秋田 朗

音楽プロデューサー 舞台プロデューサー 作曲・編曲・脚本家 B級グルメ評論家  小説を…

秋田 朗

音楽プロデューサー 舞台プロデューサー 作曲・編曲・脚本家 B級グルメ評論家  小説を連載中

マガジン

  • 山岳小説 カンチェンジュンガに降る雪

    ヒマラヤ山脈第三の高峰カンチェンジュンガ。 様々な苦悩を背負い、再びその山に挑む孤高の天才クライマー。彼を取り巻く女たちの葛藤。鉄道プロジェクトにうごめく政治家たちの陰謀・・・そして物語は神々の住む天空の頂きへ。人はなぜ山にのぼるのか?永遠のテーマを伏線に展開する山岳小説ここに連載開始!

  • 短編連作小説 こいのうた

    ミュージカル女優に憧れる水口はるか。けんか友達の堀口雄太。そして彼らをやさしく見守る先輩柳原健二と早乙女さくら。大学生の青春群像をコミカルに描く。 「こいのうた」の画像モデルは友重舞香さん。 インスタ https://instagram.com/maika.t CM https://www.instagram.com/p/Cn8yIDBhF-P/?img_index=10

最近の記事

[山岳小説]カンチェンジュンガに降る雪4

5 藤崎の妻は絹子といった。その絹子は五年前に病死した。働き過ぎによる突然の心筋梗塞の発作であった。 立木絹子が藤崎勉と出会ったのは,病院だった。看護師見習いをしていた絹子のいた病院に、藤崎が、手を骨折して入院してきたのだ。藤崎は、絹子が全く出会ったことがないタイプだった。しかし、なにか自分の性格に似通ったものを感じたのか、興味を持った。絹子は、このまま藤崎が退院して疎遠になるのが、なんとなくいやだった。意を決して、絹子は自分から連絡した。男に自分から連絡するなんて考

    • [山岳小説]カンチェンジュンガに降る雪3

      4 藤崎は、自宅で次回の連載原稿を書いていた。原稿から解放されておそい昼飯を食っていた時、玄関の呼び鈴がなった。 「こんにちは。藤崎勉さんですね」 「あなたは?」 「外務省の近藤といいます」 「外務省のお偉方がなんの用です」 「単刀直入にいいます。カンチェンジュンガにもう一度登っていただけませんか」 「なんだって!」 「こんど政府の肝いりで、日本人だけのカンチェンジュンガ北東壁制覇登攀プロジェクトが走るんです。それに藤崎さんもぜひ参加願いたい。それもトップとして」 「なに

      • [山岳小説]カンチェンジュンガに降る雪2

        2 外務大臣梅原龍三郎は、執務室にいた。 「深沢君、深沢君!」 政務次官の深沢和彦が急いで入ってきた。 「例の件は進んでいるか」 少し、イラついた声で梅原が尋ねた。 「はい、今、近藤君が動いています」 深沢は急いで答えた。 梅原は深沢の答えが終わらねうちに、秘書の山下に声を投げる。 「電光の青葉くんはまだか」 「はい、あと10分くらいで到着の予定です」 「よし、来たらすぐ始めよう」 梅原はすっくと立ち上がった。 現、有沢内閣では、外務大臣の梅原は末席であった。 さしたる実

        • [山岳小説]カンチェンジュンガに降る雪

          ヒマラヤの山々には、神々が住むという 人々は神々を崇め、称え 神々は人々を守り、愛した だが、時に人は愚かにも神々の聖域に立ち入ろうとする 神々はそれを許さない 神々はつぶやく ・・・罰を与えよ 立ち入った者は二人 彼らは氷壁に宙づりにされていた 風は激しく雪をたたきつける まるで二人を鞭うつように カンチェンジュンガ北東壁・・・ 上の男は、下の男にもがくように手を伸ばした 下の男が滑落していった 上の男は叫んだ 「北原、きたはら~~~~」 その声は、むなしく嵐にかき

        [山岳小説]カンチェンジュンガに降る雪4

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        • 山岳小説 カンチェンジュンガに降る雪
          4本
        • 短編連作小説 こいのうた
          5本

        記事

          [連載ラブコメ小説] こいのうた5 コロナの中の二人

          登場人物 堀口雄太 水口はるか 早乙女さくら 1  それは突然やってきた。中国で発生した新型コロナ・ウイルスである。コロナの猛威はあっという間に世界中に蔓延し、企業や教育機関等を閉鎖に追い込んだ。何よりも大変なのは飲食店や、舞台関係の団体であった。行政と医療は、人が集まるところに感染ありと判断し、人と人との接触を極端に制限した。飲食店は休店を余儀なくされ、舞台やライブ、コンサートは次々に中止になった。  堀口雄太と水口はるかが在籍する城東大学も例外ではなく、休校にな

          [連載ラブコメ小説] こいのうた5 コロナの中の二人

          [短編ラブコメ小説]こいのうた4 はるかの行く道

          登場人物 堀口雄太 水口はるか 柳原健二 早乙女さくら 1  城東大学は秋真っ盛りであった。正門から続く欅並木は黄金色に変わり、女子学生の洋服も、白やブルーのTシャツから、シックな色のトップスに変わった。そして、学園祭の準備や、体育祭の準備にあわただしくなっていった。水口はるかは、この大学に通う学生で、ミュージカル研究会に所属していた。先輩にはすでにプロとして活躍している、柳原健二と早乙女さくらがいて、彼女は二人をとても尊敬とあこがれをもって接していた。  は

