見出し画像

満月の詩

『満月』

満月は
わたしを引っぱる
肘のあたりでもたつく袖を
転ばないくらいに
小さな光でつまむ
満たされるほうへと


『月の姉さん』

ずっと 満月が続けばいいね
そう言うと 姉さんはよろこぶ
そんなにずっとがいいかいと

世界の瞳をうっとりとさせて
ゆるゆると 絶妙な力で引き寄せる
その光は 欲を知らないほど欲深い

ずっと姉さんの頬を見ていたいよ
やさしくそうくすぐれば
姉はたまらなそうに雲に口を埋めるのだ


『月』

月がわたしに与えるものは
情や愛に 似たものではなく
触れるには 未熟で
とりこぼしそうに細やかで 多くの線を成し
わたしにあらゆる引力をかくす

面白がって編み
あたりまえにさしだす
人が幸運と呼ぶだろう幻影を
一滴もこぼさず
この身に
わたしに 満たす


『月』

甘ったれで
臍曲がり
うつくしく 感じやすい

ひかりはその姿ではない
そこに隠れ溢れ出す
その引力こそが
あなただ


『月の瞳』

月の瞳を見た
開け

声は訳す
ひかりに閉じた闇が触れる
満たされた器の中身が響き合う

ひらけ

その音が
どこまでも
反響して
おりていく

ずっと深く
ずっと深く

満月の底と
通じる
太古の澱をかすか乱す

月の瞳を見た
私よ
ことばは それひとつで
細胞をはじく



うつくしい月夜ですね。
たくさん詩を書いたので、
この月夜に置いていこうと思います。



この記事が参加している募集

#スキしてみて

527,899件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?