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ごてんまり業界は次のフェーズに入った

こんにちは。秋田県由利本荘市でごてんまりを作っています〈ゆりてまり〉です。

2019年12月にわたしがごてんまりアクセサリーの販売を始めてから、他にも由利本荘市内でごてんまりアクセサリーを作って売る人が増えてきました。
自分の他にもそういう人たちが出てきたことについて、わたしは大変喜ばしく思っていました。

自分一人が地域でごてんまり作家として有名になるよりも、同時多発的にごてんまりに関わっている人が発生したほうが、地域全体が活性化するからです。
そのほうが、作家活動をする側としても都合がいいんです。
「ごてんまりで有名な由利本荘市」で活躍しているアーティストとして、泊がつきますから。
もともと由利本荘市には、まりの左右と下方の三方に房の付いた世界唯一のまり、「本荘ごてんまり」がありますし、毎年全国ごてんまりコンクールを開催しているという、まり業界で突出した魅力があります。
由利本荘市には地域としてまりの絶対的なブランド力があります。

その力を利用しないのはあまりにももったいない。
ごてんまりアクセサリーを作れる人がおそらく市内にいらっしゃることは分かっていましたし、売れている、つまりごてんまりがお金になることが分かれば、わたしが接触しなくても自然と追随者が出てくるだろう、と考えて活動していました。
つまりわたしは、表向きは自分一人で活動していましたが、裏ではごてんまり作家を地域に自然発生させ、由利本荘市がごてんまりの地域として再び活性化することを目指していました。

しかし、何事も目論見どおりにはいかないものです。
自分以外にも地域でごてんまりアクセサリーを作る人が増えたのはいいのですが、誰も名前を出して活動しなかったのです。
これは予想外でした。

その人たちが名前を出して活動しないので、「このごてんまりアクセサリーを作ったのは誰?」「分からない」「検索したら〈ゆりてまり〉っていう人が由利本荘市でごてんまりを作っているらしいよ。この人じゃない?」というふうに、由利本荘市のごてんまりアクセサリーなら何でもわたし〈ゆりてまり〉が作ったと考える人たちが続出してしまいました。

さらにオリンピック出場選手がごてんまりアクセサリーを身につけている姿がテレビニュースで流れたり、その人たちが作った作品が空港で展示されたりしたため、ますますその風潮が加速しました。
まったく名乗りをあげないまま、作品の露出が増える一方なので、その人たちが名前を出さずにひっそりと活動したいのか、それとも逆に人々の注目を集めたいのかわからず、不気味に感じていました。

そういった状況下で、徐々にわたしは苦しくなっていきました。
当初の思惑通り、由利本荘市内でごてんまりアクセサリーを作って売る人が増えたのは純粋にうれしかったです。
しかし、他人の作っているごてんまりアクセサリーが自分の作品と混同され〈ゆりてまり〉だと思われるのは、想像以上につらいことでした。
わたしにはわたしの作風がありますし、ほかの人たちの作風とは全然違います。
しかし普通の人には全部一緒に見えるらしくて、わたしのだと思い込んでしまうのです。それが何よりつらかったですね。

わたしが苦しくなったのは、自分の中にしっかりと「アーティストとしての自己」が確立し、他人の作品と混同されることでアイデンティティを傷つけられたように感じたからです。
2019年以前と同じように、地域にごてんまりアクセサリーを作って売る人が自分だけという状況のままだったら、あり得なかった苦しみです。
この苦しみは確実に状況が前進していることの証ですし、大方は自分の思い通りに動いているのですから、やはり喜ぶべきことでしょう。

ごてんまり業界は次のフェーズに入りました。
地域でごてんまりアクセサリーをたった一人が作っているのではなく、複数の作家がいる世界です。
単一ではなく複数の作家がいるのであれば、お客さんに向けてそれぞれの個性を出す必要が出てきます。
名前も出さずに活動しているべきではありません。
作家はそれぞれの世界観を打ち立て、お客さんにわかりやすくアピールしなければならないでしょう。
わたしが他の作家の作品と混同されて苦しい思いをしたのも、きちんと差別化できていないことの表れです。


新しいフェーズでは、「作る」だけではだめで「見せる」ことが重要になってきます。
そこら辺は自分もできていない自覚があるので、改善しなくてはいけませんんね。




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