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振り返りを習慣化する

「PDCAサイクル」という言葉がある。Plan-Do-Check-Actionというサイクルを回して、どんどん改善・進化させていこうという考え方である。大学生や高校生も知っているのでは?と思うほど広く知られている。Plan-Do-SeeのPDSというのもあり、考え方は基本同じ。

「考えて行動しなさい!」よりも重要なこと

PDCAサイクルの中で、Plan-Doは重要ではない。何かをDoしようとしたら何らかPlanをするはず。重要なのはCheck-ActionやSeeのパート。意識しないとPlan-Doを繰り返す。いや、Plan-Do-Do-Do-Doとなってしまう。
小さい頃によく親に言われた「考えてから行動しなさい!」は実はあまり重要ではない。もちろん、人生を決めるような大きな決断は考えてから行動すべきである。しかし、恐らく、本人的には充分に考えた上で行動しているし、繰り返すことがない行動や決断で失敗したら「あらら、残念ね」でしかない。(実際にはやり直せることが多い気がする)
逆に、やり直せる行動や何度も繰り返す行動は、失敗をしても、次は失敗しないように修正できる。故に、前回の失敗という経験から学ぶことが重要になる。すなわち「考えて行動しなさい!」よりも「行動したら考えなさい!」のが有効なアドバイスだと言える。PCDAサイクルでいうと「行動したら振り返りなさい!」が正しい気がする。

もっと良いやり方はないか?を探る

大人になって何かのプロジェクトの企画担当者になると、以前の担当者から引き継ぎを受けたり、過去の資料を確認をしたりする。仕事でなくても、サークルでも、地域のイベントでも、家族旅行でも良い。ひとまず当たり障りなく、前回と同様に実施して、ミスがなければ「よくやった」と褒められる仕事がある。変化の少ない環境であれば過去踏襲で良い。
しかし、変化の多い環境であれば、何も進化させなければ、企画担当としては不十分だと思う。今の会社では「もっと良いやり方はないか?」を問われることが多い。何かしらの進化がなければ、担当者の仕事の付加価値はないと評価される。「もっと良い」ということは過去比較なので、まさに「振り返る」ことが非常に大切である。
スポーツのコーチとしては、この「振り返り」を習慣化させるスキルが重要だと思う。

セットプレーのPDCAサイクル

最近では、ミニバス規定の6分間でプレーを続けるゲーム形式の練習をほとんどしていない。ゲーム形式の練習をすることが一番成長するという考えもあるが、それは練習試合で担保することにしている。むしろ、実践に近い練習においても、プレー毎に止めて、選手同士で会話させるようにしている。これも小さなPDCAサイクルだと思っている。
例えば、3対3のハーフコートの実践練習では、3人1組でセットを組み、順に攻守を行う。自分達のオフェンスをする前に、3人で攻撃計画を立てる時間を取る。前のセットのオフェンスが終われば、計画を立てた3人がコートに入り、計画した攻撃を実行する。攻撃が途切れたらチームが変わる。ディフェンス→検討→オフェンス→振り返りのサイクルで回る。うまく行かないオフェンスになった場合は「今のセットで、修正点を話し合えよー」と声掛けしている。子供達も「もう少し広がったほうがパスが出しやすい」「動き出すタイミングを少し送らせたほうが良いかも?」などの会話している。まさにPDCAサイクルだ。
コーチとしては、どういう修正すべきか?のアドバイスをすることもあるが、できるだけ選手に任せている。このプレーに対する「振り返り」の習慣があることで、チーム連携の質が上がるメリットがある。何より試合中の選手同士の会話が増えるメリットもある。

KPTを使った振り返り

一定の期間を区切って「振り返り会」を行うようにしている。大きな大会が終わったり、何かの期間が終わったりした時に振り返る。チームでは「KPT」というフレームワークを利用している。KPTとは、Keep(良い所)、Problem(悪い所)、Try(次回の挑戦)の頭文字である。リクルートで広く使われている振り返りの方法だ。KPT似合わせて皆で振り返り、次回に向けたToDoを決めるだけ。シンプルだが非常にパワフル。

