意識してなさ過ぎてどっちを言ったのか、どっちに聞こえたのか、そもそもそういえば、ふたつ似ている別の言葉があったんだーと、目から羽毛。

「ははーんなるほどね、pluとpulねー」とか言いながら内心赤くなったり青くなったりして、その後に布団カバー(junda)を見るのに、フンダの発音にびびり、(jをfって言っちゃうんじゃないかって)
「えーとー、これにつける、アレ(coso)がほしいんだけど、アレはどこ?」ってひよってしまったのだった。まじでcoso便利。

布団なんて、肺みたいに空気を含むんだからpulmónでもいいじゃねーかと、日本語の「坂」と「サッカー」は同じ発音ですよねと言う日本語学習者ばりに心の中で強がってみたけど、昨晩はplumónのおかげで暖かく眠れました。肺じゃ無理でした。

LとRの聞き取りと発音は百年前から苦手な自覚があるんだけど、子音にuがついてるかどうか、ruかr、luかl、そういえばけっこうむずいなって思っていた。

たとえば、携帯電話のCELULAR。毎日のように使う言葉だし、LもRも混ざっててやっかいなんだけど、うっかりすると「CEL-LAR」になっちゃう。それでも文脈で通じるんだけど、例えるなら、ケータイを「ケタイ」って言うみたいな感じだろうか・・。

第一言語の特徴と、学んでいる言語の特徴によって、苦手なこと、わからないことがあって、何年経っても間違いは尽きない。出会ったら捕まえて、気を付けていくしかない。

でもなんだか、「私、100パーセント理解して200パーセント吸収してさらに3割増でアウトプットできます!」の日本から戻ってきて、「モレモレ60パーセント理解、カタコト60パーセント表現力でごめんなさい」の生活が気楽な気がする。

日常のコミュニケーションにいつももどかしさはあるんだけど、足りてないところで手足をバタバタさせる余地があるというか、ぽっかりと空いた雑音のない頭の中で考えられるというか。

相手は「多分この人ちゃんとわかってんのかな」とちょっぴり諦めてくれてるのかもしれないけど。
そんな間違いとか余地を大切にとっておきたいと思う。



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