[山岳小説]カンチェンジュンガに降る雪4
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藤崎の妻は絹子といった。その絹子は五年前に病死した。働き過ぎによる突然の心筋梗塞の発作であった。
立木絹子が藤崎勉と出会ったのは,病院だった。看護師見習いをしていた絹子のいた病院に、藤崎が、手を骨折して入院してきたのだ。藤崎は、絹子が全く出会ったことがないタイプだった。しかし、なにか自分の性格に似通ったものを感じたのか、興味を持った。絹子は、このまま藤崎が退院して疎遠になるのが、なんとなくいやだった。意を決して、絹子は自分から連絡した。男に自分から連絡するなんて考