          [短編ラブコメ小説]こいのうた4 はるかの行く道

          [時代小説]天治の剣

          一 「若僧!きさま、俺をみて笑ったな!」 夜の闇に怒声が轟いた。 慶長4年11月、江戸の場末の酒場も閉まりかける、四ツ頃(午後十時ごろ)である。 一人の侍を三人の浪人が取り囲んだ。 「まことに、まことに。不愉快なことでござる」 浪人たちは酒に酔っている風である。 「笑った覚えはござらん。先を急ぎます故、ご免」 侍は軽く会釈して通り過ぎようとした。 「待てぃ!愚弄されたままでこのまま通すわけにはいかん」 「愚弄などと。誤解でござる。通してくだされ」 「ふふふ。通してほしくば

          [時代小説]天治の剣

          [朗読劇] 海の見える丘

          登場人物 高志 春美           春美 高志さん、わたしびっくりしました。あなたからの手紙。 だってわたし、あなたがずっと怒っているとばかり思っていたんですもの。あの頃何度お便りしても、あなたは返事をくださらなかった。だから、今日郵便受けに、あなたからの手紙を見つけたとき、本当にびっくりしました。そして・・・うれしかった。 『クラス会の案内を出しただけだ』とあなたは言うかもしれない。でも、高志さんが手紙をくれた・・・ そして『一度帰って来いよ』と書いてくれた

          [朗読劇] 海の見える丘

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          はるかなるテニアン

          小職の作曲です。テニアン島の思い出を曲にしました。

          はるかなるテニアン

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          [短編ラブコメ小説] こいのうた3 雄太の彼女

          登場人物 堀口雄太 水口はるか 柳原健二 早乙女さくら 小野寺真琴 1 「あれ? 雄太じゃないかな」 はるかは、10月の秋も深まりつつある、夕方の新宿歌舞伎町の雑踏に、偶然堀口雄太にそっくりの後姿をみつけた。雄太と思われる人物は、髪の長い黒いロング・ドレスの女と並んで歩いていた。 「雄太のやつ・・・彼女ができたなんて聞いてない」 はるかは、少し悔しそうに言った。 はるかと雄太は同じ大学の同級生であった。そして、二人とも城東大学のミュージカル研究会に属していた。二人

          [短編ラブコメ小説] こいのうた3 雄太の彼女

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          そしてワルツはつづく

          小職が前に手掛けたミュージカルのテーマ曲です。作曲者はなんと名優アンソニー・ホプキンス氏。

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          [クリスマス・ファンタジー童話]エマとダリア

          主な登場人物 エマ    魔女 ダリア   魔女 ぺぺ    妖精 コーボルト 小悪魔 ギルバート 魔法学校の先生  ここは魔法の国。魔法学校を卒業したばかりの魔女エマは、一人でお祈りをしていた。そこに妖精のペペが飛んできて話しかけた。 「エマ、何してるの?」 「今日はクリスマス・イブよ。みんな楽しそうにクリス魔の準備をしてるわ。あそこの家は子供たちがツリーの飾りつけ、あそこの家はお母さんが大きなケーキを作っている」 「ああ、そりゃそうだよ、一年に一度のイブだもん」 「でも

          [クリスマス・ファンタジー童話]エマとダリア

          [短編ラブコメ小説] こいのうた2 キスのしかた

          登場人物 堀口雄太 水口はるか 柳原健二 早乙女さくら     1  ここは城東大学のある東京M 市である。M市はおしゃれな街並み、静かな住宅地が見事に調和している学園都市であった。駅前にはおしゃれなカフェやレストランがあり、M市マダムは昼からランチを楽しむ。駅周辺の雑踏から少し入ると、センスのいい洋服が飾ってあるプディックや、輸入雑貨を売る店が住宅地の中に隠れるように佇む。そんな洗練された街の象徴が、城東大学であった。駅から散歩がてらバス通りを15分ほど歩いていくと、

          [短編ラブコメ小説] こいのうた2 キスのしかた

          [コミカル・ミステリー小説]ブリキの魔人

          主な登場人物 五味山一平     ひまな探偵                平泉テン子     五味川の女助手            ブリキの魔人    全身をブリキでおおわれた謎の魔人  日和見警部     五味山の友人 警察官      尾間貫刑事     日和見の部下            金有剛三      宝石商               金有峰子 金有の妻              金有由美      金有の娘    

          [コミカル・ミステリー小説]ブリキの魔人

          [詩編] タマルとアムノン 

          月は空を巡る。 水のない台地、夏はトラの掃く灼熱の息のように巻き散らかされ、 その中でおれは身を焦がす。 おお、タマルよ。おまえはなぜ妹なのだ。 タマルよ・・・ 大地は傷だらけの灼熱の白い光のなかで焦げていく。 おれも焦げてゆくのだ。 月は空を巡る。冷たいシターラの響きがきこえる。 私は踊る。 さあ、ハンナ、おまえも踊るのです。 タマルよ。おまえはまだ踊るのか。まだ俺を惑わすのか。 月にぬれたシターラにあわせて… 棕櫚の強い風。 氷ついた5羽の鳩。おまえの足元にいる。

          [詩編] タマルとアムノン 

          [短編ラブコメ小説] こいのうた

          1 城東大学は東京のM市にあった。M市は住みたいまちベストテンに入るようなおしゃれな街並みと、静かな住宅地が同時に存在している学園都市であった。大学はそんな街のシンボルのように郊外の一等地にあって、裕福な学生たちが多かった。学生たちはみな青春それぞれを謳歌していた。 部活も盛んで、中でもミュージカル研究会からは何人もプロが排出し、また、学生のうちからプロ活動している者も多くいた。 そんななかで、水口はるかはミュージカル女優を夢見る3年生。 そして堀口雄太は、ミュージカルとい

          [短編ラブコメ小説] こいのうた