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第18回ショパン国際ピアノコンクール:7/18予備予選出場者(一部)について

 予備予選も7日目で折り返し地点を過ぎた。ほぼ毎日3時ごろまでリアルタイムで予備予選を見てしまう寝不足の状態が続いているが、ショパン好きとしてはこの上ない喜びを一人噛みしめている。昨日はしばしショパンを離れ、吉見友貴さんと阪田知樹さんのコンサート(何れも贅沢なプログラムでホールでの渾身の生演奏を大いに堪能した;別途感想を残したい)に行ったため、昨日のMorning Sessionはアーカイブで視聴した(ヘッダーはConcert Hall of National Philharmonic in Warsaw by Bartek Sadowski、出典:Wikimedia Commons)
【7/17 Morning Sessionの感想】
 Ning Yuen Liの舟歌と練習曲Op.25-11「木枯し」は圧巻の演奏で印象に残った。若い3人衆、Xianxuan Li、Xinjie Li、Hao Wei Linの練習曲Op.10-1の4オクターブ以上の右手の滑らかなアルペジオにうっとりし、短い曲だが壮大な演奏に釘付けになった(手を上から移すカメラワークに改めて感謝)。XinjieとHao Weiは若干16歳(2人とも間もなく17歳)。ショパンが20-22歳に作曲した練習曲Op.10(因みにリストに献呈されている)をそれより若い16歳が真摯に弾く姿にも感動した。Hao WeiのノクターンOp.27-2とバラード第3番Op.47は、14歳のノクターンの演奏同様に心に沁みてくる音色に聞き惚れた。この若さでこんな情感豊かに演奏できることに、ただただ感嘆する。予備予選前から注目していたBruce (Xiaoyu)のショパンは初めて聞くことになったが、特にバラード第3番Op.47は主題の聞かせ方が俊逸で、最後まで聴き入った。
【7/17 Evening Sessionの感想】
 Vitaly Starikovの演奏はノクターンからバラードに至るまで、彼が創り出す音響の世界に引き込まれて聴き入った。ノクターンOp.48-1は静かにゆっくり始まり、ドラマティックな展開になっても、感情をうまく制御していて、何というかストイックな印象を持った。Tomasz Marut(プロフィールはこちら)は事前に予習できなかったが、マズルカOp.59に始まり、3つの練習曲、バラード第2番Op.38に至るまで、リサイタルのようだった。気に入るとリピートが止まらない病が始まった。

 前日の感想が長くなったが、以下、本日7/18の出場者情報の一部をざっと書き留めておく。本日は14名(うち女性が10名)と多く、日本6名、韓国2名(韓国のピアノ高等教育事情についてはPTNA広報部さんの記事(2021年7月18日22:21)が参考になる)、中国1名とアジア勢が多数を占める。PTNA広報部さんがnoteで日本人の紹介をされていたので、私はその他の方について触れたい。

Mr. Arsenii Mun (Russia)

 Arseniiは22歳で現在ジュリアード音楽院の学生で、その前にロシア(St Petersburg)のAlexander Sandler at the Nikolay Rimsky-Korsakov State Conservatoryを卒業している。
 YouTubeでは、今回の予備予選で弾く予定のバラードOp.23と練習曲Op.10-8(2021年1月のSingapore International Piano Competitionの予備予選の3曲目)が上げられていた。
 2020年6月のStayHome International Piano Competitionのファイナルでは、ピアノソナタ第3番(ショパコン本選の3次の課題曲)を弾いている。
 少し古いが、2015年6月に米国で開催されたCliburn JuniorのQuarterfinal Roundではショパンを5曲弾いた動画もあった。

Mr. Viet Trung Nguyen (Vietnam/Poland)

 以前のnoteの⑩に記載。彼は今年9月で25歳、今回のショパコンに出場する唯一のベトナム人で、ブレハッチ(2005年の第15回ショパコンに優勝)と同じくKatarzyna Popowa-Zydroń(今年のショパンコンの審査委員長)に師事している。

Ms. Anfisa Bobylova (Ukraine)

 Anfisaは29歳、既に6か国での国際コンクールでの入賞歴を持つ。自らのYouTubeチャンネルを開設しており、43の動画をアップロードしており、ショパンも含まれている。今回の予備予選で弾く予定の練習曲Op.10-8(2019年6月)、ノクターンOp.27-1バラードOp.52が含まれる動画(2021年5月)があり、何れも宮殿の一室のような場所、大きな絵画のかかった部屋で弾いている。

Ms. Anke Pan (Germany)

 Ankeは現在28歳。17歳で2010年の第16回ショパコンに出場しており、本選1次まで進出しているため、今回は11年ぶりの再挑戦。当時本選1次で弾いている練習曲Op.25-7(個人的には彼女の歌い方が好きである)を今回の予備予選でも弾く。
 2020年3月に自らのYouTubeチャンネルを開設しており、29の動画が上げられており、半数以上がショパンの「練習」動画で、「Vlog」風に編集されているのが興味深かった。髪の色が上半分が真っ赤で、下半分が金髪だったり、ポップな雰囲気がチャーミングな女性だ。
 予備予選で弾く予定の曲だと、練習曲Op.10-4練習曲Op.10-11(冒頭に曲紹介(ドイツ語ではなくきれいな発音の英語なので理解できる)があり、弾き始めて間もなく飼っている猫ちゃんが登場、その後、どのように練習をしているかがスクリプト付きで説明され、3カ月後に仕上がった曲が披露されて動画が終了)が上げられている。最近の演奏だと、オンラインコンサートの動画(バラード第3番Op.47、練習曲Op.10の12曲;冒頭の曲紹介?はドイツ語)もあった。
 2019年にはRavelとChopinのCDをリリースしている。

Mr. Eryk Parchański (Poland)

 Erykは現在19歳。既に複数のコンクールで優勝をしているようだ。今回の予備予選で弾く6曲は、Chopin Instituteの土曜リサイタル①(2021年6月12日;6曲中、2曲の練習曲(Op.10-4、Op.10-11)は今回の予備予選で弾く予定のもの)と土曜リサイタル②(2020年8月15日;ノクターンOp.27-1、マズルカOp.30、バラードOp.47は今回の予備予選で弾く予定のもの)で全て聴ける。本日の本番と聞き比べする楽しみができた。

Mr. Jinhyung Park (South Korea)

 以前のnoteの⑪に記載。以前は2015年の第17回ショパコンの本選1次までの演奏しか紹介しなかったが、彼は本選2次まで進んでおり、2次では、舟歌、ポロネーズOp.53「英雄」、ワルツ1番Op.18、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22を弾いている。何れも、音色がクリアで、堅実な弾き方に見えた。

Ms. Yeon-Min Park (South Korea)

 Yeon-Minは今年11月で31歳。角野隼斗さんが3位になったリヨン国際コンクールやその他のコンクールで優勝している。彼女は、master’s studies at the Hochschule für Musik, Theater und Medien in Hanoverを終え、現在もコンサート試験の勉強を同じ場所で続けている。既に20以上のオケとの共演経験も持つ。
 予備予選で弾く曲は、YouTube上では、練習曲Op.25-10(2018 Geza Anda International Piano Competition)しか見つからなかった。最近のショパンは、舟歌Op.60(2020年2月)がある。

⑧ Ms. Jiana Peng (China)

 Jianaは、2021年7月1日に米国の教会(Fairmount Presbyterian Church Cleveland Heights)で、オールショパンのコンサート(演奏前に演奏曲の紹介あり;英語)を開催しており、予備予選のプログラムを披露している。

 今日は週末であり、ライブ配信前に調べた結果を何とかまとめ終えた。

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