日本人カウンセラーにはわかってもらえない? - 14歳で反抗期を終えた息子とオカンの物語(4)
わたしが息子のお父さん、旦那を追い出すことで、一番気をつけたのは息子のことです。
旦那を追い出したいのはわたし。
わたしにとってはいい旦那ではなかったし、息子にとっても良い旦那には見えなかったけれど、息子にとっては唯一のお父さんだから、愛情はあります。
当たり前ですよね?
確かに実家に週半分は泊まってきているし、あなたの力が必要だから絶対に帰ってきてね! という時はほとんど帰ってこなかったし、正直「いらねー」と思うことの方が多かったんです。
小さなアパートに彼がいると空間が狭めまれていやだったし?
なので追い出すことには抵抗がなかった……とは言い切れはしない。
だって1度は好きになった人ですもの。
そんな簡単に割り切れません。
が、堪忍袋の緒が切れまして、どうにか追い出したわけですが……
今までいた人が、居なくなる。
その虚無感を埋めるのは大人でも難しいのに、4歳の息子はどう感じるんだろう?
彼の「心はどうなる?」
それが気になって気になって、なかなか離婚に踏み切れませんでした。
でも踏み切れたのは、2010年の夏に帰国したときに占い師さんに「ああ、息子くんは女性みたいなところがあって、お母さんを助けてくれるから大丈夫」と言われ、やっぱりそうか! とその言葉を信じて別居に踏み切ったのです。
2010年当時のニューヨーク州の法律だと、最低3年別居をしないと離婚できないという法律でして……性格の不一致じゃ離婚できないってなんなのよねえ。相手に浮気されてもダメとかね、日本人としては意味不明なこと多々ありですわ。
❖ ❖ ❖
今でも思い出すのが、旦那を追い出した日。
彼がどんなことを言ったのかは覚えていないけれど(罵倒されたのだけは覚えている。なんで子供の前で言うんだ、と怒りがこみ上げたのも、覚えている)、彼が出て行った後に息子に
「今日、お父さんは出て行きました。もう戻ってきません。今日からお母さんと二人っきりの生活になります」
と、ひざまずいてベッドルームで立っている息子の両腕をつかんで言ったのでした。
「うん、お母さん、大丈夫だよ、ぼく」
とにっこり笑って言った息子。
その顔をみて、初めて息子の目の前で声を上げて泣いてしまいました。
ごめんね
ごめんね
ごめんね
お母さんはお父さんと一緒に、あなたと3人で一緒に過ごせる道を探したんだよ。だけど無理だったよ。
「お母さんと2人でニコニコな毎日を過ごそうね」
どんなことがあっても、お母さんはあなたのことを守るよ。
そう誓ったのでした。
とはいえ、実際問題働くと彼の世話をしてくれる人を探さないといけない。
今までは旦那がやっていたことを「誰か」に頼まないといけないし、当たり前だけど、その分お金がかかる。
いったいどんな人が息子に合うんだろう。
あまり高いお金が払えないけど、学生さんがいいのかな、経験があり過ぎる人に「子供っているのは」とカテゴライズされるのも困るし。
うーん、うーん。
いや、その前に、息子は本当に今の状況……お父さんが本当に帰ってこないこと、分かっている???
*
幼稚園お受験しかり、この頃のわたしは本当にいろんなことを「考えすぎていた」と思っています。
いや、勝手に恐怖心でいっぱいだったとも言えます。
・シングルマザーになって、どうやってニューヨークで生活していくの?
・ハーレムの公立学校なんかに入れたら、彼の将来はどうなるの?
・黒人とのミックスだから、将来的に「黒人」とカテゴライズされるけれど、路上で殺されたらどうするの?(ハーレムで育てる不安はこちらに書いたのでどうぞ)
もう見えない敵を勝手に作って、勝手に怯えていて。
だってシングルマザーになる計画なんてなかったんだもん!
アメリカに、ニューヨークに住む計画なんてなかったんだもん!
