見出し画像

プリンスvsウォーホル!? 表現と著作権問題

明後日、6月7日はプリンスの誕生日。

日本での人気はアメリカと比べるとそこまでな感じもしますが、彼はよくマイケル・ジャクソンと比べられたりもする歌手です。
80年代。人種差別の残る当時のMTVで、黒人の歌手として放送されたのが、マイケル、そして、プリンスくらいだったという時代背景もあるでしょう。

2016年に57歳でこの世を去ってしまいましたが、アルバム累計1億枚以上のセールスを記録し、グラミー賞を7部門受賞する天才アーティストです。



著作権問題 (プリンスの肖像とアンディ・ウォーホルの作品)

数日前に彼に関するニュースが飛び込んできました。
最高裁判所は、アンディ・ウォーホルがプリンスの肖像をモチーフにして製作したシルクスクリーン作品は”著作権侵害である”という判決を下しました。

世界的に有名なポップ・アーティストであるアンディ・ウォーホルですが、問題になったのは、プリンスの顔が大きく映された写真を使用したシリーズ。
通称「プリンス・シリーズ」です。

「オレンジ・プリンス」
Prince公式Instagramより

もともと、コンデナスト・パブリケーションズが写真家のリン・ゴールドスミスの撮影した写真を元にウォーホルに「Vanity Fair」という雑誌の表紙を依頼しました。
この段階では、雑誌にゴールドスミスの名前がクレジットされていましたが、その後に同写真をモチーフにしてウォーホルが製作したシリーズについては、出版社からの依頼と無関係のものでした。


その後、2016年にプリンスが他界したことをきっかけに、このプリンス・シリーズの存在を知ったゴールドスミスは、無断で写真を使用したとしてウォーホル財団を訴えました。

なので正確には写真家ゴールドスミスvsアンディ・ウォーホル財団という構図になります。


ここで注目となったのが「フェア・ユース」です。
以下の4つの条件のもと、著作権侵害かどうかの判断をします。

フェアユースの 4 つの要素:
1. 利用の目的と特性(その利用が、商用か非営利の教育目的かなど)
裁判所では通常、その利用が「変形的」であるかどうか、つまり、新しい表現や意味がオリジナルのコンテンツに追加されているかどうか、あるいはオリジナルのコンテンツのコピーにすぎないかどうかという点を重視します。
2. 著作権のある著作物の性質
主に事実に基づく作品のコンテンツを利用する方が、完全なフィクション作品を利用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなります。
3. 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性
オリジナルの作品から引用するコンテンツがごく一部である場合は、コンテンツの大半を引用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなります。ただし、ごく一部の利用であっても、それが作品の「本質的」な部分である場合は、時としてフェアユースではないと判断されることもあります。
4. 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響
その作品の需要に対する代替品となることにより、著作権者がオリジナルの作品から受けることができる利益を損ねるような利用は、フェアユースであると認められる可能性は低くなります。

Google Legalヘルプより

最高裁が判決を下すまでに行われた2つの裁判所での意見は異なっており、”1”の条件にある「変形的」であるかの捉え方の違いで著作権侵害にあたるかどうかが分かれていました。
簡単にいうと、ゴールドスミスの名前が明記されたもの(雑誌の表紙用)と、アートとして発表したシリーズは全く異なるものであるかという点が争点となりました。

ウォーホル財団の意見では
「写真は構成要素として使用し、表紙用のオリジナルのやつとは作品が持つメッセージもオリジナルとは違う」
ということでしたが、最高裁では写真と作品の間の変形性は十分とは認められませんでした。

プリンス側も公式SNSでこの判決に賛同の意を表明しています。

アンディ・ウォーホルのような偉大なアーティストでも、変形性が認められない表現はアウトだということが結論づけられました。


ここで休憩挟みます。


おかえりなさい。



プリンスと権利問題

権利の問題といえば、プリンスは過去にも有名な問題がありました。
それが名前です。

プリンスとは芸名ではなく、プリンス・ロジャー・ネルソンという本名からとったものです。


そんな彼はワーナー・ブラザーズと1億ドルもの巨額の契約を交わすも、会社の規制によりこれまでのような自由な製作活動ができなくなったことで関係が悪化していきます。

1994年に発売したアルバム「Come」の名義をPrince 1958-1993とし、それ以降の自身のアーティスト名を読み方の無い記号にしていました。
それが広く知られている「ラブ・シンボル」です。

「ラブ・シンボル」

これはワーナー・ブラザーズとの契約に縛られることなく作品を発表できるという彼なりのアイデアであり、ワーナーへの反抗でした。
この記号は特に読み方を指定しなかったため、「元プリンス」とか「ジ・アーティスト」と呼ばれました。

その後、ワーナーとの契約を完了させて2000年に自身の名前をプリンスに戻し、2016年に亡くなるまで制作を続けました。


名前を記号にするというぶっ飛んだ発想を実行し、自分らしい表現を続けるという姿勢にはまさにジ・アーティストという呼び方に相応しいと感じました。


以上
今回はプリンスについてでした。

アンディ・ウォーホルのゴタゴタに関する記事は他にもまとめています。
よかったら↓↓↓↓




参考


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?