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「今ここにある危機とぼくの好感度について」をみて思った、この国の姿と渡辺あやさんの怒りについて

今季のドラマは「大豆田とわ子と三人の元夫」、次点に「コントが始まる」、くらいかなと思っていたところ、とんでもないドラマにまた出会ってしまった!!

その名も「今ここにある危機とぼくの好感度について」(長い!笑)。

日付としてはおとといの5/1(土)に第2話が放送されていたのだが、これがもう途方もなく面白かったのだ。ドラマをみていて、思った。このドラマは、大学が舞台ではあるけれども、この国そのものを描いているのだな、と。

(以下、ネタバレを含みます)

大学の広報室に転職してきた神崎真(松坂桃李)は、さっそくある事態に遭遇する。研究不正の告発があったのだ。これに対しうまく対処するよう上層部から求められるのだが…。

不正が告発されたにもかかわらず、その調査結果に真摯に向き合おうとせず、「誤解」だと言い換えようとする上層部。そして、不正の指示にあたる言葉「整えて」は「机の整理」を意味するのだと開き直る教授チーム。このようにして、不正はなかったことにされ、実名で告発した一人の学生は大学を去って行く…。

この一連の動きをみていて、この国の政府のことを考えないわけにはいかない。というか、それはもう「秒」の世界で、すぐに思い当たるのである。

”第四波”が確実に日本を襲っているにもかかわらず「大きなうねりとまではなっていない」とする首相(4/14)。この10日後、3度目の緊急事態宣言は発出された。

南スーダンで凄惨な内戦が起きているにもかかわらず、「戦闘」ではなく「武力衝突」だと言い続けた政府(戦闘だった場合、PKO参加の原則に反してしまうから)。しかしその当時、現場にいたPKO隊員は「戦車や迫撃砲が火を噴き、兵士が撃ちあう事象は現場からすれば『戦闘』」と明かした。

そして、財務省が森友問題で決裁文書を改ざんした事件。改ざんされた文書の一節には、安倍昭恵氏の名前の入った箇所があった。当時の安倍首相は「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と発言したが、「改ざん」と「首相発言」の因果関係は否定され、いまも国会議員は続けている。

僕は、劇中で、不正を告発し、大学を去ることになった木嶋みのり(鈴木杏)の姿をみて、自殺した近畿財務局の職員の方を思わざるにはいられなかった。

この国は、いつしか、うわべだけ取り繕えばやり過ごせる国になった。いつしか、言葉が壊れた国になった。

表面上はブラックコメディーなどという体をとっているが、その実、激しい怒りをもって、この国の姿を突きつけてくるドラマなのだと思わせられる。

大学の新聞部が、都合の良い当局の解釈でもって活動休止に追い込まれる様など、一瞬、中国と香港の関係を思わせられる。しかし、正義に酔う活動家たちは、一介の大学職員を集団リンチのように追い詰めてしまい、結果的に”敵”であったはずの当局を利することになった。一昔前の国会前デモを想起させるような描写だった。

木嶋みのり(鈴木杏)に、無邪気に反省の弁を述べる神崎真(松坂桃李)が実に腹立たしい。見ていて、殴りたくなってくる…。「また連絡してもいい?」と聞かれて、「ダメ…」と言われるのなんて、あたりまえだ。その後、彼女と食べたふわとろオムライス。

僕らも、こんなふうに甘えているのではないか? 

やはり、脚本・渡辺あやさんの、この国の現在地への激しい怒りを感じるのである。

来週以降も、絶対みる!!!

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