とにかく息子はお父さんが出て行って絶対に傷ついているはずだから、先ず彼を傷つけない人をベビーシッターにすること。これだけは譲れない。
だけど、どうしたら傷つかないのかを知っておかねばならない。
そうだ! 傷ついた時の対処法などを児童心理に詳しい人とお話をしてみよう。
そう考えたのでした。
*
当時は息子を『どうやってバイリンガルに育てるのか』ということも頭の中いっぱいだったので、ニューヨーク市から発行されている日本語の無料情報誌に「現地校でついていけなかったらどうするのか」「幼児教育はここに気をつけて」的な記事(コラム)を貪るように読んでいた時で、そこから児童心理に詳しい方(サイコロジスト)とお話しすることことに決めたのでした。
その方はニューヨーク市郊外にオフィスがあったので、息子を連れて行き、息子が他の方に見てもらっている間に、サイコロジストの方とお話しをさせてもらいました。
きっとね、あたしの頭の中もパニックだったのかもしれないけれど、とにかく自分と息子の状況を「できるだけ」「わかりやすく」伝えることに集中したのです。
だけど哀しいかな。
わたしが伝えたことは100%わかってもらえなかったと思います。
と同時に、息子がお人形遊びをしていて「あなたの息子くんがね、死ね! 死ね! と言いながら他のお人形を叩くのは気になるわ」とぼそっと言ったのが、今も鮮明に覚えています。
ええ、その言葉に傷つきましたよ、あたしゃ。
2回のセッションということで約束していたのですが、2回目は息子抜きで会いました。
2回のセッションをしてわかったことは……お金の無駄だった、ということ。
いくら払ったのか正直覚えていないけれど、300ドル近く払ったような気がします。
わたしがお会いした方は児童心理に詳しい方だったはずなのに、わたしの状況、つまり、黒人コミュニティー生きている人がどういう状況であるのか、ということがわかっていないから、彼女が何を言っても響いてこないんです。偽善にしか聞こえない。
ってねえ、黒人コミュニティーの当たり前なこと
・親戚一同(家族も含む)に刑務所に入っている人がいる場合が多い。
・高校を卒業していない人達が多い。
・大学に行っている人が家族、親戚一同の中にいたらすごいこと。
・常に社会保障を受けている(フードスタンプとかウェルフェアとか)
などなど(あくまでも一部です。わたしの体験上のお話です)。
をわかってくれよ、と言われても困るよねえ。そんな人とはお付き合いしないだろうから。
それでも気を取り直して、きっと分かってくれる人がいるはず、いや、見つけないとこれからの息子が大変なことになる!
そう思って、また新たに児童心理に詳しい方を見つけました。
今度はニューヨーク市内にいらっしゃいました。
*
結果は同じでした。
わたしは与えられた1時間で自分の状況を話すのですが、まず黒人コミュニティーのメンタリティーから説明しないといけません。
だって
「え? どうしてお父さんは息子さんと会いたくないの? 普通、会いたいですよね? 愛しているのなら」
「仕事をしないってどういうことですか? 普通しますよね?」
がデフォルトの日本人カウンセラーさんに、
黒人男子の多くは、ママがなんでもやってくれると思って育っているから(ママが甘やかしてしまい過ぎな傾向がある)、離婚/別居した場合は「俺は関係ない」立場になる人が多いんですよ。
と言ってもが理解できません。
そこから説明しないと、わたしの不安は伝わらないし、だけどこの説明をしているだけで面接時間が終了。肝心の息子のことが相談できなかったんですよね。
二人の方とお話させていただきましたが「卓上や本で学んだことなんて、ネットでも調べたら出てくることだから、高いお金を払ってまで聞くことじゃなかった」というのが本音です。
と同時に、やっぱり黒人コミュニティーで生活していると、ほとんどの日本人には理解してもらえないんだなーとつくづく痛感。
例えば伴侶とか、本当に仲良しな人が黒人だったり、つまり、黒人コミュニティーに入っていかざるを得ない状況じゃない限り「わからない世界」なんだなーということを高いお金を払って確認した、というだけでした。
別に無理に分かる必要はないけれどね。
ただ、この体験があってから日本人カウンセラーやセラピストに会うの、考えてしまいますよね。かといって英語で自分の気持ちを明確に伝えられるとは思っていないから、ジレンマですわ。
だって、やっぱり母国語の方が伝えやすいじゃないですか!
というのも、息子の関係でスクールカウンセラーとかと話さなきゃいけなかったりして、なかなか上手く伝えられなくてジリジリした経験があるからです。
この件についてはまた後日お伝えします。
ということで、結局息子の心理がどうなるのか、という疑問に関してはサイコロジストに会ったけれど、わたしの期待する結果がでなかったというお話でした。
2006年生まれのアメリカ人とのハーフの男の子のいるシングルマザーです。日々限界突破でNY生活中。息子の反抗期が終わって新しいことを息子と考えています。