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初めてまともにオシャレをして街を歩いた結果……

2022.6.× mon

6月某日。アタイの誕生日は7月5日だ。
6月は、予算を決めて誕生日プレゼントを購入させて頂く時期だ。
今年で二十歳になる。あともう数回寝ると二十歳ってことか……。
今年のプレゼントは今までのように子供っぽいものでなく、大人の階段として化粧品を揃えることにした。
ほとんどプチプラだ。プチプラだけでもこんなに金がかかるのか……。

今までちゃんと物を揃えたことは無かった。ろくな化粧を人に見せたことは無かっただろうな。
風呂に入る前とか動画を見ながら一週間ほど化粧の練習した。

「やっぱり顔が浮腫んでないと可愛く見えるんだなぁ〜」
「光を当てると綺麗に輝くけど暗い所はちょっと怖いかな〜」
「あ、でも全然マシになってきた」

ツムギは化粧を覚えた!

某チェーンの服屋で前から気になっていた半額のワンピースを買った。爽やかな色だがだいぶ派手な服で、地方都市ではすっごく売れ残っていた様子だ。
お母さんからの感想は
「こりゃ売れ残るなー 絶対買わないもん まあ似合ってるから別に良いけど」
それに別チェーン服屋のフェミニンなフリルシャツ(ちょっと首と袖が締まって苦しい)を買って合わせた。靴は薄っぺらいカンフーシューズ。薄すぎて足が痛いから今度別の買いたいな……

化粧もしっかりして……マスクだからだいぶ隠れるし剥がれるからもったいないけれど……口の化粧が下手なのを誤魔化せるしいいか。
夏風ファッションのようなものをやってみた。

すごい!見違える!今まですごいバカっぽかったのに悩んでたけどこれは良いかも!
ほんとさ、もう数日で20なのに「小学生?」とか言われるの普通なくらいのギリ障っぷりのアタイですよ。大人の階段のぼる……

……ということで、実は……
今日はある実験をしたかった。
お母さん曰く、知り合いに「化粧品のテスターだけで生活している」というマダムがいるらしい。
その人はめちゃくちゃ身なりを綺麗にしているという。

アタイは変わった……変わったの……
「おしゃれして化粧してデパートの化粧品売り場に行ったら、テスターもらえるのか!?」作戦!

いざ、参らん……。

駅についた。周りを見るとやけに自分だけ眩しい。ここだけ日向みたいだ!
あと、アタイは髪を伸ばすのが趣味なもんでちょっとラプンツェルになりたい系に見えて
「ア……痛かったかな?」
と今更……。しかもただ髪を伸ばすのが好きなもんで……つまり……髪型は後でなんとかするかぁ……(やっつけ)

選挙シーズンだった。選挙カー、色々な演説……聴覚過敏症もこの歳になるとだんだん慣れてきた。この前だって耳栓締めてサングラスしてしっかり対策してうん年ぶりに「壁デミー賞」の映画を見に行ったんだ。対策して我慢すりゃあ特にどうってこと無し。

キョロキョロ景色を見るのが好きなアタイは、ついその集まりを凝視してしまったんだ。すると運動員の奥様が「おいでよ」と誘ってきた。

「かわいいねーハーフ?」
「あ、あはは、違います」

化粧をするとこんなことも言われるのか?化粧パワーか?そんなにアタイはオシャレか?

「こっちで聞かない?」
「コレ……(耳栓を指差す、あえてコレが何かは言わなかった)」
「ああ、うんうん!聞こえる?こっち来ない?」
「いいえ、ここがいいです……」
「このチラシ読んでね」

YouTuberらしいおじさんがやってきた。すごく有名人らしい。アタイ有名人に疎いからかいまいちわからないけれど。

「第二次世界大戦はうんたらかんたらで……うんたらかんたらだから狙われたんだ……!!!」
アタイ(ふーん、なるほど……ほんとかど〜かは置いといて、一理あるかもね……その意見……)

彼が何かを言うごとに拍手をみんなするので、アタイモちょっと腕を叩く。

「若者の声を聞きましょう!!!○○は何も直接聞かない、だからこのざまだ!!!」
(へ〜、え、じゃあアタイの話聞いてくれるのかなぁ、オシャレだし)

