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「頬は細く」から「ほとのけ」までの解説のような

詩の解説のような、を続けていきます。

言葉は群れになって走る方が速いのです。

新しい字が顔を出し
小さな目が唄に開く
長く保たれた果ての耳に
つつがない安堵の口は上唇だけ厚く
静かに
静かな助けの御手は押し付けなく
その頬をそっと差し上げるのです

「頬は細く」

かみさま、のような、
誰かだけのマリア様のような、
縋らせてくれる存在を、
無為の中からでも導いて描けたら。
そんなことを思いながら書いた詩です。

風が来るよ
そよ風では足りないと
もがく
私の
天使を振り払うほどの
彼方よりの風が吹くよ

友の便りを会わせに
遠く深い風が
私へ
吹きこむよ

「風」

その友は、
返事を受け取れないひとなのです。
それでも慈しみはいつでも感じていられるように思っています。
そのひとの生活のどこかで私を想ってくれたひと時があったように、
手紙を折るそのときのように、
祈りを私に向けてくれたかもしれない。
その風は、
私に無慈悲でもかまわないのです。

知らないままお腹を減らした
雨に打たれるまま友達になって
砂にまかれて扉は隠れても
差すひかりの粒は抜け転び来る
あいしたあなたの抜け殻が
好きで仕方ないのは
私の悪いところではないのよ

分かれないまま空腹は続いた
腫れに涼む木々の下手は絡まった
埋もれるほどに重く重くなっても
伸ばし合う手に一片の繕いもなかった
あいのあったクモの足先を唇にはさみ
請う毒は青か赤か
月夜の躊躇いが揺らしてくるの

「ドクグモ」

ひとを好きであることは悪いことではない。
たとえ、それは生産性のない愛でも、
未来には現れない愛でも、
悪いはずがない。
ドクグモの足はきっとやわらかい。
どの毒も、きっとやさしく、確かな毒だといいと思った詩です。

永遠が通り過ぎて
穴の空いた私の素足で
あなたは素直に寝転ぶの
しずかにしていて
おしこまないで
こらえしょうのない皆の口を捻った
編み上げている水の通り路を
拾った石であけていく
包み込まれた明け方を
やましくしないで こっちに向けて
狭い道だとあなたの永遠は
くだらない安心を握りしめている

「握りしめる」

くだらなくとも、
私の足先を握りしめていてほしい。
その安心のためならば、
いくつもの道筋を曲げてしまいましょう。
それくらい必死に、
信頼を乞うている詩です。

あなたを残さず
あじわったあたしの足裏は
平らでくすぐったがり
つぶらだった瞳も
干しあがった胸も
わたしの腕の筋ほどもたなかった
喉を通さず
全ては私に課されていく
あなたという全ては
溢れ おちる 星々のように
あたしのあいた口よりずっと
大きな沼にきれいに落ちて
落ちていくのです

「星屑」

わたしが手に入れたはずのあなたの全ては、
もはや幻で、
そんな莫大なものを入れられる器には成れず、
あなたの秘されたものは目の端にも留まらずに去っていくのです、
という詩です。

あなたは無理をしすぎるのだから
階段の下
わたしたち見つめているの

素顔を嫌がるくせに
正確な星座は嫌いなの

あなたは親しいことに疲れるから
階段の下
わたしたちは視線が彷徨うふりをする

永遠の死が中身の空っぽならば
推し花への頬擦りは誰のために為されるの

あなたがやがて向く下で
階段の下で
わたしたちは願う様に目を向けている

「見つめる二階」

二階には大人しい子供のあなたがいる。
私はそれを守っていようとして閉じ込めてはいないかしら。
怖がらせていないかしら。
それはずっと分からない。
だって、
あなたはわたしと目を合わすことがないから。
という感じの詩です。

あいしていると
言い合うような
歌だった

流れてかえっては来ない愛は
風にほつれ
いつか雪に紛れるの

あいしていると
言い重ねても
同じことなの

静かにしていた方が余程
深い深い陰が呑み込んでくれたのに

「まぎれないで」

それでも言わずにいることに耐えられなかった私の詩です。

ひとしきりの拍手の肩が残るあなた
やさしく撫でてやすくとも

あなたに無機質にうつるの天の輪に
わたしはうつらないようにする

唐突を突いた潮風を落とすスポットに
あなたはえんえんと立つ白く白く溶けますように

「塩の天使」

天使の輪に私はどれほど烏滸がましく、
騒々しく、はしたなく映るだろうか。
その愛があったとしても、
けしてあなたの一部に映ってはいけないものが、
私なのです。
という詩です。

芸術家は芸術家になる
言葉は名の無いものに宿り
音楽は救われる手に転がり込む

あなたがどうであろうと
あなたがどうしようと
まるで無邪気な愛のように容赦はされない

芸術を呑むのには神と金
想像のすべてを傾けた亡骸は笑う
音の波に魂を 果てを避けてずっと運ぼうとする

あなたがどうありたくとも
あなたの手を何がとっても
すべてがひとつながりの彩のひとつの宛先

芸術家は裁かれない
かわりにいつも自然の身を削り取られていくの  

「芸術家」

絵を描く人は、絵を描き、
物語りを書く人は、物語りの手触りを忘れない。
その腕を折るわけにはいかない。
生活に根を張ったそれらは、
双子のように思いやり、
恩師のように縛り付ける。
その強さをいつまでも望んでしまうのが、
造り人なのかしら、という詩です。

洗うべき手は
定められている

月の約定に
従う彼の人よ

あなたの咲かせた
星の歌を歌ってよ

消えていく死のにおいの
口にふくまれる魂

洗ってよ
その手にふくんだ水のみで

「ほとのけ」

死の水を吐いてください。
手に受けてすぐ、飲み干しましょう。
そういう詩です。


以上、詩の解説のような、でした。

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