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【VI編】横浜F・マリノスのリブランディングを考える<その2>【#2022YFM50th】

akira(@akiras21_)です。
やんごとなき横浜F・マリノスサポーターです。

前説やCI(クラブ・アイデンティティ)については前回をご覧ください。

読んだね?読みましたね?それじゃ早速いきましょう!

どうでもいいけど「VI」ってひっくり返すとX JAPANの曲名になるね!VI(ビジュアル・アイデンティティ)編スタート!

VI:マリノスといえば「トリコロール」

「マリノス」を表すビジュアルについて。CIを考えるにあたってクラブの理念を参考としたように、こVIもまずは既存のものを見ていくことにしましょう。

マリノスといえば何でしょうか。そうだね、トリコロールだね。

マリノスの前身である日産自動車サッカー部時代から同じです。というか、日産のコーポレートカラーがトリコロールなんです。それじゃ、それぞれの色が何を表しているか、知ってる人ー?

冷静さと港町・横浜の
集中力潔白さ
瞬発力情熱

全部覚えてた君はえらい!俺はなんとなーく覚えてただけだった!

ちなみにマリノスのトリコロールのことをよく「青・白・赤」と言いますが、公式な順番は「赤・白・青」らしいです。エンブレムも実はその順番なんですね。

とはいえ一般的には「青・白・赤」の順なので(ていうかクラブの説明もそうなってるので)、ここはひとつその並びで目を向けていきましょう。まずは青から。

「“マリノスブルー”の正体」から考えるカラーリング

マリノスにとって「青」はとても意味のある色です。なんてったって1stユニフォームのメインカラーは青。2ndユニがピンクになろうがゴールドになろうがオレンj…インフラレッドになろうが、1stユニは(ほぼ)一貫して青でした。ということで、新作ユニフォームが発表されるときにはちょくちょく「マリノスブルー」と呼ばれたりするわけですが、これが困りものなんです。

そう、呼び名はあるのに色味は定まってないんですよ。2013モデルあたりを最後に明るい青がメインカラーに採用されなくなり、代わって少しこってりとした青でなんとなーく統一されてきましたが、その中でも微妙に違う。

そのわりに「マリノスブルー」またはユニフォームの青は「伝統の」「深い」「革新的な」「淡い」「明るい」みたいに形容されたりします。こういうわけで、なんていうか毎年バラバラな印象がありまして。ここはひとつクラブが示す説明文に立ち返って、ちょっぴり考えてみましょう。

マリノスの「青」が表すのは「冷静さと港町・横浜の海」。はそのものズバリだし、ホームタウンの横浜が港町というイメージなのもその通りですね。には沈着さが、そして港町・横浜には文化財にもなっている数々の西洋建築の佇まいのような歴史が感じられます。実際に、横浜市は「歴史を生かしたまちづくり」を掲げていたりしますしね。

それじゃ「冷静さ」は何に結び付くかといえば、CI編で触れた安達二郎さん(日産サッカー部初代監督)が編成方針とした「人間性」じゃないかなと。このあたりはマリノス史上最初に「1stユニ=青」と決めたときのお話を聞いてみたいですね。

てなもんで改めて「マリノスのトリコロール」について考えてみると、

▼ マリノスブルー:「冷静さと港町・横浜の海」
▼ マリノスホワイト:「集中力と潔白さ」
▼ マリノスレッド:「瞬発力と情熱」
 
内面的要素 … 沈着さ、研ぎ澄まされた感覚から素早いレスポンスを
外面的要素 …「歴史」「伝統」を尊重しつつ発展的・革新的に

こんな感じでしょうか。だとすれば、

マリノスブルー:外面的要素を表す深みのある色
マリノスレッド:内面的要素を表すビビッドな色

を採用してもよいのではないかと思います。

全体量に対する色の配分が難しいですが、少なくとも僕自身の1stユニに対するイメージは、

青:深みがあるので、実際の量よりも多めに見える
白:全体を引き締める役割で、実際の量よりも広がって見える
赤:活発なイメージなので、実際の量よりも強めに見える

青:ベースカラー
白:青の次に配分多め、または赤と同様差し色
赤:差し色

こんな感じです。白と赤は少なすぎちゃいけないけど、かといって多くても変。ただ、どっちにしても赤が差し色以上の存在になることはないと思います。赤って見た目の主張がかなり強いんですよね。

ここまで見たところで、マリノス公式サイトで指定されている「青」と「赤」の色味を見てみましょう。

ちなみに各色の横幅は全て同じです。みなさんはこれらの色にマリノスらしさを感じますか?