もしもの話だけど、めっちゃ話聞いてくれてすごく理解してくれる人がいたら、
「よしよしペロペロしてもらうんだぁ!」
って、なるんだろうなぁ。
それはたとえ政治や宗教だとしてもね。
まさかこれを読んで漬け込んでくる人は居ないとは思うけど(殴
アタイという生き物は、すごくそういうのが上手い人とって、「洗脳」がかなり簡単な奴なんだと思う。そういう危うさアリ。

だがさっき渡されたチラシを見て、すぐ悟ってしまった。ぺらり。
『外国人を排除し、日本中心の国を作る』
「なんだ……無理無理」
という気持ちになってデパート側へ去ってしまった。
さっきの「かわいいね、ハーフ?」はなんかさ……悪意は無いんだよね?うん、あれで悪意あったらむしろすごいわ……
あとよく考えたら、このおじさんの話を聞いても「アタイの話」はあのおじさんは聞いてはくれないんだろうな。つい面白くなっちゃって浮かれてたわ……
すっごく面白いことを今しようとしてるんだ。どうせ分かり合えぬなら!教えたりしないよ!

……

「予算はいくらですか?」
「サ、三千円くらい……」
やべえ、ほんとは二千円しか残って無いけど値札をちらっと見て空気を読んでそう言った。美容部員さんごめんなさい。

とりあえず、テスターは貰えなかったけど勇気を出して話すことはできた。
心なしか話しかけられる率は高かったような……?

後からお母さんの話を聞いたところ、例のテスターだけで暮らしてる人の話はだいぶ昔の話で、令和の時代に気軽に配ることはあまり無いらしい……。

デパ地下の豪華な惣菜を見て
「あー、美味しそう。コロナの注射のご褒美(会場がデパートだった。成人なのに療育センター通いが祟ってお母さんがついて行かなきゃいけない羽目になる。お母さんいつもごめんなさい)に何回か買ってもらったけど、確かうち、注射『コロナ収まってきたから2回目以降はしばらくやめよーぜ』って話になってきたんだったな。しばらく無いな」
と考えた。

地下から上がってきた頃にはもう演説は引けていた。

アトリオンへ行った。アトリオンとは大きめの音楽ホールや貸しギャラリーがあったりするビルだ。アタイはよくここに出没したりする。

秋田県美術展覧会かぁ……
中学校の美術部で、部費で一回入ったことがある。
いやーもうね、中学校の美術部時代、ほんの半年しかいなかったけど黒歴史だよ。
どんなんかって……?
うーん、あんまり大々的には言えないけど……
「躁鬱気味」だった。それ以上のことは言えん。知ってる人はネタにでもするがよい。あ、ちなみに躁鬱、今はシッカリと診断されてる。あの時は診断されて無かったけどね。
今になって「キャッチャーインザライ」という本を読んでさ、躁鬱中学時代のことを思い出して泣いちゃうんだよね。その話はまたべつの話だけど。やっぱあの頃のことを思い出すと、大好きな幼馴染のことを想うんだ。あんな奇異な行動を取っても今でも仲良くしてくれる切っても切れない大切な幼馴染。悪かったなとすごく思うんだ……(また別の話)

展示会には学校の行事でやって来てる学生で溢れてる。
展示室の前でまちぼうけ、アタイはワンチャン金持ちがやってきて「チケット余ってるからあげる!」とか言われることをどこか期待してた。地元の小さめの展覧会とかってさ、思わぬ人からの紹介で入ることがあるから期待しちゃう。
でも可愛い格好で待ってるとアバズレっぽいよね……。そう巡らせてとりあえずアトリオンから脱出。

なかいちの街角ピアノへ行って、いつもの曲、ガラクタ通りのステインの「ノンソ・アモーレ」(これは丸暗記している)と、レットイットビー(だいぶ下手)を弾いた。通して弾けたけどかなり下手で聴き苦しかった。
しばらく昔、ここでレットイットビーを弾く兄さんがいて「弾けたらかっこいいだろうなぁ」って思ってたんだ。

美術展覧会を見終わった中学生が集まっている。


思わず目を逸らしてしまう。


オシャレして行ってもソレは隠し切れていないような気もするなぁ……
時々恥ずかしくなるよ……気にしても仕方ないけど……

帰り道。ちらほらと小学生が歩いてる。

おばあちゃんに
「気をつけて帰ってね 車たくさん出てきたからね」
と言われる。
「あっ、はいどうも。ありがとうございます!」

……ん?小学生だって思われてる?

この格好、やっぱり子供っぽさを誤魔化せていなかったようだ……!


何もないマンデーだ。


〜fin〜




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