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猫とじゃがいも

メインクーンという猫のことを、ずっとメイクイーンと言い間違えていた。じゃがいもの品種と同じ名前の猫がいるのかと勝手に納得していたが、ある時スーパーの野菜コーナーで「そういえばメイクイーンって猫ってやっぱりじゃがいもが由来なのかな」みたいなことを話したら夫に笑われた。いつもはこういうボケは夫の役割なのだが、その日ばかりは「いやいや、メインクーンやろ」と突っ込まれてしまった。そう、基本的に夫がボケ、私がツッコミなので、またまた夫が間違ったこと言ってるなと思っていたら、私が間違っていた。30年弱、あの大きな猫のことをじゃがいもだと思っていた。

言い訳させてもらうと、我が家にはテトという茶トラ白の猫がいるのだが、ちょっとじゃがいもっぽいのである。茶トラの色味もそうだし、コロコロした見た目もそう。近づいて嗅いでみると香ばしい匂いもするし、じゃがいもっぽく思えなくもない。猫ってちょっとじゃがいもに似ていなくもない。だからこの世に一人くらい、メインクーンのことをメイクイーンだと勘違いする人間が居たって不思議じゃない。

揚げ足を取るようだが、そういうボケ担当の夫はというと、ずっと「目が据わる」という言葉のことを「座る」だと勘違いしていた。35年間くらい、酒に酔うたびに目を座らせ続けて生きてきたそうだ。確かに、目の玉がじっと動かなく状態のことを、大人しく「座る」と表現するのも分からなくもないが、目の玉はどこに、どんな風にして座るんだろう。

言葉の誤りといえば、英語の発音間違いというのもある。中学生の時、同じクラスだった女の子が"island"のことを「イズランド」と間違えて発音していて、伊豆にどんなランドがあるんだよ、と心の中で思っていた。さらに似た漢字間違いというのもある。大学生の時にお世話になった講師の方が「似て非なるもの」を「もってひなるもの」と読み間違えた時には突っ込んでいいのか迷った。先生という立場を考慮して結局何も言わなかったが、言った方が良かったのだろうか。

このように、自分の勘違いを帳消しにしようと、これまで出会ってきた人の言い間違いや覚え間違いについて書いてきたが、猫とじゃがいもを間違えるほどのインパクトを残した人は見つからなかった。どう考えても自分が一番馬鹿だった。こんな人間に人の言葉の誤りに突っ込みを入れる権利はない。

しかし今でも野菜コーナーを通るたび、うちのテトの顔が思い浮かぶ。やっぱりメイクイーンって、丸くなって寝ている猫にちょっと似てるんじゃないか。メインクーンのことをメイクイーンだと勘違いしていた人がもしこの世に他にも居るのなら、友達になりたい。似通った感性を持った者同士、上手くやっていける気がする。類は友を呼ぶというから、いつか出会えるかもしれない。

ちなみにメイクイーンと男爵が横並びに売られているとして、私がいつも手にとってしまうのは(料理にもよるが)たいていメイクイーンである。私は筋金入りの猫好きなのだ。

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