エンブレム・ロゴ:構成要素を見てみよう

ささ、お次はロゴとエンブレムの話。

エンブレムはともかく、ロゴをまじまじと見る機会ってなかなかない気がします。今回はこのロゴから考えてみましょう。

ロゴ:セリフ体?サンセリフ体?

出た、公式の並び順「赤・白・青」!こうして見てみると統一感がありますね。

さて、このロゴを構成している要素はあまり多くありません。書き出したとしても、

①「Yokohama F Marinos」
② 上部(Yokohama)はアーチ状、その他は水平
③「Marinos」を挟む赤と青のピラー=トリコロールを意識
セリフ体のフォント

こんなもんでしょう。パッと見て目に入る「Marinos」、そしてそれを装飾する「Yokohama」のアーチ。そういやこのアーチって「F」とのバランスを考えての形状なのか、それとも「横浜マリノス」時代からの継承なのかが分からないので、ひっそりと情報求む。

そのへんはさておき、今回は「セリフ体のフォント」を考えてみたいと思います。

セリフ体って何ぞや?という方もいらっしゃるでしょう。ざっくり言うと「明朝体・Centuryみたいなフォント」です。文字の先の先っぽがトゲっとしてる、ああいうやつです。反対に、ゴシック体のようなシュッとしたフォントは「サンセリフ体」と呼ばれます。

ほいじゃそれぞれどんなイメージがあるかというと、

セリフ(明朝):歴史、フォーマルさ、格式・伝統
サンセリフ(ゴシック):モダン、カジュアル、未来・先進的

だいたいこんな感じじゃないかなと思います。マリノスのロゴ(とエンブレムの一部)にはセリフ体が使われていて、これが「伝統」「格式」を感じさせる一因となっており、それはそれでキチンと機能を果たしています。

それじゃ、カラーリングの項で触れた「発展」「革新」はどうでしょうか?なんでもかんでも変えればいいとは思いませんが、たとえば「いわゆるゴシック体」ではなく「エレガントさ・格式さを感じさせるサンセリフ体」など、セリフ体とサンセリフ体のそれぞれの特徴をうまく混ぜ合わせるようなデザインを検討してみる…というのはどうでしょう。たとえば、

こういうのとか、

こういうのとか、

こういうのとか。いろいろありそうですね。こだわりだすとキリがないのでどんどん行きましょう。

エンブレム:「受け継がれている伝統」要素

続きましてはエンブレム。すっかりおなじみですが、Jリーグ開幕以後は下部のリボンに記された「Yokohama Marinos」が「Yokohama Marinos」となった以外はほぼそのまま(上の方に「NISSAN F.C.」って書かれた1992モデルもあるけどね)。

それじゃ日産サッカー部時代はどうたったのよ?ということでサッとググって見つかった画像がこちら。

そもそも「マリノス(船乗り)」という名前じゃなかったこともあり、現エンブレムで特徴的なアンカー(錨)は描かれていませんでした。それどころか形状もバラバラ

ということで、「日産サッカー部時代を含めて何が共通しているか」をまとめてみました。

【共通度:高】
◎ トリコロールの配色(赤・白・青)
◎ 差し色のゴールドorイエロー
 
【共通度:中】
◎ シールド(盾)の形状
◎ 月桂樹
 
【共通度:低】
◎ アンカー(錨)
◎ 3羽のカモメ
◎ サッカーボール

共通度が高いのは。「日産のコーポレートカラー→マリノスのクラブカラー」に引き継がれたことを考えてもとりわけ大きな要素でしょう。

ちなみに、正式なクラブカラーではないにせよ、トリコロールの差し色としてゴールドまたはイエローが使用されている点も共通度高め。オールドファンには馴染み深い「黄色のNISSAN」もそのひとつですね。

そして、次に共通しているのは「シールドの形状」「月桂樹」。どちらも今ではすっかり見慣れた要素ですが、ずっと続いてきたものではなかったようで。形状については丸かったり四角かったりと、昔はそこまで気にしてなかったみたいですね。月桂樹も然り。

そして「アンカー」「3羽のカモメ」「サッカーボール」と続きます。いずれも「マリノス」になってから追加された要素ではありますが、アンカーは港町・横浜のシンボルとして、カモメはマスコットキャラクターのマリノス君・マリノスケにつながっており、今ではマリノスを示すアイコンとしてサポーターの間に広く認知されています。

が、サッカーボールはどうでしょう。「サッカークラブなんだからあってもいいじゃん」というのはその通りですが、果たしてマリノスは「サッカークラブ」なのでしょうか?

マリノスは「サッカークラブ」なのか?