まずはKeep(良い所)について、子供達が複数枚の付箋紙に言葉を書く。次に、それぞれが1枚毎に貼りながら発表していく。同じ意見であれば、張られた付箋紙の周辺に、その付箋紙を集めて張る。だいだいグルーピングできるのでキーワード化として整理する。次にProblem(悪い所)、その次にTry(次回の挑戦)と繰り返していく。チーム全体として「ボックスアウトができていなかった」「バックコートからのボール運びで苦戦した」などが出てくる。もちろん的外れのことを書く子もいるが気にしない。実際には、小学生には全体の進行は難しいので、コーチの僕が進行している。

このKPTを受けて、例えば、夏休みは体力づくりを頑張るという方針が決まったり、ボックスアウトの練習を追加する方針が共通理解となったりする。それを受けて、コーチが練習ドリルを考えてくるToDoとなる。(小学生なので自分達で練習ドリルを考えるまでは至っていない)
因みに、KPTによる振り返りの副作用として、やることが増え続けてしまう。そこでStop(止める所)を追加して、KPTSというフレームワークにすると現実的な振り返りができるようになる。

「振り返り」なしでは進化しない

バスケをはじめスポーツの練習では、スキルを付けて磨き込んでいくために反復練習が多くを占める。しかし、何も考えずに、反復の練習だけしていては、進化したりスキルアップすること難しい。単なる体力作りで留まってしまう。
チーム全体で見ても、チーム状況に合わせて練習を変えていく必要がある。例えば、この時期にこの練習をすべきか?これを追加すべきでは?という調整できる。
「振り返り」なしでは進化できないし、そのための修正を納得感をもってやるために、みんなで取り組み振り返りが有効だと思う。

「振り返り」の習慣化が必要

進化・進歩するために、振り返りやPDCAサイクルが大切なことは明確だし、言葉としては、高校生や大学生も知っているようだ。しかし、言葉として広く知られている割には「振り返り」をやっているのをあまり聞かない。

振り返り会が単なる飲み会で終わったり、振り返っても「いろいろあったけど、やって良かったね!」「次回も頑張りましょう!」という感想で留まったりしている。次回の計画段階になると「例年通りで行きましょうね!」と前例踏襲で何も進化しないシーンも想像がつく。

「振り返り」なしでは進化はない。進化なしでは生産性や効率は上がらない。そんな躍起になって進化しなくても良いのでは?という考えもあるだろうが、世の中の環境がどんどん変わっていく中で、進化とは言わなくても「適応」していかないと沙汰される恐れがあると思う。日本の生産性を上げるためにも「振り返り」が必要と思う。

そのためには、小さい頃から「振り返り」が習慣化するのが良い。当たり前になった方が良い。小さい頃から振り返りをしていて、大人になって、振り返らないと気持ち悪いぐらいになったり、振り返らなくて大丈夫?と感じるようになると良いと思う。

スポーツで振り返りを原体験に

スポーツは、振り返りやPDCAサイクルと相性が良い。確実に「振り返り」の成功体験が詰める。多くの子供たちが関わるスポーツや部活で、で当たり前に「振り返り」やPDCAサイクルが行われると広まっていくのでは?と思う。

振り返りをした方が良いのは分かっているが、やり方がわからないのかもしれない。むしろ社会に浸透する意味では、同じ振り返り方法が浸透していると一般化しやすいので、スポーツ界で、KPTでの振り返りやそのファシリテーションが広まれば良いのかもしれない。

小さい頃からスポーツに慣れ親しんだ子達が、将来、KPTでの振り返りのエキスパートになり、色んなことを進化させることで、社会で活躍してくれたら素敵だなーと心から思う。
そのためにも、ミニバスを通じて、子供達に振り返りを習慣化させたい。


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