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うつくしい言葉を操るのではなく、生み出すこと_「カミーユ」と「あんた」

川柳を書く人はなかなか本を出さない、
というのを川柳を書くひとに出逢ってはじめて知りました。

正直、未だに短歌と川柳でそんなに文字数ちがうかなぁ、
なんて思ってしまう初心者です。
(詩と川柳だったらたしかに、詩集の方が出しやすいよね、
と思うのですが、短歌はよく書店で本を見るのに、
川柳は見ないのはなんでなんだろう、という)

どうやら川柳の本は、
「川柳を詠んでいる方から買う」というのが多いのだとか。

私も色んな川柳を読みたい!
という話をしたところ、
zineをいっしょに作ろう!と声を掛けて下さったまりさんから、
何冊か貸していただけることになりました。
言ってみるものですね!

と、書きながら一冊は短歌の本です。
二冊とも読みながら(本を傷めないように)転がったり、
クッションに埋まったりするくらい面白かったので、
ここに書いておきたいと思った次第です。


まずは歌集から。
大森静佳さんの【カミーユ】です。

短歌を書かれる方ですが、
「絶対読んだ方がいい」と力強く貸して下さった一冊。

読み始めてすぐ、
本を閉じて深呼吸しました。

なんで川柳の本を貸してもらいたいと言っておいて短歌の本を先に読んだのか、といいますと、タイトルに親しみ?があったからです。
「カミーユ」
そう聞いて最初に思い浮かんだのは、
ガノタの夫に解説をしてもらいながら見た「機動戦士Ζガンダム」の主人公のカミーユ・ビダンだったからです。

(私はお話的には絶対Zが好きです、、、)

そんなわけで、赤い表紙のこの一冊を読み始めたのですが、
読みながら、
一首読むたびにのたうち回りたくなるくらい
「好き」
と思いました。
時実先生の最初の句集「新子」を読んだ時も(こちらも借りました。青くてとっても美しい一冊でした)一句読み進める度に壁に頭を打ち付けたくなるくらい、どんと大きな「好き」が深く抉るように胸内に振り下ろされるようでした。
それと同じような、それでいてどこか近しい距離も感じて、
夢中で読みながら、ずっと読んでいたいと思っていました。
一首がひとつのお話のようで、
一滴の血のようで、
一体の心を持ったばかりの人形のようで、
生々しい表情なのに、そこに落とす影だけは儚げさがあるような、
そんな素敵なものが延々続くのでした。
時々、自分にとっての理想的な本を思い描くけれど、
それにとても近いように思って、興奮したまま読み終えてしまいました。
正直、もっと味わって読みたかった。
読めばよかった。
本なのだから、買って何度でも読めばいいと思うけれど、
どこかで最初の一滴を特別に思ってしまっているのだと、
この本を読んで思い知りました。
というか、この本がとても特別だったんだと思わせる一冊だったのだと思いました。


そしてもう一冊、徳道かづみさんの【あんた】。

第一句集なのだと聞きました。
なんとなく、表紙を見て「もしかして年齢近いのかもしれないな」
と思ったのはなんででしょう、、、

こちら、貸していただいて、読んで、そして買いました!
まりさんがお代を渡してくださるということだったので、
お言葉に甘えました。
買う前に読んでしまって申し訳なかったです。

この表紙を見て、
タイトルを読んで、
受けた印象は「はすっぱ」でした。
あんまり言葉はいいものではないのかもしれないのですが、
私にはちょっと憧れる空気を含んだ言葉です。

女であること、
恋に、活力や、心の広がりや、世界の彩の採択を託してしまうこと、
それでも弱く見られるのなんかごめんだね、と掛けられる手をぺしゃりと叩き落とす度胸を備えたキャラクター。
そういう子が好きです。
でも、ちっとも自分では書けない人物です。

自分には女性性をつよみにはできなかった。
それを叩かれることが恐かったのもあるでしょうし、
少々嫌な目にもあってきましたし、
だからこそ、
女性の目が見ることの強みを曝け出せる句を詠むこの一冊がとても羨ましいような気持ちになりました。

目次の、
【あんた】【あなた】【あたし】
という並びを見るだけでもちょっとわくわくしました。
こういうタイトルが好きなんです。

このひとつずつの性格の誰かの句。
それを追いかけながら、
知らない【あんた】を、【あなた】を、【あたし】を、
とても身近に感じた時間を過ごしました。
だから章をまたぐとき、少し後ろ髪を引かれるような気持ちになったり。
それが積み重なって、
一冊を読み終える頃には友人と夜中に長電話をした後のような疲労感がありました。


川柳や、短歌という短詩というものは、
もしかしなくとも人生の濃淡が否が応でも滲むものなのだと、
突き付けられるように感じた二冊でした。

この2冊、お二人ともが20代の前半から30代手前までのものを中心にして納めてあるのだそう。

ああ、もっとたくさん読みたいし、詠みたい。
そう、つよくつよく思わされ、思えた2冊でした。
めっちゃかっこいいひとが沢山いるのね、と、
私の世界はまた明るくなったように思いました。


どうして詩から川柳に流れてきたのかと聞かれましたが、
短歌の長さがあるなら詩にしてしまうから、
逆に短歌は絶対書けないんです、
と言っていましたが、
いつか私も書きたい。
川柳も、もっと書きたい。

言葉はうつくしい。
それをうつくしく生み出すことは難しい。
つよくうつくしいものは更に希少だと思います。
そういうものを生みたい。
そう思う読書でした。

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