そう、マリノスにはeスポーツがあります。ゲームタイトルとして『ウイニングイレブン』『FIFA』が名を連ねていますが、2020年3月現在で主に活動しているのは『RAGE Shadowverse(シャドバ)』。2020年2月に行われたチャンピオンシップでは惜しくも優勝を逃しましたが、賞金200万円を獲得するなど国内有数の強さを見せています。

彼らが行うのは実地の運動競技ではないものの、上記のリンク先にはこのように書かれています。

年齢や性別、障がいの有無に関わらず、あらゆる人が楽しむことのできるeスポーツへの参戦を通じて、クラブ理念である「夢」「感動」「興奮」を人々へ届けると共に、横浜F・マリノスというクラブを、さらに多くの方に知って頂く機会を創出していきます。

つまり、eスポーツ部門(※便宜的にこう呼びます)ではクラブの理念に沿いながら、「マリノス」というクラブを知るためのタッチポイント・足掛かりとなることを目指しているのです。これを「マリノス=サッカークラブ」と捉えるのか、あるいは「マリノス=総合クラブ」と捉えるのかでは大きな違いとなります。

「マリノス」というクラブがサッカー部門に帰結するのであればエンブレムにサッカーボールが入っていても違和感はないですが、そうでないとしたら、つまり「今後クラブとしてサッカーもその他競技も同列の存在とする考えがある」ならば、エンブレムにおけるサッカーボールの在り方を考える必要があるのではないでしょうか。

クラブとしてeスポーツを、そしてクラブ自身の在り方をどのように捉えているのか?
サポーターはそれに対してどのようなアクションを取っていけるのか?

エンブレムに描かれているサッカーボールひとつでもここまで考えられるのです。ここでは結論は出しませんが、既にクラブが提示しているものから何かを読み解こうとする姿勢については、これから意識してみると面白いのではないかと思います。

おわりに:「変える」と「分ける」

VIというと、たとえばポスターの見せ方だったり、ウェブサイトのデザインだったり、あるいは(今後ローンチするのか知らんけど)スマートフォンアプリの見た目や機能など、とにかく視覚的な要素を定めていくにあたって重要な要素ですが、今回はそこまで踏み込まず、まずパッと見で分かりやすいものとして「色」と「ロゴ・エンブレム」を取り上げてみました。

ここまでの書き方では「全部変えるべきだ!」というふうに主張していると思われるかもしれませんが、僕はあながちそうだとは思っていません。というのも、「今あるものを解釈・再定義する」ことがリブランディングの意義であり、「刷新すること」が目的ではないからです。

この手の話題になると、海外での先行事例としてユヴェントス(イタリア)とリヴァプール(イングランド)の二者がよく話題に上がります。具体的に「リヴァプール型」とは、

リヴァプール型のリブランディング:
◎ エンブレムは変更しない
◎ 代わりにライバーバード(エンブレムに描かれている鳥)をアイコン化する
◎ ユニフォームにはアイコン(ライバーバード)、スタジアムにはエンブレム

というふうに、「エンブレムが持つ格式」「アイコンが持つファッション性」のそれぞれの利点を上手に活かしているのが特徴です。では「ユヴェントス型」はというと、

ユヴェントス型のリブランディング:
◎ エンブレムを更新、アイコン化する
◎ クラブ公式フォントを制作し、ユニフォームの背番号・背ネームにも適用する
◎ あらゆる視覚的要素に基準を設けることで、クラブに関わる様々なものに統一感を持たせる

おおまかにこんな感じ。リヴァプール型よりも更に抜本的な変化を与え、いわゆる「そのクラブらしさ」を明確に作り出そうというものです。

今回、マリノスのリブランディングを考えるにあたってどちらが適しているかということはあまり考えず、まずは今あるものがどのような成り立ちで存在しているのかに注目してみました。「結論を出すつもりがない」というのはそういうこともあってのことです。

といったところでVI編はお開き。次回は「BI編」です!

【参考】
クラブ紹介 | クラブ | 横浜F・マリノス 公式サイト
https://www.f-marinos.com/club/profile/
eスポーツ | クラブ | 横浜F・マリノス 公式サイト
https://www.f-marinos.com/club/esports/
まりびと | コラム | 日産自動車サッカー部初代監督 安達 二郎 | 横浜F・マリノス 公式サイト
https://www.f-marinos.com/maribito/adachi_jiro/
【歴史を生かしたまちづくりのトップページ】 横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/toshiseibi/design/ikasu/rekishi.html
Audrey | FREE FONT on Behance
https://www.behance.net/gallery/32938133/Audrey-FREE-FONT
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【名門クラブが向かう未来】 ユベントスのロゴ変更とリバプールFCのブランド戦略 | リバプールFCラボ
https://lfclab.jp/club/5550
リブランディングの意味や目的と展開事例 | ブランディングデザインの会社|株式会社チビコ
http://chibico.co.jp/blog/business/rebranding/

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