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上京するか、地元にとどまるか悩んでいる東北の若者たちへ

こんにちは。秋田県由利本荘市でごてんまりを作っています〈ゆりてまり〉です。

先日歯が一本なくなりました。
ほおが腫れるほど歯が痛くて歯医者に診せたところ「歯周病が進行して歯槽膿漏になっている。これは抜くしかない」となったからです。
現在口腔内は歯垢がほとんどなくキレイな状態らしいのですが、以前ケアできない期間があったのではないかと言われました。
確かに、秋田にUターンする前は関東圏で働いていて、ほぼ常に過労死ラインで働いていたので、歯のケアは疎かになっていました。
もちろん歯医者にも行っていませんでした。

その話を同じくUターンして秋田に帰ってきた友人にしたところ、「そう言えば、秋田に帰ってきてから会社の人が結構気軽に病院や歯医者に行くのでびっくりした」と言いました。
彼女も現在は定期的に歯医者に行っているらしいですが、Uターン前はほとんど行っていなかったらしいです。
そんなことよりも働いていた、と。
わたしと同じですね。

彼女と話していて、もしかするとどこで働くかによって、自分の体のケアにどのぐらいの時間を使えるか、ある程度決まるのかもしれないな、と考えました。
たらればの話にはなりますが、わたしも秋田にずっと暮らしていたら、歯を失うことはなかったかもしれません。
わたしは生まれつき糸切り歯の間に4つあるはずの歯が2本しかないので、これでふつうの人より3本も歯が少ない状態になってしまいました。

東北出身の人ならおそらく共感できると思うのですが、自分の生活を考える上で「どんな仕事をするのか?」よりも「地元を出るか否か?」のほうが実は大事な問題だったりします。
東北の若者にとって、将来仙台や東京などの都会に出るか、それとも地元に留まるかという問題は、大変切実な問題です。

「もし都会に出たらどうなるのか」
「もし地元にとどまったらどうなるのか」

あらかじめその結果が分かっていたらなー、なんて思うことはないでしょうか?
未来がどうなるかなんて、もちろん誰にも分からないのですが、東北出身者が東京圏に出たらどうなるのか、何を得られて何を失うのか、統計的に分析した本ならあります。
タイトルは『「東京」に出る若者たち--仕事・社会関係・地域間格差』。



タイトルの『「東京」に出る若者たち』とは、もちろん東京以外の地方にいる若者のことを意味します。
しかしこの本では、ピンポイントに東北出身の若者のことを指します。
地元を出るか否か? で悩んでいる東北の若者にはぴったりの本です。

わたしはこの本で「ローカルトラック」(吉川徹提唱の概念。 トラックとは水路のこと。一見その人が生まれや属性によって進路を自由に選んでいるように見えても、実際にはいくつかの型に収斂していく様を指す。東北出身者のトラックの向かう先は基本的に東京圏になる)の概念を初めて知りましたし、移動による経済利益は、学歴によって大幅に異なることが興味深いと感じました。

他にも、「東京に出るとどのくらい儲かるのか」「移動できる者と移動できない者」など、気になるトピックがたくさんあります。
各章のタイトルだけ下に記しておくので、気になった方はぜひ読んでみてください。



序 章 本書の目的とデータの概要
 1 本書の目的
 2 本書で用いるデータの概要
 3 本書の構成


 第Ⅰ部 大都市への移動と若者の仕事、経済

第1章 地域間労働移動の実態と時系列分析
 1 地域間労働移動を考える
 2 地域間労働移動の実態
 3 地方と都市の間の労働移動

第2章 地域間移動から若者が得る経済的な利益
 1 なぜ若者は地域を移動するのか
 2 データセットと基本集計
 3 所得関数の推計結果
 4 東京に出るとどのくらい儲かるのか

第3章 地域間移動と格差問題
 1 地域間移動は日本社会に何をもたらすのか
 2 なぜ地域間移動は起きるのか
 3 移動できる者と移動できない者
 4 地域間格差と格差の是正策


 第Ⅱ部 移動する若者たちの社会関係

第4章 地域間移動は地元の人間関係を壊すか
 1 なぜ、人間関係を問題とするのか
 2 分析する「人間関係」の定義と測定
 3 移動パターンのグループ化??移動経路で回答者をグループ化する
 4 アクティブ友人数の実証分析

第5章 移動先で形成する人間関係
 1 高等教育と職場で得た人間関係
 2 アクティブな人間関係の総量は
 3 地方と大都市の差を生む環境要因

第6章 東北出身者のローカル・トラック
 1 人間関係の安定性とローカル・トラック
 2 既存友人関係の実証分析
 3 既存親族関係の実証分析
 4 東京一極集中による流入者の結合

第7章 都市への移動と趣味ネットワーク
 1 都市への移動による人間関係上の利益
 2 趣味ネットワーク拡大の実証分析
 3 なぜ東北からの移動者だけか、なぜ進学だけか


 第Ⅲ部 青森県の若者のケーススタディから

第8章 大都市に就職した工業高校卒業生の地元意識
 1 地域間移動した若者たちの経験
 2 マイノリティ化する高卒就職者
 3 青森県における高校生の進路
 4 工業高校を卒業して大都市で働く
 5 大都市への移動と地元との距離

第9章 大卒女性の大都市移動とローカルネットワーク
 1 いくつもの分岐点を超えて
 2 シューカツを乗り越えて
 3 チャンスを求めて上京
 4 あこがれの東京で根を張る
 5 正社員を求めて
 6 地方の大卒女性のキャリアにとっての大都市とローカルネットワーク


終 章 若者の地域間移動に関する、いくつかの処方箋
 1 今、起きていること
 2 個人レベルでの対策
 3 ナショナルなレベルでの対策
 4 地域社会の利害との対立

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