トキワ荘・まんが道・ンマーイ!の謎
先日、豊島区立トキワ荘マンガミュージアムで開催中の「藤子不二雄Aのまんが道展」に行ってきた。
トキワ荘とは、1950~60年代にかけて、手塚治虫を慕った若手漫画家たち(寺田ヒロオ、藤子不二雄A、藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫ら)が集住していた伝説のアパートだ。
トキワ荘マンガミュージアムは、実際のトキワ荘の跡地から徒歩数分のところにある公園内に、当時の建物の外観・内観を実寸大で復元再現した博物館になっている。
今回の展覧会の題材である「まんが道」は、藤子不二雄Aの自伝的漫画作品だ。
その「まんが道」の中で、特に印象的なのが、タイトルにも引用した「ンマーイ!」。
これは登場人物たちの食事シーンで、「おいしい」をあらわすセリフなのだが、単純に「ウマーイ」ではないところが実に個性的だ。
だいぶマンガ的な描写なのだろうが、周囲に集中線も入り、口も開いているので、かなり甲高い声で叫んでいるようにも読める。
実際はどんな感じだったのだろうかと長年の「まんが道」ファンとして色々と想像をめぐらせていたが、これを解くヒントは、NHK銀河テレビ小説のドラマ版「まんが道」(1986年・1987年)にあった。
このドラマ版「まんが道」は、藤子不二雄A本人がチョイ役で出演しているということもあり、いわゆる公式の実写版として捉えていいと思う。
シーズン2ともいえる青春編の第1回、上京したての満賀道雄(藤子不二雄A)と才野茂(藤子・F・不二雄)は、秋山書店の東山記者を訪ねる。
そこで社員食堂の天丼をおごってもらった二人。一口食べた満賀が低い声で「ウマーイ」、一方の才野も「ウマい」と呟きながら天丼を頬張る。
満賀の発した「ウマーイ」は、限りなく「ムマーイ」に近い。そう、食べ物が口に入っている状態では甲高い声は出せないわけで、必然的に低い声になるのだ。
コミック版のセリフが「ウマーイ」ではなく「ンマーイ」であることも、そのあたりを意識した表現だったのかもしれないと改めて思った。
▼「藤子不二雄Aのまんが道展」の会期は、2023年3月26日(日)まで。入館は予約制になっていますので、HPをご確認ください。▼
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